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第九十一話 温泉お披露目会その1

 集落の外れに突如として姿を現した謎の建物にドワーフ達がぞろぞろと集まってきている。これから呼びに行こうと思っていたのに手間が省けたか。


 いやいや、マルリさんが居ないな。あのロリばばあ抜きにしてお披露目回は始められない。どれ、他にも来てない人が居るだろうし声をかけつつ呼んでくるか。


「パンよ、俺は今からマルリさんを呼びに行ってくるから、ドワーフ達がフライングで入らないよう見張っててくれよ」


「まあ、しょうが無いわね。ルーちゃんナーちゃんと見てるからさっさと呼んできなさいよ」



 時短目的で久々にクロベエに乗る。コイツ微妙に身体がデカくなってるからな……。前より大分乗りやすくなった。クロベエに併走するようにヒカリが並んで走っている。俺はなんだ、物の怪の王かなにかか?


 最近クロベエに構ってなかったし丁度良いな、っていうかコイツが俺に構わなくなったのか。

 よく考えれば、最近のクロベエと来たらすっかりヒカリにべったりだ。何だかんだ言って良いカップルだよなあ。


 ……既に夫婦の関係かも知れないけれど。


 意外なことに、マルリさんの家に着くまでの間ドワーフ達の姿を見ることはなかった。どうやら全員集合していたようだ。


 一体何人居るんだろうな?ここも村にするとして、代表はマルリさんで良いと思うんだけど、シゲミチみたいに事務処理得意そうなドワーフっているんだろうか?想像できないけど絶対いた方が良いよな。


 さて、それはまず後回しだ。


「ちわーっす、マルリさんいるー?」

 

 ドアを開けるとスヤスヤと寝息を立てている……マルリさん……。


 白く透き通るような髪の毛、ふわふわの耳毛……。


 民族衣装のような服に身を包んだそれはやはり幼女。俺の気配を感じたのか、「んう……」なんて甘ったるい声を上げている。


(うわあ、おばあちゃんなんだよなあ……)

 

 なんだか撫で繰り回したい気分になってきた。やばいやばい。


「マールーリーさーん」


 名残惜しいけど……、非常に名残惜しいけど起こすことにした。


「んみゃ……なんじゃ……ユウか……どうしたんじゃ?」


「頼まれてた奴、できたんですわ。今からお披露目会するんで行きませんか?」


「にゅにゅ……頼まれて居た奴が……?出来た……じゃと……?わ、わしは……一体どれくらい寝ておったのじゃ……?」


 両手で頬を押さえ、慌てたようでキョロキョロとしているマルリ。くっそかわいい。流石の俺でもリアル幼女はストライクゾーンから外れている。が、ケモ耳幼女は少しやばい。いや、誤解されないように言っておくと別に変な意味じゃないぞ?可愛いは正義、そういう事だ!いいね!


「それが、太陽が昇り沈む、それが3000回ほど繰り返したくらい……ですね……」

 

「そ、それは……ど、どれくらいなんじゃ?」


「そうですね、沢山です」


「た、沢山か!それは大変じゃ!」


 この婆さん、可愛いけどやっぱり補助役は必要だな。カリスマ性はそれなりに有るみたいだから村長としては適していると思うけど、計算が終わってる。シゲミチの弟子を一人派遣してここの誰かを鍛えさせるのも良いか。


「まあ、嘘なんですが。一晩しか経ってませんよ」


「そ、そういう冗談はやめるのじゃー!」


 ぽふぽふぽふと俺の腹を肉球が襲う。これはダメだ死んでしまう……!なんて愛らしいのだ!


「とにかく、行きましょう。皆勝手に集まってきて後はマルリさんだけなんですよ」


「なに、それはいかんな!よし、急ぐぞ」


 急ぐなら……折角だし乗って貰おうか。


「マルリさん、良かったらヒカリに乗りませんか?自分で走るよりきっと速く着きますよ。何より楽ちんです」


「む、いいのか?ヒカリとやら、わしをのせてくれるかの?」


「クロベエとお揃いになるし,私は構わないぞ!」


 俺達はアクセサリー扱いかよ。なんにせよ抵抗なく乗せてくれるようなら良かったよ。


 俺はクロベエに、マルリさんはヒカリにそれぞれ騎乗して温泉まで急ぐ。こうやって並んで走ってるとほんと何かみたいだな……。


「あ!来た来た!もう皆居るってよー!」


 遠くから俺を見つけたらしいパンの声が聞こえてくる。目が良いよなあいつ。


 こうしてみると、結構な人数だな。男女比は分からんが併せてざっと40人くらいか?他にも集落があるようだったから、全部で一体どれだけの数になるのやら。


 とりあえず、今居る数なら余裕でさばけるな。


「はいはい!通して通してー」


 ヒゲモジャとネコ耳の群れをかき分け施設の前に出る。マルリさんにも並んでもらい、今回の経緯を話す。


「という感じで、俺達が住んでいる場所は色々面白い感じになったんだけど、マルリさんにここにも何か無いかと言われてね、思いついたのがこの温泉だ」


「おんせんってなんだ?」


「お前らが臭くて熱くて飲めないってほったらかしにしていた泉があっただろう?其れに手を加え、浸かるだけで疲れが取れたり傷が治ったりする不思議な泉を作ったんだよ。それが温泉だ」


 モジャや猫たちがざわめいている。あの泉が?とか、疲れが取れる?とか期待半分疑い半分といった感じだな。


「ちなみに風呂上がりに合う酒がここには有るぞ。今日はサービスで飲ませてやるが、そのうち条件がつくからな。それについてはまた後で話すよ」


 酒、と聞いてやたらと盛り上がるドワーフ族共。村の連中における肉のようなもんだな。テンプレ過ぎるがパンが創造した世界だからそんなもんだろう。


「はいはい!酒は後だからな!温泉に浸かった後にこそ旨さが増すんだよあれは!」


 うおおお!と、我先に温泉に向かおうとするドワーフ達に待ったをかける。


「こら!まだだ!注意点をちゃんと聞いてからいけ!」


 ったく、油断も隙も無い。酒の話は最後にするべきだったな。ほっといたら服を来たまま男女混じって突撃しかねない。ちゃんと説明をしないと。


「いいか、この建物には靴を脱いで入って貰う……あ!こら!いま靴を脱ぐな!後から!あーとーかーら!」


 皆一斉に靴を脱ごうとしやがって……素直すぎるだろ。


「中に入ると靴を入れる棚があるから、そこに入れるんだ。棚に靴を入れたら扉を閉め、鍵を外して持って行け。

 その後は男女に分かれて温泉に向かう。男は青い布がかかっている方、女は赤い方だ。なんでそんなことをするのかって?温泉はな、服を脱いで入るんだよ。男女一緒にするわけには行かないだろ?」


「え?水浴びする時いっしょくただけどな」


「随分変わった風習があるんだなあ、お前んとこは」


 なん……だと……?


 夢の混浴チャンスを……俺は……俺はむざむざ逃してしまったと言うのか……?


「こら!何を考えてるか分からないけどだめよ!ここにはいずれあっちの村人達も観光に来るんだからね!世界基準はきちんと作らないとダメよ!」


 心を読まれなくて良かった……いや、読んでいて技とそう言ってるのか?まあ、正論だな……。村の女性達に混浴してくれっていっても酷い目に遭わされるのが関の山だろう。


「まあ、そんなわけで温泉は男女別に入ってもらうぞ。入る前に服を入れる棚があるからそこに入れてくれ。鍵に書いてある番号と同じ所を使うんだぞ」


 まあ、後はそれぞれ中で説明すれば良いか。


 俺は男共を、パン達は女達を連れ、それぞれ2度目の温泉へ向かった。

 

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