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第八十七話 設計

 夜になり、俺は現場に建てた作業小屋でうんうん唸っていた。


「まーだ図面書いてるの?手が遅くない?」


 他人事だと思って暢気に煽ってくるのは駄女神だ。


 帰って来るなり仮設事務所として建てたこの作業小屋にケチをつけ、別荘と言える規模にまで拡張させられてしまった。


 なんでもテント生活が嫌だとのことで、ここで寝泊まりするという事だった。


 が、俺にとっては良い迷惑である。人が頑張ってる横でビールを飲みのみヒカリにくだを巻いている。


 ルーちゃんとナーちゃんが二人仲良く眠っているのは癒やしになるが、女神の件でぶち壊しだ。


 おまけに風呂に入りたいとゴネだす始末。その風呂を今から作ろうとしてるんだろうがよ!


 ん?風呂か……。


「なあ、女神様よお」


「んなあによお?今ガールズトークに花を咲かせてんだから静かになさい!あはははは!」


 何がガールズトークだ。一方的にヒカリに愚痴ってるだけじゃねえか。しかも良く分からん同僚の女神かなんかの愚痴だぞ?聞いてるヒカリはたまったもんじゃねえだろ……。


「いやさ、風呂に入りたいんだろ?だったら家に転送して入ってくりゃ良いじゃん」


 あーね!という顔をしたかと思うと,直ぐに立ち上がり今にも転送しそうになる。そうはいくか!こっちはお使いを頼みたいんだよ!


 逃がさないようにがしっと後頭部を掴み、転送をキャンセルさせる。


「なにすんのよ!あんたもお風呂入りたいの?だめよ!あんたは転送門ゲートから行きなさい!」


 なんだよ、もう転送門ゲートの整備終わったのかよ……。そんな大事なこといっこも言わないでって、帰って来るなりビール煽ってたもんな……。

 

 ほうれんそうが出来ない女神のお仕置きはまた後日として、取りあえず今は用事を言いつけなければ。


「風呂に行くのはいいけどよ、モルゾウに言づてを頼む」


「言づてえ?いいけど、面倒だったらやらないわよ」


「上手く伝達できたら温泉に入れるぞ、お・ん・せ・ん、だぞ。鑑定した結果、効能は腰痛、肩こり、切り傷の他にアンチエイジング効果もあり、お肌すべすべ髪はさらさら、おまけに魔力も回復するというエリクサーめいた名湯だぞ」


「早く言いなさいよ、そういう大事なことは!」


 現金な奴め。まあいい、こいつは上手く使えば便利な生き物だからな。


「こちらに2~3匹モルモルを派遣してくれるようモルゾウに頼んでくれないか。今後のためにお掃除モルモルの育成させてただろ?そこから何匹か……可能であれば連れてきてくれ」


「連れてこなくても明日ルーちゃんに召喚させたらいいじゃない。話はつけてくるからさ」


 そうか召喚すればいいのか。結構距離が離れているけど、やっぱルーちゃんって規格外なんだなあ。


「じゃあ、そんな感じで頼む。明日の午前には工事を済ませて上物作りたいからさ。


「了解-」


 と、言うが早いか女神の姿は消え、再び部屋に静寂が訪れた。


 ボックスから焼いておいた肉塊を取り出し、ヒカリにそっと手渡す。


「アレが迷惑をかけたな……、クロベエと食べな……」


「ユウ様……有難うございます、ありがたく頂きます……」


 ヒカリは疲れた顔をしていたが、肉を咥えると嬉しそうにクロベエの元に向かっていった。 

 

 魔獣にまで迷惑をかけるなんて、ほんとひでえ女神が居たもんだぜ。


 神話を読むに中々濃い神々が居るというのは理解しているが、実際目にしてみると面倒くさい友人とか、親戚とか、なんかそんな印象しか受けないし、神々しさなんて微塵も感じねえ……。


 さて、俺は俺で頑張らないとな。



 スマホで「温泉旅館」とイメージ検索をして資料を探す。こう言うとき普通の転生者とか転送者って大変だろうな。自分がそういう仕事に関わってたり、勉強や研究をしてた、とか、趣味でやってたーとか無い限りはうろ覚えでやる必要があるだろう?


 まして、知識があったとしても一人でそれを建てるとなったら尚更だ。


 恐らく現地の棟梁なんかと知り合うところから始める必要がある。俺には便利なスキルは無いけどスマホが便利すぎるほど便利だからな。


 今はありがたく恩恵に与るとしますかね。


 とは言え、大して上手くないながらも絵描きスキル……(この場合は異世界スキルとは別の意味合いだが)を持っているというのは助かったな。


 誰の影響か忘れたけど、きちんと背景まで描くという拘りをもって創作活動をしていたおかげである程度は建物の絵も描けるしさ。パースはまあ、知らない子だけれども、その辺はスマホが色々やってくれるし……。


 考えている間も筆は動いていく。何かを書く時は考え事をしているとスラスラ書けるのだ。


 下手に作業用に映画なんかを流してしまうのは不味い。気づけばそっちに夢中になっていたり、作品がモロに影響を受けてしまったりする。


 ファンタジーもののオリジナル絵を書いていたはずなのに女の子が装備しているのがパワードスーツ、とかやらかしたこともあるしな。


 っと、こんなもんか。


 やかましいのが居ないと作業が捗るな!


 時計を見ると既に3時、場所が場所なら明るくなる頃だ。


 後は明日、モルモルたちを召喚してもらって完成させるだけだな。 


 ボックスからベッドを取り出し毛布に潜り込むと直ぐに睡魔が襲ってきた。


(そう言えば……パンの奴帰ってこなかったけど、どうしてんのかな…まあいいか……)



 睡魔に抗うこと無く、眠りの海に落ちていくのだった。

 

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