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第八十五話 赤くて憎いアレ

 さて、ナーちゃんを今後どうしたら良いだろう。ルーちゃんを見ていると実体化に伴って食事が必要になりそうだし、その世話をここの連中……、レッドドラゴン等が出来るとは思えない。


「なあ、パン。ナーちゃんもうちに連れてった方が良いよなあ。ご飯とかあるしさ」


「そうねえ、女の子を一人こんな所に置いていけないわよね。ドワーフ達にお願いしちゃうと酒好きになっちゃいそうだし、なにより私達の子供みたいなもんだしね。連れて帰りたいわ」


 しかし、ダンジョンコアをダンジョンから連れ出していいものだろうか?ルーちゃんは近所だからいいとして、ナーちゃんとなれば事情は違う。家からここはかなり離れている。


 いやまてよ、転送門ゲートがあるからそこは構わないのか。


「ルーちゃんみたいに通いのコアって感じにすれば離れてても問題ないのかな?」


「そうね、このままだと流石に問題はあるんだけど、転送門ゲートで繋いじゃえば接続が切れることもないし、緊急時は私が連れてこれるから平気よ」


「……というわけで、今日からナーちゃんもうちの子だ。まだ帰らないけど、家に帰る時は一緒に帰ることになるけどいいよね?」


「ありがとうございます、父上、母上……。ここにはレッドドラゴン等、龍が居ますので護りの心配はありませんし、一緒に行けるのであればそうさせていただきたく思います……」


 もう少し子供らしく喋っても良いんだぞ?って思うけど、まあこう言うキャラなのだろうからそっとしておこう。


 しかし、まだ家に帰るわけには行かないんだよな。俺には交易という大事なお仕事がある。宴会で有耶無耶になってしまったけれど、うちの野菜や肉と交換にここの酒や武器を手に入れたい。


 さらに欲を言えばここの鍛冶師や居るのか知らんが杜氏、それとダンジョンに興味がある戦士達を村やうちに連れて帰りたい。あちらからも狩人や農家の人を招待して交換留学という形にするのが良いだろうな。


 その辺の話はマルリさんと共に集落の人達に伝えてみよう。きっと興味を持ってくれるはずだ。


「パンよ、俺は集落の人達と今後の相談をするからさ、お前は転送門ゲートなんかの設定をしててくれよ」


「あんたも大分慣れてきたわね……。勿論そのつもりで今そう言おうと思ってたわ。ルーちゃんとナーちゃんは私に任せてがんばってらっしゃい」


 へいへい、と手を振って上に向かおうとするとナーちゃんが俺の手を掴みそれを止めた。


「どうしたの?」


「父上、上に戻るのであれば私にお任せを。送りますので」


 と、ナーちゃんが言った瞬間周囲が赤く光り、瞬く間にダンジョンの入り口に立っていた。一緒に来たのかと思ったが、俺だけ単体で送られたようでナーちゃんの姿は無い。


 参ったな、せめてクロベエ達も一緒に連れてきたかったのだがしょうがないか。


 この転送はゲームなんかでよくあるプレイヤーに優しいシステム的なアレみたいなもんだろう。ダンジョン制覇後に入り口まで戻してくれるアレだ。


 昔のゲームなんかだとそんなもんないから、苦労してギリギリでボスを倒した帰り道に全滅とか良くあったよなあ。


 それで嫌になって暫く触らないんだけど、また思い出したかのようにやっちゃってーと、一人なのでしょうもない思い出に浸りながら帰り道を上っていると道端に生えている植物が目に入る。


 こんなに熱い地面にも植物は生えるのだなと感心して見てみれば、見たことがある物に似ていた。


 赤くてぷっくりとした実がなっているそれはとてもとても辛そうだ。


「いきなりガブりとやって毒だったらかなわんしな」


 スマホをかざし鑑定をしてみると、「カプル」と表示された。毒は無いが強烈に辛くそのまま食べるものは居ないとのことだ。

 カプサイシンのカプルかよ、安直なネーミングセンスしやがって!と、毒づきながらもせっせと採取する。


 唐辛子的なのは何かと使える。俺が大好きなペッパーソースは勿論、乾燥させて一味唐辛子にしてもいいし、他のスパイスと合わせればカレーだって作れるだろう。


 あまりスパイス的なのが普及していないからこれを広めれば一気に料理の幅が広がるに違いない。


 結構人が通ってそうなのにここまで放置されてるって事はあまり食べられることも無いのだろう。流石に全部は取らないけれど、多少多めに取っていったもいいだろうな。


 せっせと取っていると集落の女性が通りがかる。格好からして採掘の帰りだろう。ダンジョンに行く道とは別の方向から来たからそちらに坑道があるのだろうと思われる。


「あら、あんたユウさんだね。そんなもんとってどうするのさ?」


「これかじったことあるかい?」


「ああ、あるとも!昔近所のバーダのやつにね、甘いからかじってみろって言われてさ。かじったら口が痛いのなんの。半日食べ物の味がしなかったよ。まあバーダは三日苦しんだようだけどね、あっはっは」


 逆襲したんだな……口に沢山押し込んだんだな……。見た目はかわいらしい猫耳少女なのに性格はドワーフの女性そのものだな。パンのやつが悪いのか、ドワーフと暮らしているのが悪いのか……。


「と言う事は、これを料理に使ったりはしないんだな?」


「使うもんかい!そんな恐ろしいもん!下手に弄ると大変さ!目なんか擦ってごらんよ!バーダみたいに二日は涙が止まらなくなるよ!」


 バーダ……懲りない奴だ。


 しかしこの分だと俺がこんだけ採ったのは怒られずに済みそうだな。よしよし、うちでも増やそうと思うけど、これはこの集落の特産にすることが出来るな。


 酒と武器とカプル。取りあえずはこれらを主軸に始まりの村と交易をして貰おう。そのためにはここにも村化して通貨などを設定したいが、それはマルリさんと相談だな。


 


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