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第八十一話 熱地獄

 集落エリアより気温が高い。体感温度で言えば30度前後か。耐えられない暑さでは無いが対策をしないとのぼせてしまいそうだ。


 ルーちゃんのダンジョンとは違い、特に何か変わった仕掛けが有るわけでも無く、またその地形も洞窟そのままと言った感じだ。


 ダンジョンらしさと言えば壁が発光しているくらい。それと、これは上層の集落エリアにも言えることだが、あちらこちらから蒸気が噴き出している。


 ただし、ダンジョン内では冷えた外気の影響を受けないため、高温多湿で不快感指数爆上げの厳しい環境を作り出していた。


「……あづい……」


「うう……ビール飲みたい……」


 サウナでじりじりと暖められているオッサンの如くギリギリの戦いを強いられていた。ルーちゃんは謎パワーで平気そうだが、クロベエ達は大丈夫なのだろうか……。


 俺達にとって不快極まりないこの環境も、原生生物……魔獣達にとっては快適なようで、さっきから元気よくちょっかいをかけてくる。


「今度は赤いトカゲかよ……ちょっとデカいな……」


 ガウー!とか鳴いていたが、今の我々はとても機嫌が悪い。自業自得とは言え機嫌が悪いのだ。さっさとスマホランスで命を奪い、ボックスに収納してしまう。


 マップ機能が働けばいいのだが、生憎こいつはオートマッピング機能しか無い。従って初めて来たここでは余り役に立たず、女神に頼ってみたところで……


 「えー?このダンジョン?育つ前しか知らないから道なんて分からないわよ……。ルーちゃんのところに転移?無理ね、ダンジョンコアの管理下に有るから私ですら許可無く位置を探ることが出来ないの。闇雲に転移することは出来るけど、転移先が壁の中だったら……いやでしょう?」


 おおっと。ってなわけである。肝心な時に役にたたねえんだからもう……。


 幸いだったのはどうやらこのダンジョンは1階層しかないらしいことだ。下に下に下りて言っている感覚はあるのだが、あくまでも同フロア。なのでマップがどんどん埋まっていくので帰りは迷わず戻れることだろう。


 ああ……帰りもあるのか……。


 急激にぐったりしてきた。そしてこのタイミングで行き止まりである。


「くそー……行き止まりだよお……」


「ほらみてユウ!宝箱よ!開けてみない?」


「今は良いよ……後で開けようぜ……」


 何もかも面倒なので、宝箱ごと収納し、さっさと先を急ぐ。


 こんな調子で出てくる魔獣を片っ端からボックスに収め、宝箱があれば納めとどんどん下に下に下りていく。


 下れば下るほど気温と湿度が上がり、限界が近づいていた。


「あづい……あづいよお……ぱんさんや……氷をおくれ……」


「はい……ユウさん……こおりですよお……うわあん溶けたあ」


 ポンコツと化し、最早本能だけで進む我々二人。幸いだったのは我々が神に強化された人間と、神その者という普通とはちょっとだけ違う妙な二人組だったことだろう。


 実はこの時点で外気温は50度を軽く超していて、普通の人間であれば既に動けなくなっていたはずである。


 我々が気づかぬ所で俺の不死スキルの片鱗が仕事をしていた、というわけだ。


 しかし、クロベエ達はどうなんだろう?魔獣とは言えこのダンジョンの加護があるわけでもなく。無事で居ることを祈るしか無い。


 やたらデカいトカゲが大きな扉を護っていた。


「くそがー 貫くぞおらあ!」


「そうよお、ユウさんや、やっておしまーい」


 暑さでヘロヘロになりながらもスマホランスを構え、ついてやるぞと駆け出すとデカいトカゲは慌てて飛び立っていった。やはりデカくてもトカゲはトカゲ、臆病風に吹かれて逃げていきよったわ。


 さて、とってつけたかのように如何にもな雰囲気の扉が見える。得てしてこの手の扉の先にはボスキャラが居て、それを倒せば目的地があるはずだ。


「たのーもう!!!」


「たのもーう!!!」


 謎テンション二人組がバアンと扉を開けるとそこには見慣れた顔、ルーちゃんとクロベエ、そしてヒカリの姿があった。


「ルーちゃん!クロベエも!」


「あなたたち無事だったのね!」


 名前を呼ばれなかったヒカリが少し寂しそうにしていたが、今はそれどころじゃ無い。


「あれ?二人も来たのー?というか、凄い汗ねーどうしたの?」


 暑がっている我々がおかしいと言わんばかりにこちらを見て首をかしげる。確かに言われてみればルーちゃんは汗をかいていないし、この暑さも平気そうだ。


 ルーちゃんが謎パワーで平気説は何となく想像していたので納得できるが、モフモフ二匹まで平気そうなのは何故だ?


「い、いや……暑いから……普通に暑いから……」


「ルーちゃんは兎も角、なんで猫たちまで涼しい顔してるのよ?」


 我々の言葉に首をかしげるルーちゃんだったが、何か思い出したかのように俺達の手を引き奥へ引っ張っていった。


「この石をね、触って?」


 壁から見るからに熱そうな石が生えている。触ったらジュッとしそうなやつだ。


 咄嗟にパンの手を取り、石に押しつけてみる。なーに、女神様だ。死ぬことはあるまい。


 「ちょ!ちょっと!なにすんの……あれ?」


 平気そうだが、何か様子がおかしいな。少し様子をうかが……うわああああああ!!


「良いからさっさと触りなさい!」


 仕返しとばかりにパンに腕をつかまれ石に手を当てさせられた……あれ?


「「暑くナ~イ!!!」」


 思わずハモってしまったが、先ほどまでの暑さは何処へやら。むしろどこか涼しさすら感じる。


「ルーちゃんや、この不思議な石はなんだい?」


「ほれ、ママにいってごらんや、ルーちゃん、これはなんだい?マジックアイテムかい?」


 ルーちゃんが困った顔で正解を言う。


「何言ってるの……?これ、このダンジョンの子だよ!ダンジョンコア!」


 なるほど、ここが最奥か……。適当に彷徨ううちにダンジョンを攻略してしまったようだ。

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