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第七十九話 始まりの村物産展その1

 というわけで、我々冒険者一同はマルリさんのお家にお邪魔している。


「というわけで、俺達はここからずーーっと行ったところにある所から来たんですよ」


「随分ざっくりした説明じゃな」


 既に説明した体で進めようとしたのにバレてしまった。しょうがない、ちゃんと説明するか……。


「なんと言ったら良いか、ここから遠くはなれたところに俺達の仲間が住む集落があるんですよ。そこには弓が得意な狩人が住んでいてですね、狩りをしたり、野菜を作ったりして暮らしているんです。他にもまあ色々おもしろいことを最近はじめたんですが、それはまた追々と……」


「ふーむ、ユミ、というのは一体何のことじゃ?」


 そうきたか……。あっちは近接がだめ、こっちは遠距離がだめ…か。見せたほうが早いな。


 ボックスから弓矢を取り出し、「失礼」と前置きをして軽く射ってみせる。


「おおおお、なんじゃなんじゃそれは!もっかい!もっかいやってみせとくれ!」


 うおおおお!この婆さんかわいいな!よっしゃ!見てろ!


 バスン!と、先程より強く射られた矢が壁に刺さる。


「これを使って狩りをしとるのか?すごいのう!すごいのう!これなら狩りもらくじゃろうなあ!」


「そうですね、ただうちの方では弓以外発達してなくてですね、道具として斧やナイフはあるんですが、剣や戦斧と言うものはないんですよ」


「なんじゃ、それならどうやって集落に出る魔獣を倒すんじゃ?狭いところじゃその武器では戦いにくかろうに」


 集落に…魔獣が出る?


「あの、ここは集落の中に魔獣が出るのですか?」


「ん?お主らの所にはでないのかの?ここは出るぞ、穴の底から這い出てくるんじゃ」


 と、ちょいちょいとルーちゃんが俺の袖を引く。


「どうしたんだい?」


「あのね、ユウ、ここね、途中からダンジョンになってるみたいよ。下の方からダンジョンコアの気配を感じるの」


「だ、だんじょん?」


「ああ、そうじゃの、ここの下の方は魔獣の住処、ダンジョンじゃ。よくダンジョンという名前を知っていたのう」


 パンを見るとスマホを弄って話を聞いていないふりをしている。後で折檻だ。


「うちの方にもダンジョンはありますからね。ただ、そのダンジョンは集落から離れたところにありまして、最近漸くそこの探索を始めたんですよ」


「なるほどのう、ああ、わかったぞ。それでわしらの武器が必要になったのじゃな?」


「その通りです。こちらからは弓矢の実物とその技術、それにお土産として肉や野菜を持ってきています」


「む!肉と野菜じゃと!よし、弓は後で聞く!先に肉と野菜をみせとくれ!」


「ここじゃ出し切れないので、どこか広いところへ案内してくれますか?」


 どこにそんな荷物がと、不思議そうな顔をしていたが、広場まで案内してくれた。


 マルリさんが変なのを連れている、ということで気づけばゾロゾロ集落の人達が集まってきて広場にはたくさんのおっさん達とけもロリで埋まっていた。


「じゃあ、肉と野菜をだしますよっと」


 お土産用に箱詰めされた肉や野菜が次々と現れる。どこから出してるんだとびっくりしていたが、興味は直ぐに肉や野菜に移ったようで、アイテムボックスに関してはここでもさほど突っ込まれずに済んだ。


 全くこの世界の人達はちょれえな……。


「おい、見ろよあの野菜…見たこと無いものばかりだ…」


「野菜ってマサモとリッフ以外あったんだ……」


「肉も凄いぞ、なんだあのデカいの!ウーフとは違うみたいだが…」


 よし、さらにびっくりさせるとしますか。


「はいはい!みなさん!今から料理しますからね!手伝える人はこっち来てください!」


 こんな所で料理?どこでやるんだ?という顔をしている。ふふふ、調理器具は任せてくれ。


 ボックスからドスンドスンと魔導コンロを複数出す。合わせて作業用と食事用にテーブルや椅子も次々に出して会場を設営していく。


 この時点でかなり驚いていたが本番はここからだ。


「はい、じゃあ料理できる人はここで材料を切ってくださいね。お肉はこんな感じに…こっちの野菜たちはこんな具合に…」


 ざっくり説明をして材料を切ってもらう。人数が多いので鍋を作って配るのだ。


「ええと、手が開いてる方はこちらへ。この台の上に水をいれた鍋をおいてください」


 魔導コンロに鍋をおいてもらい、俺が次々とスイッチを入れていく。使い方は今度ゆっくり教えればよいだろう。


 何をしているのだろうと言う顔で鍋を眺めていたが、間もなく湯気を立て始めたのを見て驚いている。


「これは魔導コンロと言って、熱を出し鍋を暖められる道具です。詳しい話はまた後でしますから、その時はまたここに呼びますね」


 そして男たちに声をかけ、自宅から自分たちが使う食器を持ってきてもらう。


 鍋に材料を入れ、醤油ベースの味付けをして少々煮る。


 いい匂いが辺りに広がりだした頃、マルリさんがたまらず駆け寄ってくる。


「ま、まだか?知らない匂いじゃが、これは美味しいものだと腹がいっておるぞ!」


 ついつい頭を撫で、もう少し待ってねと言ってしまいちょっと怒られたがまんざらでもない顔をしていた。


 くそー、このご老人かわいいなあ……。


 腹の虫が治まらない人がソワソワし始める頃、鍋が出来上がった。


 さて、実食してもらいましょうか。

 

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