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第七十八話 洞窟の種族

「おい、パン」


「……」


「こら、女神」


「……」


「寝屁神さま」


「誰が!寝ながらおならしてるっつーのよ!!!」


「おい、こら、なんだあれ」


「……どわーふ…」


「おっさんはそうだな。俺がよく知ってるドワーフだ。酒が好きでヒゲモジャでちっこめで、ああ、テンプレのドワーフだ」


 うむ、バーグ氏(六十二歳)はどっからどうみてもドワーフだ。これはいい。いいんだ。


「じゃあ、ヒルダさん(五十八歳)、ありゃなんだ」


「……ど、どわーふ?」


「ちーがーうーだーろー!どう見ても猫人族とかそういうウサ族と同カテゴリだろ!!!」


「いひゃいいひゃい ほほをひゅねりゃないでぇ!!!」


 頬から手を話し、るーちゃんの目を見つめさせながら真実を吐かせた。


「いいか、このるーちゃんの澄んだ瞳を見ろ?この瞳に嘘をつけるか?つけないよな。じゃあ、この状況について正直に答えろ」


「…わ、わかったわよ。でも別に悪いことしたわけじゃないんだからね、怒らないでよ?」


 こういう前置きは多くの場合俺が呆れるようなことを言う前兆だ。どうせテンプレドワーフだと華がないだとか、モフりたかったとかどうでもいい理由なんだろう。


「あのね…ダイスで決めたの……」


「なんて?」


「ダイスロールで決めたの!この冬エリアにどんな種族を住ませようーって思った時ね、友達からTRPG誘われたの!あ、良いねえって思ってね、ダイスで種族決めしたのよ」


「ん、待って理解が追いつかない…あ、ちょっと追いついてきた、追いついてきた…うん、えっと、ダイスで決めたのはわかった。なんで男と女で明らかに種族が違うんだ?」


「そりゃあ……サイコロ1個投げたつもりが2個振られててね、ドワーフと猫人の判定が男女にそれぞれ適応されて…」


「あ~~~~!!!理解が!理解が置いて行かれたあ!!!追いつこうとした今、まさに!理解がマッハ5で置いて行かれたあ!……うん、えっとなんて?ダイス?ダイスで決めたって言うのはなに、システムに自動判別されるとか系なの?」


「えっと……、世界構築システムにちょちょっとやってさ、設定UIにダイスを組み込んで…」


「んんんーーーーーー!!!ストップ!この世界のいちばん大事な仕組みをべらべら喋って良いもんじゃないぞ!何より俺が俺を保てなくなる」


「大丈夫よ、誰も聞いてないし」


 いい加減な設定の世界だとは思っていたが、成り立ちまでいい加減だったとは。神がダイスとか使ってなんとなく作った世界でしたー!なんて知ったこの世界の人達はどんな顔するのだろうか。まあ、怒らないか…この世界の人達だもんな…


 自分を無理矢理に納得させ、込み入った話が始まったと気を利かせてなのか、引いたのかわからないけど距離を取って待っていたおっさんたち夫婦に声をかける。


「いやいや、お騒がせしちゃってすいません。ちょっと妻と揉めちゃいましてね」


「ああ、いってことよ。うちのもよーくグズるからの」

 

「グズるのはあんたじゃないかい!このとーへんぼく!」


 ひげもじゃのおっさんがロリけもに蹴られている……。通報したほうがいいのかな…いやいや夫婦だった。どちらもいい年だった。


「それで、どこか集落内の広いところを借りられたら助かるんですが、どなたかここの代表と言うか、仕切ってる人は居ませんかね」


「ああ、それならマルリだね、ここの鉱山仕切ってるのはマルリだからマルリに話を通せばいいさ」


「そうじゃの、みんなマルリには頭が上がらんからのう」


 二人に案内され、マルリさんの家に向かった。


 この集落は洞窟をくり抜いたような場所にあるが、中は普通に明るい。洞窟の天井に生えているヒカリゴケの様なものが発光しているのがその理由らしい。また、気温は驚くほど高く、上着はさっさとしまう羽目になった。


 バーグに聞いたところ、洞窟の最深部には赤く燃える水があり、その熱が伝わっているとのことだ。要するに火山地帯で地熱が発生しているのだろう。その証拠に炊事場とされる場所は火ではなく岩から吹き出る蒸気を使って調理をしていて、なんだか温泉街のようだった。


「あ!ねえ、バーグのおっさん。もしかして熱い泉とかある?」


「熱い泉?ああ、あるぞ。臭くて飲水には使えんからの、誰もつかっとらんわい」


 温泉きたー!これは覚えておかなくっちゃな。仲良くなったら利用させてもらおう。


 しかし、洞窟を利用しているだけあって石造りの家ばかりだ。木を手に入れようと思えば外で頑張るしか無いため、このような感じに発展したのだろうけど、魔導ランプかなにかに照らされじんわり光る岩の家は神秘的でちょっと旅感が出てきたな。


「ここがマルリの家だよ。マルリは…変わってるがいい人じゃ。仲良くしてやってくれの」


 バーグ夫妻と別れ、ドアをノックする。間もなく、ドアが開き人影が見えた。


「誰じゃい?うわっ、ほんとに誰じゃい?」


 真っ白な髪と耳に赤い目をしたケモミミロリが扉から顔を半分出してこちらの様子を伺っている。


 やべえ、おい、おい…マルリ(103歳)…うちの子にしていいですか?

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