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第八話 建造キットその1

 明日には解放されるだろうクラフト機能【建造キット】で家を作るため基礎工事を進める。


 家の敷地用として使うのには贅沢すぎるほど結構広大に開拓してしまったが、まずは12畳くらいのワンルームを作れば何をするにも十分ではなかろうか。


 整地した場所のどこに建てるか悩んだが、池の畔の小屋に憧れがあったので泉のほとりに作ることにした。水の調達が容易な上に泉にはどうやら魚が居るようなので桟橋でも作って釣りが出来たら言うこと無いしね。


 泉から10m程離れた地点を締め固めていく。広さは多めに40㎡ほどで良いだろう。


 ついでに数m程家から伸びる道も作っておく。後から森や洞窟まで繋げるのだ。


 道には砕石を敷き、それも締め固める。アスファルト舗装までは行かないが、しっかりとした道になったと思う。


 後は明日解放される建造クラフトで本格的に家づくりをすれば良いだろう。


 ……なんだかわくわくしてきてその夜はなかなか寝付けなかった。家ですよ家!一国一城の主!しかも自作!秘密基地とか作るの……夢だったんだよなあ。そう言えば昔友達と山の斜面に穴を掘って……竹藪に段ボールを持ち込んで作ったこともあったっけ……そうそう、大くんと行ったあの廃屋まだあるのかなあ……


 ……

 

 …


 

 ……色々と過去の思い出に浸ってしまって寝付きが悪かった……。なので寝坊してしまったと思ったが、まだ9時前でびっくりだ。結構な寝不足だと思ったのに、身体は驚くほど軽い。健康的な生活を送ってるから多少鍛えられて肉体年齢が若返っているのかもしれんな。

 

 軽くあさの体操をし、適当にニュースを見たついでにアプリを立ち上げて確認してみると、きちんと建造キットが完成していた。よっしゃこれで家を作ることが出来るぞ。


 そのまま製作キットのクラフトをセットしてスマホを充電する。


 今日はなんとか家を建てて、明日は狩りの日にしないと魔石の残量が不安だな……。


 というわけで、ちゃっちゃか行動するべく手早く顔を洗い、朝食を取る。朝からこってりとした肉は流石にキツいのでログボで貰った食料だ。


 食料は例の携帯食料で、チーズ味やフルーツ味などがあるあれだ。これはこれで喉に詰まるが、水でなんとか流し込む。ああ……ヤカンでも作ってせめてお湯を飲みたいな……。


 義務的に食事を済ませ、さっそく建造キットについて女神に聞くことにした。何時ものように呼びかけたらメールが来るんだろうが……あれはちょっとめんどうだ。


「あ、いちいちメール読むのも打つのも怠いのでこっち来て下さい」


 誰に言うでも無く、独り言の様に呟くと


「そうホイホイ降りてくるわけにもいかないのですよ・・・神は忙しいのです・・・」


 とかなんとか言いつつ降りてくるあたりチョロい。肉を焼いたら呼ばなくても降りてくるじゃんか。これくらい誤差みたいなもんだろ。


「まあまあ、ヘルプ読むより現役廃プレイヤーから聞いた方がわかりやすい事ってあるじゃないですか。そんな感じのアレってことで」


 まったくもう!と、口では言っていたが、教えたがり属性もちなのか文句の割には嬉しそうな顔をしている。


「いいですか、建造キットは大型クラフトをするためのものです。建物や大規模な道具、またはそれらに使う大きめの素材の加工などに使用します。一口に建造と言っても色々有りますが……。

 例えば家をレンガの壁で囲みたい、そういった作業もこれで範囲指定をすれば一発です。レンガひとつひとつを積んでいくのでは無く、既に積んである状態で、つまり壁の状態で設置されます。」


「すげえ!ちまちまちまちまやらなくて良いですね!」


「建造ですからね。自動で有るべき姿に構築してくれるんです。家もそうですよ?想像してみて下さい。柱を作って、壁材を作って、屋根を作って、ドアや窓も作ってーとクラフト機能で作られた部品を前にしてどうですか?組み立てられますか?」


「無理っすね!ほぼ一人でログハウス作るエッセイ漫画を読んだことがありますが、彼は重機を使ってましたし!なんたって俺にはそんな器用なスキルも無いし知識もないっすね!ググったところで家はできませんわ!」


 がははと笑うとパンちゃんは疲れた顔をして続ける。


「はい、そうですよね。なので建造キットという機能にしました。開拓キットと操作は大体同じ。範囲を指定して作りたい物の名前を入力するだけです。」


「例えば例えば! ”全面ガラスの家にしてほしい!”なんて匠に伝えるにはどうすればいいのですか!?」


「匠て。頭で考えたとおり建造して貰える、と思っていただければ間違い無いのですが、うーん……貴方の事だからどうせ邪念が入って酷いことになりそうですよね……」


「おい!」


「普通の家を建てるぞー!とクラフトしてる最中に変な妄想が始まって巨大ロボットができちゃったらどうします?」


「熱いなそれは!」


「住めませんからね?ロボットには!はい!決まり!追加機能をインストールしますね!これをやらないとやらかしかねんし!」


 そう言うとパンちゃんはスマホに手をかざした。暖かな光が一瞬スマホを包み込んだ。


「はいできた!そしてはいこれ!」


 ノートと筆記用具を手渡されてしまった。


「なんすかこれ?自由研究?」


「ちーがーいーまーすー!残念な貴方のためになあ、女神さんがなあ、お絵かきしたとおりクラフトする機能をなあ、追加してあげたんじゃーーー」


「それが素ですよね?もう気取って喋るのやめませんか?」


「いいから!とにかく!貴方たいしたスキルが無いって言ってたけどお絵かきは出来るみたいじゃ無いの」


「なぜそれを」


「神の力で貴方のSNSを特定してHNでエゴサした」


「鬼かよ!?」


「お絵かきSNSやってるんだねー 結構上手じゃん!ブクマしてマイペコ申請しといたから!」


「うおおおおおお!うおおおお!あっ……ほんとだ……初期アイコンから申請来てる……ブロック」


「おい!まあいいわ……とにかくあのくらいかけるなら大丈夫よ。作りたい物の絵を書いてスマホのカメラで読み込ませたら良いわ。暇だったら細かく書いたりいろいろな角度で書いたりしても良いけど、ある程度は補完してくれるからそこまでこだわらなくても良いわよ。あとブロック解除しておいてね」


「へえ、家具なんかの絵を含めて書いたらどうなるんですかね?解除しません」


「それは家だけになるわね。家具や日用品なんかは製作キットの領分ね。植物などからスパイスを作るのもそれで出来ちゃうから、貴方が作る分ならそれのアンロックをすれば大抵のものは作れるようになるわね。 お願い解除して……漫画の続きが……WEBでしか読めないのがあるとか知らなかったし……お願い……」


「なるほどなー そうか俺以外には使えないもんねこれ。将来的に人と接触して文化を発達させようと思ったときは製法から伝えないとダメか。どのくらいのレベルで生活してるか知らないけどめんどくさそうだな……」


「それはとりあえず貴方の目で確認して貰うとして、当分は自分の生活だけ考えて良いわよ。死ぬことが無いとは言え、死ぬような思いをさせるのは嫌だしね」


 ありがたい話だ。元々バカンスのつもりだし、それに甘えてのんびりやるとしよう。


「それで……ブロックは……」


 ……普通に作品を気に入ってくれてるみたいなので解除しておいてあげた。

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