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第七十二話 その頃パン達は その2

 少年はすっかり浄水システムの虜になったみたいで、手帳にみっちりとメモを取っている。


 このシステムにはモルモルが無くてはならない。村でこれを実現するためにはルーちゃんやユウ、それにモル助と相談して村に何匹か派遣する必要があるわね。


 少年とモル助の話が終わらないので先に上に戻ることにした。こうやって先に帰ればスカートの中身(禁忌の聖域)を覗かれることも無いしね。


 家に戻ると女性陣が楽しそうに料理を作っていた。

 

「パンさん!素晴らしいですわ!この竈!服が煙り臭くならないし、なにより簡単に調節できる火加減!料理がこんなに楽しいだなんて……」


「凄いでしょー、これねー、村で使うことも…出来なくもないのよ?」


 ただし、と付け加え、魔道具の説明をした。詳しく説明しても面白くないだろうからかいつまんで、ね。


「魔道具は失われた魔法を道具を使って実現する道具なの。コンロの場合は火魔法、水道の場合は水魔法……といった感じね。

 魔法を使おうと思ったら勉強や訓練が必要だけど魔道具は全部道具がやってくれるから、スイッチ、使うとき触る部分ね。そこに手を置いてちょっと念じるだけで良い。慣れれば無意識出来ちゃうくらい。」


 そしてここからが肝心要の説明、ダンジョン運営にも関わる大切な説明だ。


「で、魔道具の命とも言えるのが魔石ね。魔道ランプってあるでしょう。それと同じ仕組みでここの道具達は動いているんだけど、ランプよりも大きな魔石が必要なの。最低でもリブッカくらいのが」


 それを聞いたリットが少ししょんぼりしながら手を上げた。


 はい、リットちゃん


「村にはおうちが沢山あります。お父さん達が頑張ってもリブッカはあんまり取れないと思います!

 魔石が手に入りにくくなって、沢山のお金?が必要になって、使える人が減っちゃうんじゃ無いかと思います。こんな素敵なの皆で使えないのは寂しいです」


 母親に似たのね、良い子ね…。


 しかし心配ご無用!これはダンジョンで解決する!!!……はず…。


「今お父さん達ユウと一緒にお出かけしてるでしょう?ダンジョンってとこに行ってるんだけどね、そこは魔物達がいーーっぱいいるの」


「ええっ、そんなところに行って大丈夫なの?」


「ダンジョンはね、特別な場所だから何があっても絶対死なないし、大けがもしないでおうちに帰ってこれるの」


 はあ~と、ほっとしたように息を吐く母子。マーサも何だかんだ心配してたのね。


「でね、ここからが大事なお話。魔物をやっつけると…なんと魔石が出ます!お肉も出ます!」


「おにく!!!」


 しまった、キンタの娘だった。ごほんと、咳払いをして説明を続ける。


「ダンジョンなら安全に魔石を狙った狩りが出来るでしょう?狩人の数も増えたから交代でダンジョンに来る人達、森でお肉を取る人達ってやればいいの。お父さん達が頑張ればお肉も魔石も沢山手に入るからもっともっと生活が楽になるわよー」


 説明を聞いている内にマーサの表情がどんどんやる気に満ちてきている。キンタ氏、頑張ってくれたまえ……。


 


 少年達が戻ってきたのでお昼を食べつつ、ざっくりと先ほどの話を伝える。


 取りあえず少年には水回りの仕様書とコンロに冷蔵庫をお土産に持たせて研究させよう。


 彼の探究心ならコンロは元より冷蔵庫だって再現してしまうと思う。将来的にはそれを元にして新たな魔道具の開発が出来るようになれば素敵ね。


 そうなってくると一人二人じゃ絶対にキツくなる。少年に弟子を取るよう伝えなくっちゃ。


「少年よ」


「え?ああ、俺ですか。ザックです」


「うむ、少年よ。君はこれから様々な物を造れるようになって村の生活を向上させる役割があります」


「はい!任せて下さい!ザックです」


「今現在も村の人口はどんどん増えています。全家庭にコンロを置くことを想像して下さい。全家庭分のコンロを造ることを想像してみて下さい、少年よ」


「……ザックです」


「とても無理だよね。だから少年、君には弟子を取らせることにするわ。君たちを村に送っていくときにユウがまた広場に人を集めるから、その時コンロの実演をして見せて協力者を募ったらいいの」


「弟子…協力者…?」


「そう、お手伝いよ。年下でも年上でも、興味があって手先が器用な人を捕まえるのよ。コンロや冷蔵庫が売れたらそのお金を分けてあげれば良いの」


「なるほど、お金が貰える上に魔道具を造れるとなれば俺みたいな奴はホイホイ来るな…」


「人が増えて少年の時間に余裕が出来てくれば新しい魔道具を考える時間もできるしね?」


「そ、そうですね!時間もだし、道具が売れて自由になるお金が増えれば材料だって買えるし!」


 

 よし、少年のやる気に火がついたわ。ほっといてもやってくれたと思うけど、アドバイスしてなかったらきっと一人でやろうとして行き詰まってたと思う。


 悔しいけどユウに言われるまで気づかなかったわ。


『いいか、技術者が一人だけじゃ回らなくなる。早めに技術者を育成しないとダメだ。考えても見ろ?どんだけ技術が発達した地球だって一人で回してる工場なんて無いだろ?

 そもそも技術者の数が今まで少なすぎたんだよこの世界は。だからザックに話して育成を始める方向に持って行ってくれよな。ちょっとずつでも技術者が増えていけば村はもっともっと発展するんだからさ』


 あいつたまに賢いから頭にくるのよね。俺は別にチート知識なんて無いぞ、なんて言ってるけど基礎知識の差がうちの子達と段違いって時点でチートだって気づいて欲しいわ。



 午後は自由時間だ、と告げると少年はモル助とどこかへ消え、女性陣達は再びキッチンへと消えていった。


 ユウが投げた石が大きく波紋を広げ世界が大きく動き始めているのを感じる。


 彼を召喚して本当に良かった。


 二匹の魔獣をベッドにして珍しくそんなことを考えちゃった。

 1万PV達成しました!ありがとうございます!


 元日より別作品の連載も始めちゃったので以前よりペースが落ちていますが

 別作品共々楽しんでいただけると嬉しく思います。

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