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第七十一話 その頃パン達は その1

 はー、失敗した。ユウの奴が「狩人共連れてダンジョン行くからお前は女性陣と男一匹連れて魔道具セールス頼む」なんて言うのを気軽に承諾したのは良かったけれど、ルーちゃんはあっち行っちゃうし。


 "でっかい猫"二匹とモルモルをアシスタントにするしか無いじゃないのー!


 と言うわけで、私こと、唯一神であり美女神リパンニェルが直々に神の下僕に作らせたちっさいちっさい屋敷の案内をしているわけ。


 本当は美女神神殿ゲストハウスの方が案内しがいがあったんだけど、家の方が設備は整ってるし、実際家で使ってるのを見せた方がセールスになると思っておうちの方を案内しに来たんだけど……。


「凄いわ…これ、火力の調節も出来るんですね…!」


「お母さん、見て!お水が出るよ!」


「いやいや、よく見ろ、お湯も出るぞ!フロに使われていたのと同じ仕組みかな?」


 お客さん方が台所から出てこなくなってしまった。


 まあ、実際に使ってもらった方がセールスになるし?女性陣には何か料理でもしてもらおうかしら。


 万能の美女神であるこの私が料理をするわけにはいかないし?折角だからお昼でも作って貰ったら良い経験になるでしょ?そうね、そうよ。流石私ジーニアスね。


「お気に召していただけましたか?」


 営業スマイルでにっこり語りかけると、はっと我に返ったように3人がこちらを振り向いた。


「使い方は大体理解したみたいだから、二人には調理体験でもしてもらおうかな?この道具なら適当に触って事故が起こることも無いしね」


「いいんですか!是非,是非やらせて下さい!」


「私も!私もやります!」


「お、俺も!」


 ガッツリ食いついてくる二人は良いとして、少年、君は別の用事があるのだ。


 お客様方が夢中になっているのは魔道コンロだ。魔石から取得した魔力で鍋に熱を与える不思議な道具。ユウの知識を元に産まれた道具レシピに載っていた便利グッズなんだけど、アイツの世界で言う所のIHって奴に似てるわね。


 ユウの奴、道具レシピが見辛いと文句をつけてきたけどアレが自分の知識を元に構築された物だって理解してないからそんなこと言えるのよ。


 服のカラバリが酷い事になってるのは自業自得だって気づいていないでしょうね。趣味で絵なんか書いてるから色の拘りがあるんだろうけど、それがレシピにまで適応されるなんて私も予想してなかったっつーの。


 っと、食材出してあげなきゃね。


 女性陣には食料庫、所謂冷蔵庫を説明しそこから食材を好きなだけ出して使うよう伝えた。


 いつもはお酒とアイスしか入ってないんだけど、今日は見学ように入れ替えてあるのだ。


「わあ、凄い!この中ヒンヤリしてるよ!」


「これは温度調節が出来る魔道具よ。この中に入れておけば食料が傷みにくくなるの」


「パンさぁん…俺にも見せて下さいよお…」


 っと、少年を忘れるところだった。女性陣にお昼を任せ、モルモルを連れて水回りの見学に行く。


 お風呂を見せて「昨日見た奴だ」と言わせた所で浄水システムを視察させる。


「お風呂の水は使った後どうなると思う?」


「えっ?顔を洗ったり、掃除に使ったりして捨てるんじゃ無いんですか?」


 エコな少年は何を当然という顔で言うがそれでは不正解なのだよ。


「お水をそのまま捨てちゃったら泉の水が汚れちゃうじゃ無い」

 

 それの何が悪いのか、と言う少年にわかりやすく衛生観念を植え付ける。


「例えば、狩りで汗だくになったキンタと狩人達がこのお風呂を使ったとするじゃない?その残り湯、君は飲める?」


 言ってて気持ち悪くなってきた…。少年もウンザリした顔で首を横に振っている。


「ここのお水はね、全部泉から引いてるの。お風呂の水をそのまま流しちゃったら泉に流れ込んで汚れちゃうでしょう?水の汚れはね、馬鹿に出来ないのよ?気持ち悪い以上に病気の原因になるんだから」


 はえー、と、感心した顔で私を見つめる少年。ああ…信仰心の高まりを感じる…っ!


 っと、地下に連れて行かなくっちゃ。変なことをするわけじゃ無いわよ?浄水システムを見に行くの。


「足下に気をつけて降りるのよ」


 地下へは家の裏手にある蓋を開けはしごを伝って下りていく。流石の私も中を覗かれるのはアレなので、案内役と言う事で先にハシゴを下りる。

 帰りは帰りで適当に理由をつけて上らせれば覗かれる心配はあるまい。


 女神の秘密は禁則事項だからね。


「お待ちしていました、奥様、ザック殿」


 打ち合わせ通り"奥様”と私を呼ぶモル助。あいつの奥様役ってのがなんだかアレだけど、流石に女神様呼ばわりは不味いしね。そもそもルーちゃんの紹介をした時そうでもしないと誤魔化せなかったからこれはもう諦めたわ。


 ガイドをモル助に任せて後をついて行く。元々そういう性格なのかやたらと責任感が強いモル助はユウからしっかりと仕組みを聞き、何も言われなくてもメンテナンスをしてるみたい。


 最近では清掃責任者の印として頭に立派な王冠のような物を乗せている。これはユウが提案して私とルーちゃんが力を合わせて作った傑作で、ルーちゃんの自動翻訳スキルを"飛ばす"道具。


 ルーちゃんと私がダンジョンに出かけている間、モルモルと意思の疎通が出来ないのは不便だからーって事で作ったんだけど、利便性を考えて腕輪にしたのが大間違い。ヒカリは兎も角モルモルには腕が無い。


 だから仕方なく王冠みたいに頭にのせてるってわけ。


 少年はどう見ても喋らなそうな魔獣が話すのに慣れない様子だったけど、技術的な説明が始まってからは夢中になって質問をしまくってる。慣れたのか、夢中なのか分からないけどビクビクされるよりマシね。


「先生!では、この仕組みにはモルモルが必要不可欠と言うことですね?」


「左様」


 左様って…。種族を超えた師弟関係が生まれたようね……。


 

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