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第六十九話 キンタ ダンジョンに立つ

キンタ視点でのダンジョン初体験回です。

 ユウのヤツに誘われて奴の家に来たまでは良かったが、ありゃなんだ?随分とでっかい家に住んでると思ったら、あれは家では無いと。じゃあ、お前の家はどれなんだと思ったらこじんまりとした普通の家だ。


 そんでもって家かと思った建物は俺達を泊めるためだけの建物だという。


 さらにビビったのはクロベエを白くしたような大きな魔獣。こいつはまだいい、クロベエがユウに懐いて喋ってる位だから理解が出来る。問題はモルモルだ。


 モルモルは野池でたまに見かけることがあったが、あんなにデカくねえし、人になれると言うことも無い。まして、喋るなんて聞いたことねえぞ?


 ただまあ、ロップの姉ちゃんは良かった。聞けば魔族だって事だが、そんなのは関係ないね。種族を超えた付き合いってのもあるだろ?っと、寒気がするな……マーサに怒られちまう。



「キンタさん!キンタさん!現実逃避してないで指示を出して下さい!」


 狩人の若いもん、モフゾウに言われ我に返る。いや現実逃避するなって言う方が無理ってもんよ。


 転送とやらが終わってみればなんだいこれは、湿原じゃねえか。俺達は確かに洞窟の部屋に入ったよな?


 光に包まれただけでなんも起きねえじゃねえかと部屋から外に出たらこれだ。


 一緒についてきたロップの姉ちゃんから「帰りはここから来たときと同じようにどうぞ-」って説明受けたが、それ以上の説明をして貰いたかった。


 聞こうと思ったらもう一人で戻ってるんだもんなああああ。


「だからキンタさんってば!俺達どう動けば……」


 っと、いかんいかん。これがユウが言っていた訓練と言う奴だろう。上手くやれば素材も手に入るときたもんだ。いっちょ腕試ししてみるかね。


「ようし、モフゾウ、あとケンゴにヤス!俺に続け!後の二人は後ろからついてこい!慎重にな!」


 俺達は森と共に生きる狩人だ。正直湿原なんてまともに歩いたのは初めてで勝手が分からない。


 ユウの奴め、訓練だというのであれば森に行かしてくれりゃいいのによ、うおっと道がぬかるんでいるな…


「ヤス!向こうになんか見えるぞ!気をつけて歩け!モフゾウ!お前は右を警戒しろ!」


 一応道らしい物,桟橋があるため思ったよりは歩きやすいが、水に囲まれたこの地形は正直心臓が痛くなる。見るからに水の魔物が居る地形だ、いつ襲いかかられてもおかしくない。


 と、後ろから聞き慣れない声が聞こえた。


「お、兄ちゃん見ん顔やね、キウリもっとる?」


 な、なんだ…あの緑色のおっさんは…。どう見ても人間じゃ無いが、若いもんに親しげに話しかけている…。


「うーん、もっとらんのか、残念」


 すっかり油断していた,と気づかされる。


 若者の腹から何かとがった物が生えていた。


 このままでは死んでしまう!助けねば!,と思った瞬間若者の姿が消えた。


「あー、そういやそうやったね。うんうん、君たちもああなりたくなかったらきばってや」


 おっさんに言われて思い出す。ここでは死ぬことは無い、瀕死になっても五体満足で生き残れると。


 というか、おっさんもその事知ってるのか?くそ、なんだかやりにくいな!


「ほれほれ、あんちゃん、わいは敵やぞ!油断してたらザクーってなるで」


 そうだ、こいつはやたら馴れ馴れしいとは言え既に仲間を一人始末した敵だ。俺の判断が鈍っては全滅に繋がってしまう。


 早々に全滅したときのユウの顔…想像したくねえ!


「モフゾウ!ケンゴ!援護しろ!」


 俺のかけ声と共に二人が陣形を取る。散々練習した大型狩猟用の戦法だ。


 弓で左右から牽制し、動きを制限する。俺がクロスボウで急所を射貫く、という戦法なのだが……、


 このおっさん、素早いな…!!!


「はい、残念賞!ほい!これまた残念!なんやそろそろ当ててくれや」


 左に右に、上に水にと巧みに避ける緑のおっさん、これは腹立たしい。


「うーん、退屈やねそろそろグッバイのお時間や」


 そういうと緑のオッサンが怪しげな動きを始める。


「っく!ケンゴ!ヤス!後ろの二人を護れ!何か来るぞ!」


「さーらばい ばい さーらばい くるっと回って最後っぺ」


 気が抜ける歌と共に謎の踊りを始め、最後は尻を向けて…尻を向けて…くそが!!!!!


 強烈な香りと共に意識を失い、気づいたら石で出来た小部屋に居た。


 周りをみればヤスやケンゴ、若い連中の姿も見える。


「ちくしょう……これは…やられたってやつか?」

  

 フラつく体で部屋から出てみれば満面の笑顔でユウが拍手をしている。


「おめでとうございます!初めてのリスポーンはどうでしたか?ちなみに記録は四十五分です!初めてにしてはがんばりましたね?」


 思った通りめっちゃいい笑顔だ!くそ!


「キンタさん、すいません、俺が油断してさっさとやられてなかったら……」


 最初に刺された若造が頭を下げてくる。見たところ傷もないし、元気そうだ。ほんとに死なねえんだな、ここは……。


「さて、初めてダンジョン死を経験されたキンタさんに質問です!」


 ロップの姉ちゃん、リリィとかいったか、彼女が変な仕草で俺に質問をする。


「なかなか壮絶な死を迎えたと想像されますが、いったいどんな最期を?」


 正直ユウに話したくは無い、話したくは無いが、やめろそんな目で俺を見るな!


 この姉ちゃんの誘惑はヤバいな……、しょうが無い、答えるか……。


「緑の…おっさん…」


「緑のおっさん、ですか?あー、タルットですね?タルットに攻撃されたと?それはどのような?」


「…だよ…」


「申し訳ありません、もう少し大きな声でお願いします」


「ああああ!!!もう!!!屁だよ!!変な踊りと共に放たれた屁だよ!!!」


 叫ぶように言い放ち、ふと視線を下げると床でユウが笑いすぎて死にそうになっていた。


 ……くそう!次は負けねえぞ!

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