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第七話 開拓のはじまり

 洞窟から戻りドサドサと岩塩をボックスに入れる。山にはまだまだ沢山残っていてうんざりするが、のんびり回収しよう。なんせ時間は沢山あるのだから。


『真面目な顔をしてる所言いにくいけど、スマホのストレージとそのボックスは連動してるって教えましたよね?なんでわざわざ移し替えてるんです?』


 ……そうだった……。


 無意味な行動を指摘され、顔がかっと熱くなったが、腹が減りまくってるのでメールは既読無視を決め込むこととした。


 ……さて、気を取り直してヒッグホッグの肉を焼いてみることにしよう。スマホから肉を出すのはなんかやだな……なるほど、こういう時にボックスが役に立つというわけか。


 鉄板なんて無いので豪快に棒に刺して焼く。鉄の串でもあれば楽なのだが、無いので棒が燃えないようやや遠火で焼くのだ。


 遠火なので時間がかかる。こういうのは作ってる最中が一番つらい。ましてブタのような魔獣の肉だ。じっくり火を通さないと怖いので適当に切り上げて「レアだぜ!」と言い切って食えないのがつらい。さっきからジュウジュウと脂が火に落ちて良い香りを立てるもんだからもう辛い!おなか壊して良いからたべりゅうう!ってなる!つらい!


 つらい修行のような時間を暫く過し……とうとうNIKUの時間だぁ!うおおおおお!!!っと、待て待て!慌てるな!岩塩だ!岩塩をふぁぁさあっとかけるんだ。


 うおおお!いただきます!


「うんめえええええええ!!!!」


「あちい!あちい!うまい!うまうま!」


 クロベエも熱いのに耐えつつ、とろけた顔でむしゃぶりついている。いやあ、洒落にならん!これは本当に旨い。イノシシっぽい見た目からもう少し野性味溢れる獣臭い味を想像したが、普段スーパーで買ってる豚肉よりよっぽど旨くて参ったね。こりゃ完敗だ。


「ほんと美味しいわね!みてよ!この脂!凄く甘いわよ!」


「へー!うおおお!マジだ!やばいなこれ!胡椒とかありゃなー」


「はいはい!胡椒あるわよ!」


「サンキュー!うおおおおお!最強に旨い・・・」


「今度はこのレモンを搾って・・・ んん~~~!!!美味しい!美味しい!」


「わ、レモン果汁あんの?俺にもー!うっひょおおおうめえ!いやあ、ビールが欲しくなりますな!」


 ひとしきりワイワイと食べ、良い具合に腹が落ち着いた頃我に返る。


「あのー、パンちゃんさん?」


「はい?あ、お茶ちょうだい」


「ああ、はいはい。茶は無いので水ですが……って、そうではなくて! あのー なんでちゃっかり居るんすか?」


「あれ!めがみ いつきたんだー?」


「え?あ!ああ!うん、様子を見てたらね、なんか美味しそうなの焼いてるじゃ無い?言ったよね、ロースが良いって。でさあ、私の今夜のご飯と来たらカップ麺だった訳よ。なんだかなー、ずるいなー、私も頑張ってるのになー、ガチャで爆死した分良いことあってもいいんじゃないかなー はー、肉かーいいなーって思ってたらここに居た訳よ」


「居たわけよじゃないよ! 胡椒とかレモンとかありがたかったけど、普通こう言うのって『まさかこれは……胡椒?』とか偶然見つけたり、創造スキルで生み出したり……苦労して手に入れるようなもんじゃ無いですか?それを……こんな楽に……しかもスーパーの値札ついてるし使いかけだし……私物かよっつう」


「えっそっち?うん、でもそうね……軽率でした……ごめんなさい……。異世界生活を楽しんでねと言ったのに、水を差しちゃいました……」


「ああいや、楽だしいいよ。楽しみを奪われたとか言ってるわけじゃねーから。あくまでも一般論を述べただけで、俺はめんどくせーこと回避できるならいいんですよ。つーわけでそれ頂戴ね。また肉あげるからさ。ああ、なんなら今度は醤油持ってきてよ。醤油とか自作すんのぜってーむりだしさ」


「ええ……まあ……うん……この世界をどう発展させるかは全部貴方に任せてるし、どんな手段を使おうと文句は言わないわ。ま、前も言った気がするけど適当に色々やってくれたらいいから。適当にね」


 異世界転移とかさせられたからこちらの世界を開拓して開発して地球のものを再現してどうのこうのやる羽目になるのかなーと思ったが、今のところは適当で良いらしい……。


 もっと食い下がってみたところ、胡椒や醤油なんかはパンちゃん経由で買ってきて貰えることになったけど、流石にそうやって地球から輸入したもんをこの世界で売るというわけにもいかないだろう。


 あくまでパンちゃんから頂ける物は私用として、こちらの世界に住む人々用にちゃんと胡椒的なものやレモン的なものくらいは見つける必要がある。最終的に自立をさせなければいけないのだから、それを手に入れ、使う文化を広めなければいけないんだ。


「そうそう、貴方の役割は人と魔族に文化を与え広めること。人はともかく魔族は難しいだろうけど私も手伝うし、がんばってねー」


「っ!読心術か! つか、気軽に言ってくれるなあ……」


 そんな感じで予想外の客が来てしまったが、楽しい夕食だった。


 食料はまだたっぷりあるし、ヒッグホッグの石は2回満充電できる程の魔力があるようだったので、明日は狩りはやめ別のことをすることにした。


 そう、すっかり忘れていたが開拓キットのクラフトが終わっていたのだ。




 新しい朝だ。特に希望は無いが朝がきた。


 建造キットのクラフトをしかけ、充電をする。満タンになったスマホで今度は開拓キットを開いてみると、ARアプリのようにカメラが立ち上がった。ほんとカメラ使わせるの好きだなこのアプリ。


 目の前の景色に重なるようにメニューが並んでいる。試しに「切土」を押すと地面に網目状の模様が広がった。適当に少し離れた場所を撫でてみると地面が平坦になっていく。


「うわなんだこれおもすれ」


 街を作るようなシミュレーションゲームで土地をならしてるときのような感覚だわ。……やばい、これは油断するとずっと触っちまう。うっかりするとここら一帯がスーパーフラットになりかねん。


 気を取り直して家を建てる場所と畑を作る場所を作っていく。指を動かすだけでスイスイ地面が平らになるのはほんと面白くて困る。


 次に「掘削」だ。試しに一カ所軽くタップしてみると、50cmほどの穴が開いていた。

 

 なるほど、この手の挙動か。ならば押したままだとどうなるのっと、試してみれば、押している間どんどん広く深く穴が掘られていく。


「おお、便利じゃん!これでもうクロベエに掘って貰わなくてすみそうだ。好きじゃないって言ってたしなあ」


「ふうん、そっかあ……」


 少し寂しそうな顔をしているので撫でておいた。よしよし。お前は自由に好きなだけ掘って良いんだよ。


 これで基礎工事は出来そうだが、雨でドロドロにならないように砕石も敷きたいよな。


 というわけで、岩塩の洞窟に行き掘削をすることにした。


 今日は塩では無くて石目当ての掘削だ。岩に向けてスマホを投げまくってるとメールが入ったようで穴の奥から音が聞こえた。


 手元に戻ったスマホをタップし確認すると


『だーかーらー!開拓キットがあるのになんでスマホでやるのよ!!!(泣き顔絵文字)』


 だってスマホ投げるの気持ちいいし・・・


 無視をしてスマホを投げていたが、投げるたびメールが来てやかましいので、仕方なく開拓キットでやってやることにした。ったく、自由にやれと言っておいてこれだから神々は信用ならんな。


 「掘削」をタップし、岩をゴリゴリと掘っていく。これはこれで鉛筆のようにゴリゴリ削れるので面白い。なんだろう、俺はこういう知育玩具のような物が好きなんだろうか……悲しくなってきた。


 ……気付けば山のように積み上がっていた石をさらに細かく砕き、砕石にする。


 どうやって持って行こうか悩んだが、アイテムボックスを使えば良いことを思い出し、スマホを取り出した。石をひとつひとつタップしなければいけないのかと一瞬震えたが、そのタイミングで女神からメールが入って『指で囲むように範囲指定すればまとめて入れらわ』と、教えられほっとした。


 小石ひとつひとつをポチポチタップしてたら指の先がガッチガチになりそうだったからな……これはほんとありがたい。


 どういう理屈かわからんが、意図しないものが混じって格納されることはまず無いそうなのでどんどん適当に入れていく。


「ぐるっとかこんでぽーい ぐるっとかこんでぽーい ぐるっとかこんでーーぽぽーい!」


 歌いながらぽいぽい入れていたらあっという間にスッキリした。むう……収納したり無い……岩山を全部砕いて入れてしまおうかしら……いや、辞めておこう。パンちゃんから鬼のようにメールが届いて止められそうだしな。


 砕石を入れている最中『肉と同じ場所に砕石がはいってんのかあ……』と、少し気持ち悪く思ったけれど、肉食系女神がクレームメールを寄越さない辺り、上手いこと仕分けされる様に出来てるのだろう。


 うーむ、もっと早く言ってくれればイノシシや木材なんかを楽に運べたのに……まあ存在を忘れてたけどさあ、範囲指定を早く教えてくれてればさ、岩塩だって昨日全部持って帰れたじゃ無いかあ……。


『き、聞かないのが悪い』


 こいつ絶対忘れてただろ……。

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