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第六十六話 はじめてのお風呂

 さて、食事の前にお風呂の時間だ。


 この世界には入浴という概念がやっぱり無かった。

 

 たまに水浴びをしたり、身体を拭いたりする程度でお湯に浸かると言うことはしない。

 

 大量の水を沸かして消費すると言うことが難しいからな。


「はーい、みなさん。お風呂の時間ですよー。ん、そこのキンタ君、お風呂って何だ?って質問しようとしましたね?それでは一度みんなで見学してみましょう」


 口を「お」にした状態でキンタが固まっていた。何時ものパターンを潰してやったぜ!


「はい、ここから先が浴室になりますので、ここで靴を脱いで下さいね。」


 浴室はスーパー銭湯のような作りになっていたため、入り口で靴を脱ぐ必要があるのだ。


「本来はこの青い布の入り口から男性が、赤い布の入り口から女性がそれぞれ別れて入ります、はい、キンタ君「なんで別れる必要があるんだ」って顔してますね、其れは中に入って説明します」


 口をパクパクとさせて固まっているキンタ。質問コーナーをやってる暇は無いんだ、すまんな。


「はい、ここが脱衣所です。ここで服を脱いで貰うことになりますが、外からは見えないので安心して下さい。あ、キンタ君!まだ脱がないで下さいね!今は見学です!」


 キンタはどうも生き急ぐ傾向にあるな……。


「服を脱いだら、ここから浴場に入ります。向こうに見える大きな容器、あれは浴槽と言ってお湯をためる物です。入る前にここで身体を洗って入りますので、皆で入ってもお湯が汚れにくいんですねー」


 説明が終わり、男女に分かれて実際に入ってもらった。


「うし、男共!俺に続け!風呂のなんたるかを伝授してやる!!!」


「「「おおおおーーーー!!!!」」」


「はーい、じゃあ今からお風呂に入りますよー。ルーちゃんはリットに入り方教えてあげてねえ」


「はーーい!」


 うーん、向こうはなんだか華やかで良いな……。ってこういうノリにしてるのは俺なんだけどさ。


「うし、男共!これが蛇口だ!これを捻ると湯が、こっちを捻ると水が出る。水と湯を丁度よく混ぜて火傷しないよう身体を洗え!

 あ!ザック!興味深いのはわかるが、後で見せるから今は風呂に集中しろ!!こら!キンタ!飛び込みは禁止だ!狩人共!走るな!風呂で走ると…ほらみろ!転んだ!」



「はい、では皆さん注目ー!これはシャンプーと言う物ですよー。まだ村の皆さんにおわけすることは出来ませんが、ここに居る間は遠慮無く使って下さいねー。

 そうそう、マーサさん上手です。リットちゃん、目をつぶっててねー はいはい、ルーちゃんもね- シャンプーを流したら今度はこのコンディショナーを…そうそう、ね?良い香りでしょー、これ私もお気に入りでー……」


「うおおおおお!!!!!泳ぐなと言われてもな!!冷たい川しか知らない俺にはな!!ここは!天国だ!!うおおおお!!!」


「この石鹸?いいわねー、柔らかいから泡立ちやすいしピリピリしないのねー」


「あっぢいいいい!!!何すんだクソ!!!喰らえ!!!おらああ!!!」


「ルーちゃん髪、綺麗だねーこのシャンプーを使ってれば私も綺麗になれるかなー?」


「うおおおおお!!!!お前ら静かにお湯に浸かりやがれええええええ!!!!」


「ゆっくりお湯に浸かるとね、汗が出てくるでしょう?これがお肌に良くてね……」



   ◇


「つ…疲れた……おう、お前ら、用意しておいた服に着替えろ…お前らのはメイドが洗うから…」


「良いお湯だったわねー、うちで用意した服に着替えてね。明日までには二人の服綺麗にしておいてあげるから」


   ◇


 ロビーに戻り、疲れた顔でビールを飲んでると女性陣が戻ってきた。すっかり疲れが取れたようで髪がサラサラだの、お肌がすべすべだのキャッキャと女子トークを繰り広げている。


「ずいぶん疲れた顔してるわね?なんだか賑やかだったけどダメよ、お風呂で騒いじゃ」


 どっと疲れが押し寄せた。


 キンタ達は思いがけず出てきたビールに大喜びだ。

 これもパンの仕業だろう、ロビーの片隅に設けられたバーカウンターにウサ族のメイドが居て俺が知らない機械から生ビールを注いでくれる。


 冷たい生は嬉しいが、パンの事を思うと非常に腹立たしい。


 疲れた顔でビールを飲んでいるとマーサさんが挨拶にやってきた。


「今日はご招待いただいただけでは無く、お風呂まで体験させていただいてありがとうございます」


「いえいえ、色々とお世話になっていますので,そのお礼ですよ。

 お風呂はザックと相談していずれ村にも作ることになりますし、その下見みたいなもんだと思って下さい」


「そうですか!ありがとうございます。それで…この服なんですか?前からユウさんが着ていたのをみて気にはしてたんですが、肌触りが良くて良い生地ですよね…どうやってこれを?」


「どうやってって…そりゃ…フワフワの実をつかってですね…」


 要領を得ないので、実物を取り出し見せてみたが、見たことが無いと言われてしまった。


「え、じゃあ皆は服をどうやって?」


「どうって…ショアの茎を加工して織って…ですよ」


 脱力する。服の材料ははじめから家の周りにあったというわけか。そう言えば麻の服という物があったな。なるほど、そうかあ……そうかあ……。


 がっくりとうなだれる俺を気遣ってか、好奇心が分からないがマーサが服について尋ねてくる。


「でもこの服凄いですよ。何時も着ている服がもう着られないくらい快適です。

 軽くて暖かくて……なんだかとっても優しい生地ですね」


 人妻で無ければ!キンタさえ帰らぬ物になれば!そんなレベルのかわいらしい笑顔で心底楽しそうに生地を研究している。


 そんな顔で言われたら…ってそうじゃなくてもそのうち教えようと思ってたけどさ…


「良かったらフワフワの実をいくつかお分けしますよ。好きなように研究して服を作る素材にして見て下さいね。帰りにお土産として渡しますから」


「ありがとう!これで肌着を作ったらきっと快適だわ…!」


 肌着と言われてちょっと変な気分になってしまったので慌てて食事の時間を宣言する。


「はい、じゃあ食事の時間にしますよー。食事をしながら明日の予定をお話ししますので皆さんお席について下さいね」


 ウサ族によって続々と料理が運ばれてくる。連中は料理もそこそこ出来るようだ。

 指揮を執っているのはモル助。テキパキと的確に指揮を執っている。キンタ達は最初に凄いのを見てしまったので、今更モル助が喋ろうが気にしないことにしたようだ。


 しかし、モル助…異様に様になっている。ううむ、執事スキルでも増えてるんじゃ無いかコイツ…?

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