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第六十五話 ご招待

 キンタ一家にザック、それと狩人5人を引き連れ俺達の家に向かっている。


 村が出来て早々に村長不在と言う事態に陥っているわけだが、シゲミチを説得して村長代理のタスキを掛けて置いてきたので何も心配することはあるまい。


 多分……。


 以前と変わらず、森を通る街道沿いには脅威となる魔獣も出ず、狩人達は退屈で死にそうな顔をしている。


 狩人だけ連れて行くのであれば街道を外したルートを通り肉の補充もしていっても良かったのだが、今回はマーサにリットも居る。狩人達には申し訳ないが魔獣なんて出ない方が助かるのだ。


 予定通り日暮れ前には森を抜けたのでさっさとキャンプの用意を始めた。


 この日のために作っておいた5人用テントを3つ取り出す。ユウ一家、キンタ一家+ザック、狩人一同でそれぞれ使うのだ。狩人達には少し狭く感じるかもしれないが、我慢して欲しい。


「いやあ、便利なものだな、このテントとかいうやつはよ」


 俺から聞きながらテントをくみ上げたキンタが出たり入ったりしながらシミジミという。


「今後さらに腕が上がれば遠くまで狩りに行くこともあるだろ?村で素材を用意できるようになったら誰かが売るよう手配するよ」


 同じく興味深そうに出たり入ったりを繰り返すザックにも声をかける。


「ザック、気になるだろ?どうせ帰りも使うんだ、その後はお前にやるよ」


「えっ!?ほんとですか?ありがとうございます!」


 ぱあっと笑顔になって大喜びしている。出たり入ったりしながら必死にメモを取ってたもんな、興味が出たなら作って貰わなきゃ。


「ただ、この布の部分がちょっと特殊だからな。今回はシゲミチと協力して素材から考えてくれ」


「ただの布…じゃあないですねこれ」


 手でさわさわと触りながら言う。


「これと同じ材質はお前らにはまだ作れない。だから肝心な所だけ覚えておいてくれ。水を通さない、風を通さない。取りあえずこの二つの条件を満たせれば良い」


 ザックは顎に手を当て考え込んでいる。

 

「大きな布に…何かを塗れば……」


 ブツブツと考えたりメモを取ったり忙しそうだ。このままにして置いてやろう。


 よく見れば、キンタやザックだけではなく、皆楽しそうにしている。


 テントには謎の魅力があるから仕方ないな。


 皆が夢中になっている間にさっさと夕食の支度をしてしまう。それに気づいたマーサが慌てて手伝いに駆けつけてくれた。


 折角のキャンプなのでカレーを作りたかったが香辛料が足りない。なので豚汁…もといヒッグホッグ汁を作った。


 本当はおにぎりでもあれば最高なのだが、今はじっと我慢だ。


 村の催しでちょいちょい味噌や醤油を使った料理を出していたが、概ね好評であった。今も皆旨そうに食っている。


 今のところ村では作れないので、これはうちで作って村に下ろす商品にしようと思っている。


「よーし、明日は早いぞ!食ったら寝よう!」


 キンタが酒を飲みたそうな顔をしていたが、あれはまだ特別なときだけだ。


 それ以上は村で作れるようになるまで我慢して欲しい。

 

  ◇◇


 翌日、早朝から歩き始め家に着いたのは夕方だった。


 まずは腰を下ろして貰おうと、ゲストハウスに案内する。


 …とは言っても俺もまだ見てないんだよな。あいつら一体どんなのを作ったのか……。


 家から少し離れたところに大きめの建造物が見える。他に思い当たらないから恐らくそうなのだろう。


 2階建てのそれに向かってると、狩人達が騒ぎ始めた。


「魔獣だ!!!」


「ユウさん!魔獣が出ました!」


 魔獣?今まで何故か家の周りには出なかったのになあ?なんて振り向くと……


「クロベエ!!!おかえりいいいいい!!!あ!主も!おかえりなさい!」


 ヒカリだ……。どうせモル助だろうと思ったらもっと魔獣っぽいヤツだった。


「喋った?喋ってるぞ?」


「い、いやまてクロベエさんも喋ってるから…」


「こ、この辺りの魔獣は喋るのか?」


 喋ったら喋ったで大騒ぎだ。


「あ、あー、こいつは人を襲わないから……。クロベエの奥さんみたいなもんだし……」


「ユウ???」


 クロベエが何か言いたそうだが気にしない。


「他にもモルモルという魔獣やうさ耳生やしたヤツなんかもいるが、俺の仲間だから気にしないでくれ」


「……気にすんなって言われてもな……」


 変な汗を流しながらキョロキョロと辺りを見渡すキンタ。


「まあ、詳しい話は追々な。さあ、ここがゲストハウスだ。好きに使ってくれ」


 扉を開けると驚いた。立派なロビーがあり、中央には2階に上がる階段が見える。


 思わずキンタ達と一緒になって驚いていると2階からウサ族の女が降りてきた。


「お帰りなさいませ、主様。お客様をお部屋までご案内します」


 ええーーー!メイドさんだ、うさ耳メイドさんが居る!


 服装こそ普通だが、メイドさんだこれは。後でメイド服を作らないといけないな……。


 またキンタ達が驚くかな,と思いきや、レベルが上って上位種となり、うさ耳と尻尾以外は人間くさい風貌と化している上位ウサ族はさほど驚かれなかったようだ。


 マーサが凄い顔でキンタの尻をつまんでいるが、其れは俺には関係ない話だ。


 キンタ達が2階に案内されていったタイミングでモル助が報告に出てきた。ヒカリもこれくらい空気を読んで欲しかった。


「主よ、無事で何よりだ。この様な具合になったが、満足していただけただろうか?」


「満足も何もびっくりしたよ。よくこんなの建てられたな?」


「いえ、我々だけの力ではありませんので……」


 謙遜するモル助。もっと誇って良いんだぞ。なんたって俺は「俺の家を参考に20人くらいが寝泊まりできる家を作っておいてくれ」と適当に頼んだだけだ。想像してたのは大きめの平屋だし、こんな2階建ての宿屋みたいなのは想像してない。


「それもこれも女神様のおかげですから」


 そう言われてパンを見ると目を合わせないようにしている。


「女神様の?」


「あーあー!!良いじゃ無い!いいじゃない!すごいすごい!ほら!ユウ、私たちも見学しましょうよ!」


 ええい、そうやって隠されると気になる!


「モルモル、詳しく話してくれないかな?」


 別に女神が手伝ったくらいで文句を言う俺じゃ無い。何を隠そうとしてるんだか……。大体そうやって隠そうとしたら余計俺が気にするだろう?


「ううむ、いえ、客が居るのはわずかな間、帰った後は自分の神殿にする故、このように建てろと、設計図をいただきまして。こちらがその設計図です…」


 そこには「リパンニェル神殿」と書いてあり、1階にロビーと大浴場、2階に5部屋を備えた立派な建物が描かれていた。

 各部屋は8畳くらいはあり、それぞれ「昼寝部屋」「読書部屋」「創作部屋」「ゲーム部屋」「寝室」と書かれている。小学生の考えた夢のおうちかよ……


「ほほう……」


「ち、ちがうのよ…ユウ……ほら……!そ、そう!あの計画がうまくいけばね?ここに人が来るようになるでしょ?そしたら…ほら?ね?」


 なんだか凄く必死に言い訳しているが、録音したからな。後でその時が来たら大いにその言い訳を利用させて貰おう。


「それで女神様、客が帰ったら寝具を片付け家具の設置を……」


「あーあー!!モル助さん!しー!しー!」


 モル助は空気を読むと言うことをまだ覚えていないようだが、そのスキルはこれからも取得しないで居て貰いたいものだな。

 

 おかげで女神の野望を明るみに出すことが出来たし、あとでボーナスでもやることにしよう。



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