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第六十三話 新年

「あけましておめでとう!今年もよろしくな!」


 唐突に何を言ってるんだこの人は、村人達のそういう視線が集まってくる。


「さて、今俺が何を言ったのか、その説明をするぞ。今日から"暦"という物を皆に使って貰おうと思う」


 シゲミチに合図を送り、幕を剥がして貰う。


「おおっ…何だあれは?数字がかいてあるぞ」


 幕の中から現れたのは黒板くらいの幅がある大きな木製の板だ。


 その板の左上には「1月」と書かれた木札がぶら下がっていて、その下にはマス目がある。マス目の最上段には曜日が書かれていて、その下段から1から31までの数字が入った木札が順番にぶら下がっている。


「これが暦だ。左上の"1月"というのが大きなくくり、下のマスに書かれている日から土が曜日と呼ばれる物で、その下に書いてある数字達が日付と言うものだ」


「どう見れば良いんだい?」


「簡単さ、まず左上の数字を見てくれ。1月とかいてあるね。そして下のマスを見ると月と書いてある。これは月曜日という意味だ。最後にその下のマスをみてくれ。1と書いてある。これは今日から始めるので、今日のことを「1月1日月曜日」と呼ぶのさ」


「つ、つまりどういうことだっていうんだ?」


「使い方の例を挙げよう。パン、ルーちゃん頼む…ってルーちゃんはもう寝ちゃったか。じゃあクロベエ、代わりにお願いね」


 考えてみればもう深夜だ。子供はおねむの時間だ。パンとクロベエがやってきて寸劇が始まる。



「クロベエくん、リブッカの肉が欲しいんだけど売ってるかな?」


「リブッカかい?申し訳ないな、今在庫が無いから売れないよ」


「いつ頃なら売れる?」


「そうだね、今日1日だから…ユウ、これなんて書いてある?」


 代役なので俺のカンペを見ながらセリフを言っているのだが、まだ文字をちゃんと覚えてないのでこうなってしまう。会場からワハハと笑い声が聞こえてくるが、丁度良い息抜きになって何よりだ。



 (よやく、だよ)


「今日1日だから、7日…は休みだから8日、来週の月曜日には売れるよ。よやくするかい?」


「そうね、お願いするわ」



「はい、ありがとうクロベエ、パン。こういう感じで、予定を管理しやすくなる便利な仕組みなんだ。

 説明しきれない所もあるから、そこに小さな今年のカレンダーと説明書を置いておいたから是非持って帰ってくれ。勿論1家族ひとつだからな」


 配布係のシゲミチが人混みに飲まれていく。


「押さないで!押さないで!並んで!並んでよお!!!」


 この村の人たちはノリが良いから新しい物には直ぐ飛びついてくれる。まして今日は気持ちよくなる飲み物を飲んでるから余計にテンションが高い。


「俺がいる間は俺に聞いても良いが、居ない間はシゲミチに質問してくれな。カレンダーの管理を任せてあるから詳しいぞ」


「ユ、ユウさあん……」


 泣きそうな顔で俺を見てくるが、シゲミチにしか頼めない。済まぬシゲミチ、お礼は弾むから……。


 

 騒動が収まったので、〆の挨拶をする。


「さて、俺が最初にいったあけましておめでとう!は1年の始まりにする挨拶だ。

 詳しくは説明書にもかいてあるが、今日がこの村から始まる新たな歴史の1年目だ。

 ”リパン歴1年1月1日月曜日”本日をもって、新たな時代の幕開けだ!

 よし、みんな飲み物を持ってくれ!乾杯、といったら皆も乾杯と返し、飲み物を掲げてくれ」


 では……、と前置きをして


「新たな時代に!始まりの村に!乾杯!」


「「「「乾杯!!」」」


 隣に居たパンやシゲミチとグラスをぶつけ合う。それを見ていた村人達もそういうものなのか、と真似をしてあちらこちらでグラスが音を立てている。


 後は自由解散とした。飲みたいヤツはまだ居てよし、眠いヤツは帰ってよしだ。


 どれだけの人が残るかな,と思ったが、男共は大半が帰らず飲み続けていた。これは早いうちに酒の造り方をなんとか伝授しないといけないな。


 ドブロクや葡萄酒なら作れそうな気もするが、パンが言っていた酒が造れる集落という話が気になる。折角ならばそこに訪れて交流し、酒を譲って貰ったり、技術者を派遣して貰ったり出来れば楽しいよな。


 後から後からやることが増えてくる。


 取りあえず、キンタ一家とザック、狩人の何人かをうちに招待しようと思う。

 

 俺の家を見て貰って、ダンジョンを見て貰って、それぞれ刺激を受けてもらうためだ。


 多くの人を呼ぶためには今の家は狭すぎるので、新たにゲストハウスを建造している…はずだ。


 本当はここに来る前に俺が手をかけて建造したかったのだが、暇が無かった。建造キットを使えばさっさと造れはしたが、その余裕すら無かったのだ。


 なので……、少々不安もあったがウサ族にお願いしてきたのだ。進化した奴らの建築技術は正直なところこの村人達より優れている。


 俺の家を建てたときに書いた図面を見せたら関心していた辺り、きちんと理解もしていたことだろう。もっとも、虚弱な種族であるし、まだそれほど信頼もしていないのでモル助に現場監督兼ガードマンとして任命してきた。


 水回りの施工も必要になるため、その辺に詳しいと言うのもその理由だ。


「ちょっと不安だけど帰るのが楽しみだな」


 帰る様子が無いキンタの所に相談に向かった。

 

 

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