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第五十六話 肉の集落再び

 ダンジョンの問題は取りあえず一段落したが、あのままではいずれまた面倒なことが起きかねない。


 なので、今日は兼ねてから計画していたことを実行すべく、他の計画実現も含めて久々に集落に来ている。


「ユウさんが来たぞー!」


 門をくぐった瞬間これである。たちまち集落の住人達に取り囲まれた。


 以前より明らかに人口が増えている。キンタに聞くと、肉が安定供給されるとの噂を聞きつけた周囲の小さな集落から人が次々にやってきて定住してしまったらしい。

 元の住人達としても人口が増える事には文句は無く、協力して開墾したり、新たな狩人の教育をしたりと対策をして今のところ食料の問題は無いそうだ。


 シゲミチが挨拶に来たので詳しく聞いてみたが、その人口は200人を超える規模になっていた。


「色々と相談したいことがあるから、まずは俺の家に来てくれないか」


 キンタに言われ、今はお茶を飲みながら談笑している、


「ユウが来たら相談したいことがあったんだが……、まず先に聞きたいことができちまった…」


 その覚悟と言い訳は用意してきた。どんとこい。


「あのな、その子…、その女の子は誰だ?」


 やっぱり突っ込まれると思ってた!しかしそれを読んでいたぞ俺は。


 設定もバッチリだ!あの日家に向かう途中、魔獣に襲われている家族を見かけた。残念なことに両親は既に事切れていたが、女の子は無事だった。パンと相談した上で二人で育てることに……


「あのねえ、ルーちゃんはルーちゃん!ユウとママの子供なのよ!よろしくね!」


「ちょ、ゆ、ユウ!やっぱりパンとお前は夫婦だったんじゃねえか!」


「え?ええ??ルーちゃん????」


「ルーちゃんね、ユウとママの力で生まれてきたのよ、すごい?」


 それ以上はいけない。この微妙な空気をどう打開すべきか!そうだ!女神!女神様なら認識阻害とかなんかそういうアレで上手いこと……って、固まった笑顔でこっちみんのやめろ!


『どうしよう ユウ、なんとかしなさい』


 念話飛ばすな!馬鹿!なんとかって言われても……ええい!


「……隠すつもりは無かったんだが、成り行き上言いにくくなってしまってね…、開拓場所が危険な場所だったからパンと共に実家で待ってて貰ったんだが、様子を見に来たパンと相談して安全と判断したためこのあいだ連れてきたんだよお、そう、そうなんだよお」


「ユウ…」


 やばい!無茶な設定だったか!?そもそもパンと俺が夫婦だって言う設定を悉く否定してたからな!


「すげえよあんた…家族のために一人開拓し、新たな集落を作っちまったんだな?それまで何があるか分からねえから敢えて家族のことは黙ってたってわけか。男だぜ…あんた…」


「え?あ!うん!そうね」


 なんで家族のことを秘密にする必要があるのかよく分からんが、勝手に勘違いしてくれたのは助かった。黙っててもキンタ一家から噂は広まっていくことだろう。成り行きに任せてしまえ。


 リットとマーサが畑から戻ってきたので改めて挨拶と説明をする。マーサは(やっぱりね)とニヤニヤしながら俺とパンを交互に見て、リットと二人ルーちゃんに自己紹介をしていた。


 キンタがこれから難しい話をする,と言ったのを聞くと、マーサが子守を買って出てくれ、リットとルーちゃんを連れて散歩に出かけていった。


「さて、ユウ。子供達が居なくなったところで相談だ」


「何か問題が起きたのか?」


 この牧歌的で平和な集落で問題とは穏やかじゃ無い。つうかダンジョンの問題を解決したら今度はこっちか。師走と言うだけあってイベントがポンポン起きやがる。


「さっき話したとおり、近隣の集落から一人二人と狩人が来るようになってな、そのうちそのまま統合して集落の人数がすげえ増えたんだよ」


「ああ、シゲミチから見せてもらったよ。すげえな200人以上だってな」


「うむ、食料や住居の問題は無いんだ。新しく畑や家を建てたし、狩人共も腕は悪くなかったからな、ユウの矢でバッチリ肉も確保できている。これに関しちゃほんと感謝してるぜ」


「いいってことよ。それで、食と家の問題が無いとなれば……どんな問題が?」


「それがな、肉なんだよなあ」


 また肉かよ!ほんと毎度毎度話の中心は肉!流石肉食系(食の好み的な意味合いで)女神様の子供達だぜ!


「肉て」


「そうは言うがな、やっぱり肉は偉大なんだよ。で、問題はその分配だ。俺達はユウのおかげで新たな分配方法を始めただろ?」


「ああ、農家主体ではなく、なるべく平等になるようなやり方だな」


「うむ、ところが新しく来た連中はそのやり方を知らないわけだ。

 当然ここのやり方に混乱する。最初は人数も少ねえから徐々に慣れていってくれたんだが、だんだん一度に増える住人の数が増えるに従って元の集落のやり方で無ければ交換しない!なんて言い出す連中も現れ始めてな」


「なるほどな、確かに理屈としてはわからんでもない」


「ただ、また元通りになっちまうと、シゲミチやザック見てえな有能な連中がまた困っちまう。そこでどうにか出来ねえか頭を悩ませてんだよ」


「そうだな、新たな計画を用意してきたんだが、丁度良かった。キンタ、広場に皆を集めてくれないか」


 そろそろ集落から次の段階へあげるときが来た。


 今日は記念すべき日となるだろう。

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