表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幼き世界に調律を  作者: 未白ひつじ
最終章
572/577

第五百六十九話 ユウ、ふらふらと里に

 はいどうも! やること粗方無くなってしまった、わたくしユウでございますけれども! 別に仕事をしないと死んでしまうような社畜マグロ系主人公ではありませんからね、無いなら無いなりに残された時間を有給消化期間の如く遊び倒してやろうかなっていう感じなんですけれども。


 せっかくだから各地をめぐるかってやってることが結果的に視察みたいな感じになってしまっていて、これはこれで仕事してる感あるよなあ……なんて考えちゃうのが根っからの遊び人になれないところでしょうか。


 てなわけでして、今日はウサ族の里に来ているわけですが……。


 ここを作ったというか、ウサ族と出会えたのが大きなターニングポイントでしたね。ウサギなんてアレですよ? 大体の場合、異世界に降り立った日本人共にスライムの代わりとして狩られがちな魔物ベスト3に入る感じですよ?


 チュートリアル用モンスターと言いますか、異世界人共に冒険者稼業の練習台になってもらうようなそんな存在ですよ。

 

 それがまあ、見事に進化してしまってこの世界の文明を担う重要な種族に……世界によってはエルフやドワーフ等が担うような上位種ポジションに収まってしまっているのだから恐ろしい。


 何が恐ろしいって、ウサ族さんたち、今でこそ普通に喋れるようになっていますけれども、初期ウサ族共はルーちゃんが居なければ『キィキィ』と鳴いているようにしか聞こえないわけです。つまりはたんなるデカ目のウサギ。


 クロベエが奴らと面識が無かったらば、あの日ルーちゃんと共に出会っていなければ。


 間違いなくウサ族たちのルーツであるウサ・ロップはキンタ達でも狩りやすいお手軽獲物としてチュートリアルモンスターと化していたことでしょう……。


 それを考えればクロベエとルーちゃんはお手柄ですよね。特にクロベエはよくやってくれました。よくぞウッサ・ロップを食べずに見逃してくれたと褒めてやりたい。


 そんなウサ族達は、今日も元気に自重せず里の発展に精を出しています。亜種であり、より知能が高いユキウサ達の協力もあり、地上の種族が気の毒に思えるほどのおかしなスピードで発展しています。


 俺やパンのやつ、それから子どもたちから伝えられた地球の情報もその発展速度にまずいレベルで貢献しちゃってるのにはちょっと目をつぶってもらいまして……いやほんとやばいですわ。


 それでもウサ族の里にはブレーキを掛けてもらってるんですよ? この里は地上の一般人も多く訪れる場所ですからね。流石にオーバーテクノロジー過ぎる物品の普及はまずいわけです。地上の人類共が頑張らなくなっちまいますからね。


 だもんで、ウサ族の里は俺から見ればレトロな日本の風景そのものプラス時々21世紀というわけのわからない感じになっているわけなんですが……ファミレスやコンビニは仕方がないんだよ……あっても誰も困らんし。地上の文明レベルも急上昇してやがりますので、そんくらいなら違和感ないですしね。


 ……あれ? ケータイ基地局設置だアイドルだなんだとやりすぎている内、地上と里の文化レベルにそれほど差がなくなってしまっているのでは……?


 ……この話はちょっとおいておきましょう。


 ごほん。


 そんな里には今日も多数の冒険者や商人たちの姿が見られます。冒険の合間に立ち寄る休憩の場として、地上との交易の場としてこの里は大いに役立っています。


 特に商人たちは必死ですね。ウサ族達は原則としてダンジョン内で製造された商品を地上で販売することが出来ない為、里に商人が訪れてくれなければ地上人達に売りさばくことが出来ないわけです。


 どうもウサ族達は『皆様のお役に立ちたいウサ!』みたいな奉仕根性が備わっていると言いますか、なにか仕事をしていなければ、なにか役に立つことをしなければという種族特性が方向性は様々ではありますがヤバいレベルで実装されているようで、ウサ族同士ではうまく発散できないそのリビドーを地上の住人たちに向けて大放出したがるわけで。


 こうやって必死に商品を作って売りさばいたり、地上で人間たちが営業している店でウサ族達が働いていることが多かったりするのはそういう社畜根性……もとい、奉仕の心がキラキラと輝きすぎている種族特性のせいなのです。


 なんかちょっとアレな特性だなあと思わなくは無いのですが、他所で働くウサ族達は重宝されど悪い扱いを受けることは無いようですし、人化するようなウサ族達は地味に戦闘力が高めなので、将来的に悪い人間が現れてなにかしようとしてもきっと返り討ちにしてくれることでしょうな。


 ……で、里のついでにウサギンバレーもちらっと見にきたわけなんですが、ここはほんと何を目指しているのでしょうか。


 ウサギンバレーはあれだな。もうこの世界の人間族には原則として存在を明かさないほうがいいな……。ダンジョンのとある階層に存在しているらしい、世界の深淵……それに触れたものは気が触れるか、あらゆる叡智を得ることだろう……みたいな都市伝説にしてしまったほうが良いのかもしれない……。


 いやね? だってさ。 前に来たときもロボアニメにありがちなクッソなげえ謎エスカレーターの登場にびっくりしたんだけどもさ、今回それを抜けて地下都市に降り立ったらさあ……。


 強化外骨格(パワードスーツ)に身を包んだウサ族労働者達が建築工事をしてるんですよ。建設用人形重機に乗ったウサ族達が土木工事をしてるんですよ。


 空を見ればドローンの群れがなにかを運んでいますし、何かの映像が浮かび上がってますし……地球の文明が置き去りにされていますわ。


 人類に宇宙の存在を気づかせたらクリア! みたいなゲームでさ、銀河間の移動を可能とする宇宙船を建造させてからクリアしちゃうような、しかもそれを自分ではなくて寝落ち中にオートプレイが勝手にやってしまっていたような、そんな謎のやるせなさをユキウサ族から感じますね。


 いやあ、これほんとお外に出しちゃ駄目ですわ。


 ただまあ、コイツラが入ればこの世界に何らかの危機が訪れたとしてもなんとかしてくれそうですね。逆にコイツラ自体が脅威になる事も考えられるわけですが、そうなったらこいつらに敵う相手は居ないと思いますので、その時は我慢して滅んでもらいましょう!


「なに普通に酷いこと言ってるんすか……」

「あれ、口に出てた?」

「そらもう思いっきり。珍しいっすね、ユウさんがウチに来るなんて」


 なんというか、習性というか癖というか。適当に歩いていたらラミィの研究所に来ていたようです。そこに近づく俺をカメラで見ていたらしいラミィがわざわざ入り口まで迎えに出てきてくれたと……いやあすみませんね。


「別になにか用があったわけじゃないんだけどな。近々元いた世界に戻るので、思い出づくりに各地を巡ってるんだよ」

「顔に似合わず可愛いことやってるんすね……」

「うるせえ!」


 せっかくなのでと、中に入り久々にラミィと雑談をしました。最近のウサギンバレーの話は刺激的でしたね。なんでたった半年で地球の文明を追い越しちゃってるんだここの連中。


 ついこの間までくっそでかい魔導具を使ってノートPCと同等の処理をさせていたじゃないか。それが今や腕輪型の端末に最新PCも赤子に見えるスペックのマシンを内包しちゃってるなんて……。


「ユウさんの世界には存在しないとされている魔力。それを自在に扱えるのがデカいんですよ。魔力ってやつは柔軟ですからね、情報魔術というのを開発したらもう、高効率化されちゃいまして……少量の魔力、日常的に自然と体から出る魔力で賄えるようになってしまったのですから……うふふ……」


 何やら嬉しそうに笑うラミィ。なるほど魔力か……その発想はなかった。魔力を電力に置き換えて無理やり地球の家電を再現しようとしている俺と、この世界ならではの技術を発展させてものづくりをしているラミィとで差が出たと言いますか、頭の出来がもう完全に違うのでさもありなんという感じです。


 チート主人公に現地民が追いつき追い越してしまった、そんな感じですね。


「わかっていると思うけど、ここの文明は地上の人類には早すぎるからね」

「ええ、わかってますとも。文化の流れを早くさせないレベルで、ウサ族の里を通した上でゆっくりとゆっくりと放出しますから」


 過ぎた道具を齎す存在は毒にも薬にもなるわけで。甘えにより自分たちで何かを生み出すことを辞めてしまう恐れがある反面、憧れや対抗心により発起して新たな道具や文化を生み出す原動力になることもあります。


 だもんで、俺もやりすぎないように、最低限生活が便利になるレベルに収まる程度で色々やらかして……想定よりやらかしてしまったけれども、まあなんとか良い方向に動かしてきたわけですが、今後はその役割を俺に変わってユキウサ族に担って貰えば良いですね。


 ううん、なんとなくノリで寄っちゃった研究所だけれども結果オーライじゃないか。


「というわけで、俺が居ない間はお前達に裏から世界を回してもらうぜ?」

「ふふ、なにか悪い組織か何かみたいでいいですよね……」

「大丈夫だよね? 世界を破滅させたりしないよね?」

「我々、これでも魔王国の住民ですからねえ。魔王っていうのは多くの場合人間族と敵対して……」

「こらこら!」

「ふふ。冗談ですよ。そんなラノベや漫画みたいな事リアルであってたまりますか。魔族と人間族が争うなんてどんなファンタジー設定なのっていう」

「……なんだか複雑な気持ちになるけど、それならまあいいや」


 俺が来る前のこの世界であっても、別に人間族と魔族が争うような事はなかったようだからな。そもそも住む場所が分かれていたので接点はほぼなかったし、人間族とやりあってたのは知力が低い魔獣系の連中で、そこに種族間の争いというものはなく、ただ食うか食われるかの関係というだけだったし。


 そんな世界だから人族と魔族が戦うというのはファンタジー呼ばわりされちゃうのだろう。結果オーライですな。仲良きことは良きことかな。これからも末永く仲良く暮らしてくださいな。


 ウサ族やユキウサ族がいれば俺が居ない間に世界が停滞しちゃうことはまずないでしょう。これで俺は完全に安心して地球に帰ることが出来るな。


 ……ああ、もう三日後には帰っちゃうんだなあ……。


 明日から始まるフェス、それが終わる時……俺とカズはこの世界から帰るんだ。


 待ち望んでいた筈の日だというのに、なんだかちょっと……ちょっとな。

パン「ほんとウサ族さまさまよね。ていうかあんたウサ族依存強すぎなのよ」

ユウ「それを言われると耳が痛いが、逆に言わせてもらおうか」

パン「な、なによ」

ユウ「あんな才能の塊見てえな種族をさあ、俺が来るまでクソザコのまま放置してたのって……ねえ?」

パン「まさかあんな立派になるとは思わなかったから……」

ユウ「神様ってやつぁ、本人が気づけない才能を見抜いて天啓を与えたりするもんでしょお?」

パン「そ、そういうこともあるわね! うん! 」

ユウ「職務怠慢ですよねえ」

パン「この世界は狭いようで広いのよ? 全部全部見れるわけじゃないじゃないの! しょうがないの!」

ユウ「じゃあ、代わりに見つけた俺とクロベエに言う言葉はちがうよね?」

パン「……うっ そうね……その、ありがとう」

ユウ「えっ? なんかちょっと上から目線だよね?」

パン「うう…… その、あ、ありがとうございました……」

ユウ「これに懲りたら偉そうな口利くんじゃねえぞ? 全く神様じゃあるまいし」

パン「はい……すいませんでした……ってあたし神族なんですけどお!」


-------

明日、23日も更新します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ