第五百六十七話 ほんのりとメリル
うむ、メリルである。ついこの間クロベエの件でわーっとやってきてわーっと通り抜けていったメリノなのである。うむ、ユウなのである。
マリーノに一泊するつもりが、ソフトクリーム食おうかって流れからさっくりと移動してしまったわけで。そんな無茶な移動が出来るのも転移門様々ですな。
子供達の力を使えば、ゲートなしでの転移も出来ちゃうんですけどね、それはそれ。あくまでも自分の足……といいますか、通常の移動方法を使ってこの世界を見ておこうと言う感じのお出かけですので、そういった便利機能はなるべく使わないことにしました。
そんなことはどうでも良くて、メリルである。たまにメリノとか言っちゃうけど多分メリル出会っていると思うメリルなのである。
畜産の街にするつもりが、何を間違えたのか学園都市になっていて、スクールアイドルの聖地にまでなってしまったブレブレの国、メリル。
元々この世界初の学園が出来たと言うことで各地から人が集まってきては居たのだけれども、じわじわと勉強の大切さが広まったのと、ゾニュース人気のおかげで以前とは比べものにならぬほど多くの人々で賑わうようになっています。
ちなみに学園は一定の単位を取ればその時点で試験を受けて卒業可能なので、入学時期という物は無く、いつでもフラリと入学できるため毎日あちらこちらから入学を求める人々がやってきている訳なんです……が、流石にキャパってものがあるので、一部の学部は予約待ちにまでなっているみたい。
それでも始まりの国をはじめとして、各地で小学校の様な物――子供向けの学校――が作られ始めているので、その分メリル学園のキャパに余裕が出始めているとのことです。
「やはりメリルのソフトクリームは極上ですな、父上」
「ああ、材料自体はあちこちに出回ってんだけどな。やっぱ現地で食うと倍おいしいわ」
「おとう、こっちのブドウ味も食べて……」
「おっ、クロベエんとことのコラボ商品かよ。展開がはええなおい」
発見されたのがついこの間の事だというのに、既に物流が始まってコラボ商品まで出来ているのにびっくりします。なんつうフットワークが軽い世界なんだ。
「ん、甘いのくったら塩気が欲しくなったな。よし、お父さんがお菓子を買ってやろう」
「「わーい」」
子供達を連れ駄菓子屋に。この街は学園があるって事で、早い時期から試験的に駄菓子屋を設置したんだよな。
結果として大成功を収めているわけで、学園にぶち込まれたカズが癒やしの場として重宝していたのは記憶に新しいですね。
昼を回って夕方まで1時間ちょいという時間。学園の授業があらかた終わっている時間なので、駄菓子屋前に置かれているゲーム筐体にわらわらと子供達が群がっているのが見えますね。
なんと言ったか、カズと仲良くしてくれた子供達の姿も見えます。カズの保護者としてお礼をしておかないといけませんな。
「ナーちゃん、スーちゃん。このお金でお菓子をたくさん買ってきてちょうだい」
「父上、こんなにですか?」
「そこの子供達にも分けてあげるのさ」
カードにがっつりチャージしようとするナーちゃんを見て、店のおばちゃんがぎょっとした顔をしていましたが、店先でぺこりと頭を下げる俺を見て察してくれたのか、そのまま会計をしてくれました。
「これだけあれば……選び放題……」
どっさりと様々なお菓子が入った袋を抱えたスーちゃんが戻ってきました。ナーちゃんは筐体に群がる子供達に何か伝えていますね。
「皆の物。父上が菓子をくださるそうです。遠慮無くこちらに来てください」
「え? 菓子……?」
「父上……?」
「ほんとかな?」
「でもさっき別の子がお菓子をたくさん抱えてたよ」
ナーちゃんの喋り方が個性的すぎたのか、俺が怪しすぎるのか知りませんが少し食いつきが悪いですね。
「あ! あの人知ってるぞ! ユウさんだ!」
「ええ? ユウさんっていうと、色々やってる人?」
「ユウさんなら仕方ないなってうちの父さんがよく言うんだよな」
「じゃあ仕方ねえな、もらいに行こう!」
「「「おー!」」」
……。
俺はなんなのだろう。 まあいいや。
「あーいやな? お前らカズと仲良くしてくれてたろ。そのお礼だよ」
「カズ……?」
「誰だっけ? アリス、お前知ってるか……?」
「ええ……記憶に無いわよ……」
「とりあえず菓子くれるなら話だけ合わせておく?」
あれえ? ……って、そうか、カズじゃわかんねえんだ。
「カズっつうか、あれだ、ホームセンターだよ」
「「「「あー!」」」」
うける。そういやあいつ、なんか知らんけど『ホームセンター』として認知されてるというか、何か因果が歪んでるのか知らんけどそれ以外で認知されにくくなってんだったな。なんて酷い設定だろう。
みんなでお菓子を食べながら暫くの間、街や学園の話を聞く。
かつてカズにお世話をしてくれたアリスちゃんとトモハルは今も学園に通っているそうで、アリスちゃんは商人を、トモハルは冒険者を目指して日々勉強に励んでいるらしい。
「でさあ、この間すっげえ強い子が来たんだよね」
「強い子?」
「うん。あ、ゲームの話ね。リプラシルファイターがすっげえ強い子が来たんだ」
「へ-」
相変わらずリプラシルファイターは大人気のようで何よりです。つらい思いをして作った会があるってもんですわ。
「でもあの子ふしぎだったよね? ヒゲミミのネコ族とはまたちょっと違うし」
「だなー。最近見かけるようになったシガラキの人とも違うしさ」
何やら不穏な会話をしていますね。ここに来てまた新種族とかやめろよ?
「ネコ族より耳がちょっと長くって、尻尾はフサフサしててね」
「変な喋り方だったな。のじゃー!とか言ってたし」
……亀でした。
何やってんだあのジジイ。こんな所まで遠征かよ。つうかここの客層って幼いんだから無双しに来ちゃ駄目だろ……。
なんだかどっと疲れてしまった……。
「お父、暗くなる前に帰ろっか」
「ですね。父上、帰ってシチューでも食べましょう。私も手伝いますから」
「そうだな……そうするかー」
まだ賑やかにしている街の子供達に別れを告げ、俺たちは温かな家に帰るのでありました。
ユウ「はあ……なんかどっと疲れた。これで回るとこあらかた回ったかな」
パン「何言ってんのよ。まだ始まりの街とウサ族の里、ウサギンバレーとかのこってるじゃん」
ユウ「ええ……? めっちゃ近所じゃん。ていうかなんなら毎日行くじゃん。今更じゃん」
パン「それはそうだけど……ここまでやってきてやらないのも気持ちが悪いじゃ無い……」
ユウ「まあ、そうなんだけどもさ……なんか複雑な気分」
パン「ここまで雑なレポしてきたんだから、ホームくらいしっかりなさい」
ユウ「俺のホームはこの家周辺なんですけおーーー!」




