第五百六十三話 ふらりナベゾコ旅
なんだかあっさりとカズから承諾を得れて拍子抜けのユウなんですけれども。まあ、彼も俺と話すまでの間、色々と考え悩み抜いたんでしょうね。
なんつうか、カズには色々と迷惑をかけてしまったので、あっちに戻ったらなんやかんや奢ったりして埋め合わせしなきゃな……。
というわけで、今回の異世界生活に置ける終活を始めたんですけれども。終活と言っても、別に死ぬわけじゃないですからね。ちょっとの間コッチの世界からバイバイするだけ。
しばらくの間は忙しくて来れないでしょうけれども、最終的に俺がこっちに戻ってくるのは決まってますので、それまでこちらの世界のことを忘れないよう、この世界の今を目に焼き付けておこうかなあって。
あちこち巡って、記憶にしっかりと書き込んでおこうかなっていうアレです。
勿論、俺が帰るってのはまだ内緒なので、そうは悟られないよう、普段の軽いノリであちこちめぐることに。
てなわけで、最初にやってきたのはナベゾコ村です。メインキャラになったかな? と思ったらいつの間にか霊圧が消えていた亀の所に遊びに来ています。
いやあ、ナベゾコ村もだいぶ雰囲気が変わりました。
昔話に出てくるような、ほっこりする景観はそのままなのですが、よそから訪れた観光客達のが姿が多く、また、それを相手に妖怪たちが露店を出すようになったので、以前と比べてかなりの賑わいです。
どんぐり決済はリパンに押されてジワジワ消えちゃうかな? なんて密かに危惧してたんですが、その可愛らしさと物珍しさでほとんどの人がどんぐり決済を選ぶみたいですね。
前に来たときもそんな話を聞いた気がしますけれども、あれから時が経ってもこの様子ならば、今後もどんぐり決済は廃れず続いていきそうですね。
住人たちの生活も実は結構現代風……と言って良いのかわかりませんが、急激に発展したこの世界の文明に遅れずついてきている感じになっていまして、それは外からはわからないんですが、家の中に入れば各種魔導具が置かれていて、しっかりと便利な生活に置き換わっていました。
それは勿論、村長である亀の家も例にもれず……というか、こいつの家は来る度悪化しているな……。
「くぬっ!……のう、ユウ!……! わしが勝ったら……ふんぬ! コンビニをこの村にっ!」
「だめだ! オルァ! ルーちゃんエアリアル! からのルーちゃん10連! からのルーちゃん超必!」
「ぬわーーー! エグいのじゃ! ずるいのじゃ! なんでコンビニ置いちゃだめなのじゃー!」
「……んなもん置いたらこの村の良さが消え去るだろうが! つか、始まりの街にすらまだないんだからだーめ!」
「けちー!」
亀は相変わらずですね。自宅にリプラシルファイターを始めとした筐体を幾つか置く許可を出してやったというのに、まだ欲しがるか。
それにこいつには例の別荘――パンさんの書庫への立ち入り許可も出しているんですよ。 ここまで優遇してやってるんだから、そうわがままを言ってもらっちゃ困りますわ。
「相変わらずのようで良かったよ。なんか困ってることないか?」
「むー。じゃからコンビニをじゃな……」
「それはだめだ。ま、困ったことがあればリットちゃんに相談するといいさ。村の運営とかそういうのだけな。それ以外の趣味的な話は……ルーちゃんかフィーちゃんに話を聞いてもらえばいい」
「ん? なんじゃ? ユウに電話しちゃいかんのか?」
「ほら、もうだいぶこの世界も自立しただろう? だから俺に甘えるのはもうおしまいってことさ」
「ほんとにかー? お主何か隠してないかー?」
「隠してねえって! ほらほら、次はパンサントアールやろうぜ」
「む、そうじゃった。新しい筐体を土産に持ってきてくれたんじゃったな!」
ちょろい亀ですね。
亀は俺やカズと違って異世界転生者。地球での生を終え、どういうわけかこの世界に転生してきた元クソジジイです。
なので、残念ながら俺やカズと一緒に地球に帰ることは叶いませんが、それ以外の部分でなるべく甘やかして……この言い方は気持ち悪いな。便宜を図ってやることにしています。
流石にコンビニを建てる許可はだせませんけどね。亀の家の中に置けるものであれば、この世界で作られた物であればなるべく協力をしてあげてやってくれと、フィーちゃんに伝えてあります。
俺が居ない間も楽しく生きていてくれたら幸いですな。
「そう言えばさ、気になってたんだけどこの村って繁殖周りはどうなってんだ?」
「まだ明るいうちからそういう話をするとは……む、お主まさかわしの身体を?」
「やめろ! 妖怪ってひとくくりにしてるけど、色んな種族? が居るじゃんか」
「ああ、そういうことかの。 実はわしにもようわからん」
「ああ?」
「なんとはなしに気があった連中が夫婦になって暮らすとの、いつの間にか何方かの特徴を持った子が増えておるんじゃ」
「……増えて……いる……」
「うむ。まあ、わしらが長命種なのが関係してるのじゃろうが、そんなにしょっちゅう増えるわけじゃあないがの。気づいたら赤子がおって、我が子として育てるのじゃよ」
「なんとも……ここに来て凄まじい謎に手を付けてしまった気分だぜ……」
「その辺の話をお主んとこの女神様に聞いてみようとおもってたんじゃが……」
「あの女神何も知らねえと思うよ……」
「じゃろうな……」
「「……」」
無言でゲームを続ける俺と亀。口には出さなくてもわかる、男同士の意思疎通ってやつだ。
パン、見てるか。お前のやらかし、また一つ増えたよ……。
パン「だから、そうやって終わらそうとするのやめなさいよ!」
ユウ「出たな! 妖怪やらかし女神!」
パン「誰が妖怪か!」
ユウ「で、どうなの? 妖怪同士が同衾するとどうして家族が増えるの?」
パン「ちょ、ばっ、ばっばばっかじゃないの?」
ユウ「真面目に聞いてんだよ。なんで?」
パン「は、はあ? そ、そんなの……パパとママがぁ……エ、エッチな……」
ユウ「あ! ば、ばっかやろう! そうじゃねえ!」
パン「え!? え、ええええ? ち、ちちち、ちがうの?」
ユウ「あそこってそういう生命的なこ、行為無しでその、増えるらしくてな……?」
パン「なにそれこわい」
ユウ「お前ならそう言うと思ったよ……やっぱ無意識でなにかやらかしてたんだな」
パン「え、ちょっとまって。え?」
ユウ「いい、いい! もう最終話まで尺がないんだ! 今さらナベゾコ村の妖怪についての秘密とかわからなくていい!」
パン「それはそうかもしれないけど、え、なに? なんかモヤモヤするんですけど!」
ユウ「パンさんはすけべ、もうそれでいいじゃねえか」
パン「ち、ちがうのだ!」




