第五百六十二話 ユウ、終活をはじめる
いやあ危ない! 何かまじで何かを間違えて『完結』にチェックが入っていまして、前回更新分でマジで終わるところだったんですが、何の話かって、どこか遠きメタの国のお話なんですけれども、ユウです!
とは言え、俺の役割が終わる日が近いのは確かです。
パンとの契約が終わる日、11月25日まで後もう少し、20日を切りました。契約が終わった後、俺がどうするかどうか……まあ、色々考えた結果、取り敢えず帰っちゃおうかなって思ってます。
この世界に多くの知り合いが出来たし、思い入れがある土地だらけだし。 つうか、家族だって出来たわけですし……普通に考えれば帰らないという選択肢を選ぶしかないよね。
俺だって最初は帰らないのもアリかなって思ってたんだけど、思った以上にこの世界の連中が頑張ってくれてさ、もう俺の手助けが要らない状態になったと思うんだ。
まだまだ至らない所があっても、それはユキウサ・ウサ族連合率いる魔界オーバーテクノロジー軍団が良い方向にお手伝いしてくれるだろうし、ほんと俺がやること無くなっちゃったんだよね。
そして何よりの理由として……何時になるかわからないけれど、結局俺はここに戻ってくる事が決まっているという予約が入っているという事実。
パンの奴のせいで半分? 亜神化しているらしい俺は、地球での生が終わった後、こちらの世界に管理者側として招かれる……というか拉致られる事が確定している。
だったら、一度地球に戻り、あちらでの人生をきちんと最後までしっぽりと精算してくるのが正しい選択だろう、そう思ったんだ。
次に戻ってきた時、こちらの世界がどうなっているかはわからない。
けれど、彼ら彼女らが俺の手を離れて築き上げた真に生まれ変わったこの世界を見るってのもなかなかに乙じゃない?
そんなわけで、苦渋の選択として俺は「一時帰還」を選択したんだ。
そんなわけで、すっかりこの世界における終活モードにはいっているワタクシ、ユウなんですけれども。
何の偶然か、もしかしたらば何かのカンでルーちゃんにはバレてしまってるのかもしれませんが、あの子が企画しているフェスの第一回目の開催日が11月23日、24日、25日に決まったそうなんですよ。
そのフェスには、ニューゾネレーションズやゾニュース、ルフィファーの他に、雨後の筍の様にピョコピョコと各地に発生した新手のローカルアイドル達にも招待状を配布し、なるべくでてもらうようにするとかで……、各地のロコドル達は今頃一生懸命レッスンに励んでいる頃なんでしょうね。
そうか、俺が帰るタイミングでフェスかあ……全世界放送すんだよな、あれ。いっそそれを使って盛大なカミングアウトを決めて颯爽と去る! ってのもかっこいいかもしれませんな!
……しかし、帰るとなると、解決しなければいけないことが一つあります。
俺の悪ノリでやらかした例の件。長引けば長引くほど、解決しにくくなるアレ……忘れていたわけじゃない。言い出せなくなってた……アレについて話をつけに行ってこよう……。
……
…
「うっす! 調子はどうだ?」
「あ、ユウさんじゃないっすか。まあ、ボチボチですね」
はじまりの街の中央広場、かつて俺がパンさんとクロベエと一緒に初めての市をひらいた場所だ。
あの頃とは違い、すっかり立派になったこの街の広場には、様々な屋台や露天が立ち並び、売り子や客達の賑やかな声が辺りを楽しく盛り上げている。
俺が見たかった異世界げな街の風景そのまんまって感じの広場。そこに屋台を出しているのは我らが元ダメ人間、カズ君だ。
「カズもすっかり屋台の兄ちゃんになっちまったな」
「ナギサさんに厳しく仕込まれましたからね! 今ならクレープ屋に就職余裕ですわ」
「就職……ね。なあ、カズ。お前が来てからもうすぐ1年になるよな」
「おっとユウさん! その後のセリフは待ってくれ! ムードってのがあるだろう?」
「あん? む、ムード?」
「何を言いたいかは大体わかってる……って告白じゃねえってのは解ってるからね! そうじゃなくってさ、クレープ焼きながら聞く話じゃねえでしょっていってるんです!」
「あ、ああ。それもそうか。ったく、カズめ、すっかり言うようになって。じゃあさ、夕方まで暇つぶししてくるわ」
「うっす。その頃には店も閉めるんで、そこらで待ってますね」
俺が屋台から離れると、間もなくお客さん達がわらわらとやってきた。俺が嫌われてるとかそういう話じゃないぞ! そういうタイミングだったってだけだ。
次々とやってくるお客さんをさばいていくカズ。1年前のあいつに「お前さ、1年後めっちゃ働いてるぞ」っていっても信じねえだろうなあ……。
……
…
というわけで夕方である。役所に行ってキンタをからかったり、リットちゃんから愚痴を聞いたり、キンタをいじったりしているうち、あっという間に夕方になってくれました。キンタ、ありがとう!
広場に戻ると、畳まれた屋台の前に椅子を置き、どこか遠い目をして黄昏れるカズの姿が。
「またせたな」
「今来たとこっすよ」
「ずっとそこで屋台出してたろうが!」
「そうでした!」
「……つうわけで、早速だが」
「帰りますよ」
「え?」
「そろそろ帰る日が来るっていうんでしょ? わかりますよ、流石に俺だってわかります」
「そ、そうか? だったら話がはやいんだが……つうか、あっさりした返事でびっくりしたぞ」
びっくりしてそんな風に聞くと、カズはへへへっと、何かこう、さみしげに笑ってその理由を話す。
「そりゃね、後で帰すからってユウさんから言われて以来、ああ、そうなんだって覚悟を決めてましたからね」
「……そうか」
「帰らないっていう選択肢があるのかもしれない。俺が言えばユウさんはそうしてくれるのかもしれない。でも、ナギサさんに全てを打明けて『残る』と言ったら殴られると思うんです」
照れたようにはにかみながらカズは続ける。
「きっと……『よくわかんないけどね、攫われたにせよ、それじゃ逃げてきたようなもんじゃないか。向こうでキチっとやることやって、それからまた来りゃいいじゃないか』そんな事を言われると思うんです」
ナギサちゃんか……。そうだな、彼女ならきっと俺達の秘密を知ってしまっても……あれ? 打明けたっけ? 打明けてないよね? まあいいや。 やりなおし。
俺達の秘密を知ってしまってもケロっとした顔で受け入れてくれるだろう。そして、その上で厳しく言いたいことをズバズバと言ってくるはずだ。
だからカズが言うことはきっと正解なんだろう。 しかしまいったね、カズも俺と同じ様な事考えてるとはさ。
俺達は転生者じゃなく、転移者だ。しかも、御都合主義な事に転移したその日に帰れるときたものだ。
つまりは、俺達の人生はあちらでまだたっぷりと残っている。俺達が帰るその日まで一時停止をしたまま残っているんだ。やることきっちりやってから、責任を取ってからどうどうと遊びに来い、ナギサちゃんならきっとそういうだろうな。
カズの決意を聞き、改めて俺も俺が帰らなければいけない理由を振り返る。感情的な物以外にも、きっとそうだろうという理由があるんだ。
俺のスマホは限定的ではあるけれど、ネットをすることも可能だ。これに関してはリアルタイムの情報、例えば今なら2019年の11月8日に更新された情報をきちんと得ることが出来る。
これは恐らく俺があちらの世界に戻り、動き始めた世界から得られている情報……なんかややこしいが、今の俺を2017年11月25日に時間が止まった状態の存在とすれば、未来の、動き出した世界の俺が使っているスマホを経由して得られている情報だと思うんだ。
あちらの世界とこちらの世界を繋いで何かを持ち込めば、パンさんが何らかの面白い目に遭うペナルティが生じる。それは何らかの制約に引っかかっているからだろう。
しかし、スマホから得られるデータに関してはそんな様子はない。それは恐らく、俺が俺の持ち物から俺の契約している回線で得ている情報だから。
そして、データが世界を超えても怒られない何らかの契約が日本の神様……アマテラさんと結ばれているから……そう、推測している。
何故かわからないけれど、これは正解であると確信を持って言える。だから俺は一度帰らなければいけない。
「いいんだな、カズ」
「はい。俺はもう決めましたし。ユウさんだって……その顔を見れば一緒に帰ってくれるんでしょ?」
「別にお前のために帰るわけじゃねえけどな! 俺が帰るついでにお前も持ってくってだけだ!」
「んな!? ひっでえ、俺はユウさんの所有物じゃねえっつうの!」
「いや……申し訳ないが、俺の所有物扱いで無理やり異世界召喚してもらったから、分類上は俺のアイテム扱いだぞ……」
「ええ……知りたく無かったそんなの……」
パン「ふう……まったくフェスなんていきなり企画するから忙しくってしょうがないわ!」
ユウ「おう、おかえりパンさん。ほら、お茶だよ。ああ、ケーキもあるぞ」
パン「ど、どうしたのよ? や、優しすぎて戸惑うんですけど……」
ユウ「いやあ、お前とこういう遣り取りをするのももう両手で数えられる程だからな……」
パン「それって……ああ、そっか……もうすぐ、約束の日。ユウはそう決めたんだ……」
ユウ「うん……。少しの間寂しくなるけどさ、仕方がないさ」
パン「そっか……ユウにも何か考えがあって、予定通りの帰還をえらんだんだもんね」
ユウ「そうだね。これから帰還の用意をするんだけどさ、最終日、フェスにちょっと仕込み頼むよ」
パン「仕込み?」
ユウ「ああ、こういう感じで……もうどーんとやっちゃう感じで……」
パン「ええ……? まあいいけど……よくやろうと思ったわね……」
ユウ「最後だからな! 派手にやって後でわっと驚かしてやるんだ!」
パン「後から……? まあ良いけど……はあ、そっかあ、もう帰っちゃうんだなあ……」




