第五百五十四話 クロベエ語る その3
クロベエです
国を作るんだ。そう考えたけれど、どうやったらいいのかなってちょっと考えたんだ。
ユウはどうやっていたかなってね。
ユウはさ、何処かに行くとかならずその場所を見て回って、何が出来るのか、何をすればみんなが助かるのか調べていたよね? だから俺もそれを真似て出来ることをしてみようと思ったんだ。
まずはここの猫族達の家を見てみたんだ。昔のキンタ達の家みたいに俺のしっぽでバシンとやったら一発で壊れちゃうくらいよわよわな家だった。
水もさ、遠くに有る川まで一生懸命通ってさ、少しずつ運んでいるんだよ。だから畑もあんまり大きく出来ないんだ。
近くの森には色々な魔獣が住んでいて、狩りをすれば肉が手に入りそうだったし、ヒカリとコハルがぶどうを見つけてきたりしてさ、そこをうまく使えばご飯には困らなそうだった。
そのうち暗くなってきちゃったから帰ろうかなって思ったんだけど、猫族達が寂しそうな顔をするからその日はそのまま泊まったんだよ。
するとさ……森から身の程知らず共がやってくるんだ。あんまり頭が良くない魔獣みたいでね、俺やヒカリが怒っても言うことを聞かないんだ。
そう、ダンジョンで働かせられないほど馬鹿な連中。冒険者のやつらが外で肉や素材にするため狩ってるような魔獣だね。
そいつらは俺やヒカリが何を言っても聞かないし、何をやっても懲りずに向かってくる。だから俺達の手下にすることは出来ないし、ほっといたら危ない奴らなんだ。
暇だったしさ、コハルの訓練もしておきたかったから一晩中そいつらを狩って過ごしたんだ。朝になって起きてきた猫族の人たちが驚く顔と言ったら。ユウにも見せたかったよ。
……そのせいで余計に俺達は猫族たちになつかれてしまったんだけれども、しばらくここで王様をやるならいいかなってね。
でね、猫族達に聞いたらさ、夜になると頻繁に魔獣がやって来て困ってるんだってさ。家の中までは入ってこれないみたいだけど、たまに家を壊されて食べられちゃう猫族も居るんだって。
そんなの許せないじゃん。
だから俺はユウのまねをしてさ、ここをぐるっと柵で囲もうと思ったんだけど……俺って大きくなってヒトの言葉を喋れるようになっても猫じゃん。この手だと物をうまく作れないんだよね。
猫族達に頼もうかなって思ったけど、それだと結構時間がかかっちゃう。だからルーちゃんに相談することにしたんだよ。うん? なんでユウに相談しなかったんだって?
……国を作ってから見せてびっくりさせたかったの!
ここに来て気づいたことや困ったことをルーちゃんに相談したらね、色々教えてくれたんだけどさ、その他にひとつ贈り物をもらったんだ。
その贈り物はね、ユウが使ってるストレージ? とか言うのに近い魔術でさ、なんでも俺専用の小さなダンジョンを作り出して、その中に何でもしまったり出したり出来る魔術なんだって。
ほら、俺達さ、どこでもゲートを持ち歩いてるじゃん。ダンジョンがある場所にはゲートが置ける、反対にゲートがある場所にはダンジョンが作れる? ルーちゃんがそんなこと言ってた。
うーん? わかんないよ、俺に難しいこと聞かれても。
まあ、それでね。ヒカリ達を留守番において、あっちこっち回って必要な材料を集めたわけ。ほんとはここから少し言った先に岩山があったんだけど、それは全部俺がストレージに入れちゃってもう無いんだよね。
そしてその岩山を俺の爪で切って作ったのが国を囲む壁なんだ。ストレージから少しずつ出しながら岩を切ってね、どんどん積み上げていったんだ。
ユウがやっているのを見ていたからかんたんだったよ。
でね、お水の問題はスーちゃんにお願いして川から水路を引いてもらったり、溜池をつくってもらったり、家が集まってる場所に何個か井戸を作ってもらったりしたんだよ。
ユウなら全部一人でやっちゃうけどさ、俺には無理だからね。お手伝いしてもらったんだ。
お手伝いと言えばティーラにも畑を広げてもらったんだよね。ヒカリがさ、
「このブドウはワインの材料だって聞いたことが有るよ。ねえ、クロベエたくさんつくろうよ」
っていうからティーラにブドウの畑を作ってもらったんだ。ティーラは笑ってたけど、
「ワインだけじゃお腹いっぱいにならないよ。ん、この土地なら麦がよく育つね」
とか言ってね、ワイン畑と麦の畑を作ってくれたんだ。ついでにどこからかメリル達を連れてきてさ、メリルのご飯が沢山生えるようにして、メリル達がずっとこの土地から動かないようにしてくれたんだ。
そんな事をやってるうちにさ、いつの間にかウサ族達が来ててね。きいたらルーちゃんからお願いされたんだって。助かるよね。だって俺猫じゃん。賢くなったと言ってもさ、限界があるよ。ユウみたいに色々考えてなにかやるってのあんまり出来ないからね。
でね、ウサ族達が猫族達に色々な事を教えてね。そのうちワインやパン、チーズやバターが作られるようになってさ、狩りの腕もぐんぐん上がって……気づいたらみんなお腹いっぱい食べられるようになってニコニコ笑ってたよ。
その頃には散らばってた猫族たちもこの国に集まってきていてね。気づいたらずいぶんとにぎやかな国になってたよ。
俺も結構手伝ったけどさ、この国はみんなの力で生まれた国なんだ。どう? すごい? ユウ。俺の国、すごい?
ユウ「何この子……天才かよ」
パン「というか、ルーちゃん達が関わってたなんて気づかなかったわ……」
ユウ「あの子達優しいからなあ。きっと何か察して内緒にしてたんだろうさ」
パン「ほんといい子に育ったわねえ……」
ユウ「母親はこんなにポンコツなのにね」
パン「なにおー!」
ユウ「しかし、俺が遊んでる間にこんな立派なことをしてるなんて……」
パン「飼い主はこんなにポンコツなのにね」
ユウ「ふふ、俺のまねをして煽るとは最早微笑ましくて可愛らしいな」
パン「な、なにおー!」




