第五百五十三話 クロベエ語る その2
クロベエです
がっこーがある街から出た後はさ、道もないから大変だったよ。あっちに行ったりこっちに行ったり。でも俺たち猫じゃん。普段からダンジョンの森でお散歩してるのもあったから、大変は大変だったけど楽しかったなあ。
何日も何日も秋の大地をうろうろしてたんだ。そしたらさ、ある日見慣れない種族を見つけたんだよ。どう見ても猫族なんだけど、でも猫族ってもっとヒトみたいじゃん。でもさ、俺みたいな顔しててさ、フサフサのしっぽが生えてるんだ。
「まるでクロベエがヒトになった姿のようだね」
「うん!父ちゃんみたい!」
ヒカリとコハルがそんな事を言うんだ。なるほどなー、言われてみればそうかも。俺がヒトになったらあんな感じのイケメンになるのかもしれないな。
む! ユウ? パン? 何笑ってるのさ!
まあいいや。
でね、俺みたいなヒトが何人かと、俺が知ってる猫族のような感じの女のヒト達が何人か居てさ、森で何かを集めてたんだよね。
後からそれはどんぐりを拾ってたんだって解ったんだけど……問題はその後だよ。
『クケァー!』
大きくて食いでがありそうな鳥がね、いきなり森の奥から走ってきてさ。うん、そうなんだよ。猫族みたいなヒトをパクリとくわえてしまったんだ。
ダンジョンで長く働きすぎていたせいでさ、それをのんびりとしてみていたんだけど、他の人たちが辛そうな顔をしているのを見てね。ああ、そうかお外だと死んじゃうんだって思い出したんだ。
ヒカリにコハルを任せて俺はぴょんと飛んでね。まずは鳥の首をガブリと一撃さ。俺だってレベルが上ってるんだぞ。もう魔術なんか使わなくたってそこらの魔獣はイチコロなんだよ。
でもさ、俺だって魔獣じゃん。そこに居た人達は今度は俺を見て腰を抜かしちゃったんだ。でもね、目の前でぐったりとしているモフモフの猫族の人にさ、コハルが回復術をかけてあげたら俺達を見る目が変わってさ……
ん? コハルの魔術? あれ? 言ってなかったっけ。コハルはね、光属性の魔術が上手いんだよ。ブーちゃんが教えてくれたんだぞ。パンもそんな顔するくらいならもっと俺達に色々教えてくれよな。
……もー、話の腰をおらないでよね。
でね、
「だいじょうぶ? 回復術をかけたからもう平気だと思うけど」
って、話しかけたらまたびっくりしてね。でも、今度のは怖くてじゃなくてほんとにびっくりした感じだったな。
しばらくして落ち着いたのか、面白いことを言ったんだよ。
「ありがとうございます。貴方はもしや神獣様では? 俺達が住んでいる場所にあるご神体にそっくりなのです」
俺にそっくりな御神体って言われたらきになるよね。どんなにかっこいい御神体なんだろう? ヒカリもコハルも気になったみたいだし、なにより知らない種族じゃん。これはユウ達に教えなきゃなって、ちょうさついでに見に行くことにしたんだ。
その途中、すごく素敵な場所があってね。一面のネコジャラシが茂ってる原っぱなんだ。ああ、ユウたちもみたんだ。すごいよねえ、あそこ。コハルが夢中になっちゃってさ、しばらく動けなくなったけど、ヒカリも楽しそうだったし、まあ良かったよ。
……俺もちょっと遊んだけどね。
で、ネコジャラ草原を抜けてしばらく行ったらさ、ちっちゃい畑にぽちょぽちょと野菜を作ってる集落が見えてきたんだ。その頃だと30人くらいかな?
最初は俺達を見てびっくりして腰を抜かしてたけど、一緒に居たモロダシやヤスコが平気そうなのを見て恐る恐るといった感じでみんな集まってきてたな……ってパンどうしたの震えちゃって。寒くなっちゃったの? え? 違う?
まあいいや。
集まってきた人達は何かに気づいたような顔をしてさ、指をさすんだ。なんだろうと思ってその先を見たら……居たんだよ。御神体が。
「おお……御神体に瓜二つ……」
「なるほど、我らに良く似た御神体と同じお顔……我らにもよう似ておられる」
「本当だ。父ちゃんそっくりだね!ねえ、母ちゃん!」
「ああ! クロベエそっくりの凛々しい顔だ!」
二人からそう言われたらそうかな? って思うしかないじゃん。後から冷静に考えたらどう見ても信楽焼の狸でさ、ちょっと納得がいかなかったんだけど……。
で、集落のみんなからお話を聞いたらさ、すごく昔にメリルに置いていかれた種族の末裔だってことが解ってね。そのおかげでじりつしたんだなって俺は考えたんだけど、生活はあんまりゆたかじゃなくてね。
畑はしょぼいし、狩りだって上手じゃないからみんなやせっぽちでさ。
どうしようか、ユウに教えて手伝ってもらおうか? そう考えたんだけど、その頃ユウはカズをいじるのに夢中だったからね。折角カズと久々に遊べてるんだから悪いと思ったんだよ。
でね、パンが言ってたことを思い出したんだ。
この世界の人達に色々教えて色々出来るようにしよう、そして立派な国を作ろう。たしかそんなこと言ってたよね?
集落の人達を集めてね、安全に暮らせる場所を作るよと伝えたんだ。そしたらみんなが頭を下げてさ、クロベエ様って呼ぶんだ。
だから俺はいってやったんだ。
「これからここはシガラキ国という名前の国になるよ。しばらくは俺が王様をやるね。だから俺のことは王様とよんでよ」
ってね。
ユウ「イケメンと来たか」
パン「もうだめ、お腹痛い。モロダシってなによ……何処からその名前とったのよ……」
ユウ「お前の世界だぞ。お前の影響が強く出ているに違いない」
パン「失礼なやつ!」
ユウ「しかし、クロベエくん偉いですね。俺が居ない間にも律儀にお前との約束を守るなんて」
パン「正直びっくりね。まさかクロベエちゃんにここまでのことができるなんて」
ユウ「まあ、俺はそんなこったろうと思ってたけどな。あいつもお前から加護を貰ってたし、なんか張り切ってたからな」
パン「そ、そうね。私も気づいてたわ! 偉いなって思った!」
ユウ「ウソつけ。なんでクロベエが国作ったのか気にしてたじゃねえか」
パン「うっ……」




