第五百五十話 王族vsユウ族
王様がやってくる――! その先触れが出た瞬間、俺たちが居る広場にわわわっと多くの人々が集まって参りました。うん、どうやらこの広場に来るらしい……っていうか、もう近くまでやってきたようで、ここからはまだ見えないけれど、建物を挟んだ向こう側の方から歓声が聞こえてくる。
あ、どうも小市民ユウです! いやあほんと、なんつうか王様として立ち振る舞えるってすごいですよね。俺にはできませんよ。
ユウさんが王をやれ! という声が主にキンタ方面からないでもないんですが、俺はずっとこの世界で暮らせる身ではありませんので、無責任に請け負うことはできませんし、なによりそこまでの器がある訳じゃあありませんからね。
そりゃあ、ここまでいろいろとやってきてさ、偉そうなこともいっぱい言ってきたけれど、それでもこの世界をまとめ上げるのはこの世界の連中がやるべきだと思うし、きっとその方が上手くいく、そう思うんだ。
だから、ああやっておそらくは異世界人であろう存在が王になるというのはすごいなあと。ここまでの街を作れるような存在であれば、それがどういうことかはわかっているだろう。
きっとこの国の王である彼は責任なんかも全部ひっくるめて背負い、この世界に残ることを決断したんだろうなって思う。すごい奴だよ。
それに比べて俺は……なんて思わなくもないけど、くよくよするのはもうやめだ! 胸を張って異世界からやってきた同胞として挨拶してやるんだ。
民がこんなにも笑い、あんなにも嬉しそうに声をかけてるような存在なんだそこまでいやな奴じゃあなかろうて。
「ユウ! そろそろこっちに来るわよ! 迎撃準備OK?」
「お前は何戦おうとしてんだ!」
「ついノリで」
さあ、どんな奴だ? ダンディなおじさまか? それとも青年実業家か? 意外と大学生とかってのもあるかもしれん。小さい娘さん抱っこしてたりしてさ……くっ! 悔しくなんか無いぞ。俺にも妻はまあ、別としてかわいい子供達が居るからな!
そして――人混みがわっと割れて……この国の王族達が姿を……現し……た……ああ?
「ユウ……」
「パン……」
「あの王冠被った王様って見覚えがあるんだけど……」
「奇遇だな。俺もだ。つうか、すげえ知ってる奴だわ……」
「王様は兎も角、お妃様ってここに居ていい子じゃないんだけど……」
「そうだな。本来ならば別の場所を治めて居なければいけない存在だよな……」
「お姫様はまあ……相変わらずかわいいわね」
「そういやあいつら、ここんとこ影が薄かったけど……とりあえずそう言うことか」
王族達はノシノシと威風堂々とした、まるで本当に王家の貴い血が流れている存在かのようにキラキラとしたオーラを纏いながら広場の中央にある御神体に向かって歩いている。
そして、御神体にまで到着すると、どこかしみじみとした顔でそれを見つめ……
「ていうかさ、やっぱり全然俺と似てないよ! だってこれ狸じゃん!」
と、ケチをつけている……くくく……なるほど……御神体によく似た王様……なるほどなるほど!はは……あはは……
「ゲラゲラゲラゲラ! 確かに、たし、たしっかに、お前は歩く御神体だよ! ヒー! なんだよ! なんだよ! ドキドキして損した!」
「む! 誰だよ! 俺を狸呼ばわりする奴は!」
「あー、だめだ。腹がいてえ。いろいろ突っ込みたいことはあるが、まずはこれだけ言わせてくれ」
もう、色々なものが吹き飛んでただひたすらに面白い。笑いすぎてもう息ができないけれど、なんとかこれだけは言わなければ……!
「お前さあ、なんでこんなところで王様やってんだよ、クロベエ!」
「え、ええええ!? ゆ、ユウーーーー!?」
「あ! しまったね。バレちゃったよ」
「あーあ! まだ内緒にしてようねって言ってたのにバレちゃったねー!」
「まさか王様ってのがクロベエちゃんだったなんて……ああ、理解が追いついてきたら途端に笑えてきた……ふふ、あはははははは! 確かに! 確かに信楽焼……げらげらげらげら」
「お前に笑われると少々腹が立つが……しょうがねえわな……ぷぷ……クロベエの国だから……住人も狸……っていうか、お前だから狸に好かれてんのか! ひーおかしー!」
パンと二人ゲラゲラと笑っていると、よほど頭にきたのかクロベエが苛ついて前足を踏みならします。
「もー! ユウもパンもそこまで笑うことないだろー。ていうか、狸って何だよ。ここは俺が治めるネコ族の国なんだぞ!」
ああ、だめだ。もうだめ、喋ると笑っちゃう。だめだこいつ、自分に似てるから狸をネコだと思ってやがる。いくら何でも無理があるだろ……。
「そうだよ。ユウ様もパン様もなぜそんなに笑うんだ? 旦那によく似た種族だよ。どう見てもネコ族じゃないか」
「コハルが知ってるネコ族さん達とは少し違うけど、父ちゃん達がネコ族だって言ってたからそうなんだと思うよ!」
むふんと鼻を鳴らすコハルちゃん。久々に見たけど結構でかくなってるな……しかし、そうか、ネコ族と来たか……。まあ、そう言うことにしておいてやろう。そう言うことであれば、最終章にいきなり新種族が増えて風呂敷が広がったという事実が消え去るわけだからな。たたみやすくなって万々歳だ。
(そう言う問題じゃないとおもうけど、まあいいわ……)
(あ、そう言う話は後書きに取っといてください)
(んな!?)
突然のやりとりに周囲の住人達がざわざわとしはじめましたが、そこはそれ、流石王様です。
「この人達は俺の大切な家族だよ。王様じゃないけど俺より偉い人達だから仲良くしてあげてね」
「おおおお! なんだかよくわからんがすごい人らしいぞ!」
「王様のご家族なら王様なのでは!?」
「わからんが、言われてみれば立派なお姿をしておる」
「王様の家族ともなればなるほど我々と姿が違うのも頷けるな」
流石、パンの世界。どこに行っても適当な連中しかいねえな! ともあれ、解決編はまだ残っているけれど、とりあえずのモヤモヤは晴れたぞ。
王様がクロベエであるというのであれば、城へも普通に入れてもらえるだろうし、そこでゆっくりとこの国のことについて聞くとしますかね。
ユウ「まあ、そう言うこったろうと思ってましたよ」
パン「ふふ、あんだけビビり倒しといてよく言うわね」
ユウ「うるせー。言ってただろ? 何かこう、引っかかるものがあるって」
パン「言ってたっけ?」
ユウ「言ってたって! ほら、二話くらい前の後書きで」
パン「……あ、マジだ」
ユウ「多分、狸に似た王様って聞いたときにクロベエのことが片隅に引っかかったんだろ」
パン「なるほど……ぷぷ……しかし、ほんと似てるわよね」
ユウ「ククク……ああ、人相が悪い御神体だから余計に似ててな……」
パン「あまり笑うとへそを曲げちゃうから、ここでたっぷり笑っておきましょう」
ユウ「たまに賢いなお前。よし、次話までたっぷり笑っておこう! げらげらげらげら」




