第五百四十八話 狸の国
狸のお嬢さん、名をナナッペと言う。見た目は狸の耳や尻尾を生やした可愛らしいお姉さんといった具合の獣人系種族で、ネコ族ウサ族に続く第3のもふもふ系獣人である。
いやまてよ……ウサ族は魔族故なのかまた独特で、何が切っ掛けでレベルが進むのかは知らないけれど、ウサギ→ほぼウサギ→ウサギがたって歩いてる感じ→手足だけウサギ→うさ耳の人と、謎の成長をするので、最終形態に達したうさ耳ウサ族はその限りではないのか……って、そう言うイラン話をしてるとまた話が進まなくなるなユウです。
そのほかにも鳥のお姉さん方も居るわけで、新たなるモフモフお姉さんが増えたのはまあ、喜ばしいことではあるんですが、ここに来て? 最終章よ?ってところもありますし、何よりも例によって例のごとく身に覚えがないと来たもんだ。
どうせまたゾネスみたいに何かやらかした結果なんでしょうけれども、謎の王様の存在がありますからね。まだブーちゃんの召喚はしませんし、俺も怒らずにいようとおもいます。
しかしまた、ブドウでワインですか。そういやこの世界でそこまで本格的にワインを作っては居ませんでしたね。焼酎に日本酒、ビールなんかはせっせと作っているのですが、ワインはちょこっと作ったくらいで、そこまで本格的にやってなかったんだよな。
なんでかって、別に俺がワインを飲まないとかそういうわけじゃあないんだけど、ほかの酒があるからそれで満足してたって言うか、ブドウがここまで育つ場所を作る頭がなかったというか。
ナナッペさんが言うところによると、この国はブドウと麦の生産が盛んで、ワインやパンを作りつつ、メリルの飼育もしていて、チーズやバターも作っているとか。おかしいな、俺が知っている秋の大地の民たちじゃないぞ。
いやまあ、人種が明らかに少し違いますけれども。
海もそれなりに近いようで、海産物もそこそことれ、浜風を浴びたブドウがまたいいワインになるそうで……ああ、今夜はワインと海産にチーズでくいっとやりてえなと思ってしまいました。
そろそろ作業に戻るとナナッペさんが笑顔で畑に戻っていったので、我々は再び城下町を目指して進みます。ヌケサクの奴が何かいろいろ説明してますが、ブドウがどうとか、麦がどうとか、パンという食べ物はすごいのだとか、メリルから作られるチーズというものを食べたらすごいぞとか・・・・・・反応に困る話ばかりなので右から左に流しておきます。
そんなことをしていると、やがて畑が切れまして、とうとう城下町エリアに到着です。
畑エリアと城下町エリアを区切る門みたいなものは特になく、徐々に建物が増え、気づいたら城下町という具合になっていました。
町の建物はどれもレンガを使った建築様式で、木造建築が多いこの大陸ではなかなかに珍しい様式ですな。ウサ族の里やウサギンバレーは別ですけれども。
俺は基本的に俺が居なくなった後も自立できるように、なるべく今の文明レベルでできることしか教えてないのですが、ダンジョンの連中はその文明レベルがなぜか異様に高くなっちまいましたからねえ。
コンクリートやアスファルトなんてものを勝手に開発して使用してたりしますし、まったく困った連中です。ここの狸さんたちがまだかわいく見えますね。レンガの様式は半年くらい前にウサ族の里ではやった感じでしたからね。あいつら飽きるのが早いのか、今ではレンガを使った建物からじわじわと現代日本風の建物に建て替えてやがりますのでね。
しかしこの、レンガが敷かれた道を歩いていると、俺もファンタジー世界に来たのだなあとしみじみ思います。
「こういうのだろ? パンさんが思い描いてた俺に作って欲しかった世界ってのは」
「……今のがダメというわけじゃないけど、当初思ってたのはまさにその通りね」
「なんつうか、正しきファンタジー世界というか、見たことある奴だこれ!って感じよね」
「一体どんな奴がこんな国を作ったのかしら・・・・・・全く検討がつかないわ」
「……犯人はお前だって事は確定してるけどな」
「なによ!」
なんとも古き良きファンタジーRPG的な景色を楽しみながら歩いていますと……
「ほら、みてみ。アレがこの国の御神体であり、俺たちの始まりの地である証さ」
「わっ! ヌケサクお前まだ居たのか! 急に喋るからびっくりしたわ」
「失礼な奴だな! ずっとあんたら案内してただろうが!」
「冗談だよ、そんなに怒るなって……って、あの御神体……」
(ねえ、パンさん。あれどうみても信楽焼の狸なんですけれども?)
(そうね、しかも結構大きい……ユウくらいあるんじゃない?)
(あんなもんをこの世界に持ち込む奴ってさあ……)
(……しらないもん。あたし狸を集める趣味とか無いもん)
(でもなあ、パンさんだからなー無自覚得でなー何かをなー)
(なによ! ほんとに身に覚えがないんだもん! 知らないもん!)
何この幼児退行……かわいいと思う前に、こいつやっぱり何かほんのりと身に覚えがあるのだろうなと勘ぐってしまいますよね。
「そうだ、御神体ついでに聞くけどさ。ここの王様ってどんな奴なんだ? もしかして俺みたいに黒い髪の男だったりする?」
と、聞いた瞬間のヌケサクの顔といったら! 何を言ってるんだ、この間抜けはみたいなあきれきった顔ですよ! ヌケサクって名前からしてお前の方が間抜けじゃないか!って思いましたけれども、俺が見当違いなことを言ってしまったのはなんかわかったので、文句は言いません。
「いやあ、お前なかなかに図々しい性格してるのなあ。王が自分の様な姿ってか。酒の席なら笑ってやるが、素面の今はあきれてものもいえねえよ」
「いや言ってるじゃねえか。じゃあ、一体王様ってのはどんな奴なんだ?」
「ああ、王様はすげえぞ。顔立ちは御神体によーく似てらっしゃるが、それに勝るほどたくましい身体、すべてを見通すような透き通った瞳。そして何よりすべてを払いのけるそのお力……お前も機会があればお姿を拝見することがあるだろうが、あまりの素晴らしさに動けなくなるぞお」
「そんなに」
御神体である信楽焼によく似た顔立ちで逞しい身体。そしてキラキラとした瞳に強大な力……やべえ、王様がどんな奴なのか全く想像つかねえ。
ユウ「つうわけで、次話かその次あたりには王様が出そうなんだけど」
パン「待って! 本当にあたし身に覚えがないからね!」
ユウ「そう言う話してねえだろうが。一体どんな奴なのかなあって」
パン「そう、それならいいの。ほんと想像がつかないわねえ」
ユウ「俺はなんかこう、漠然と引っかかることがあるんだけど、喉に引っかかって出てこねえんだよな」
パン「私はほんと身に覚えがないけどね!」
ユウ「お前ね、そこまでしつこいと逆に何か知ってるんだろと思われるんだよ?」
パン「うう・・・・・・でも今回ばかりはほんとだからね? 信じてね? ユウ」
ユウ「・・・・・・おう」




