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幼き世界に調律を  作者: 未白ひつじ
最終章
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第五百四十七話 最終章なので今更設定が増えたりしませんよ

 ヌケサクと名乗った狸の親父を先頭に、俺とパンさんはシガラキに入国いたしました。ヌケサクが名乗った直後からパンさんがピクピクと小刻みに震えて顔を上げられなくなっていますが、おめえツボに入り過ぎだつうの。確かにあのとぼけた顔で「俺ぁヌケサクだ。よろしくな」と言わた時は吹き出すかと思いましたけれども、お前、そこまで笑うのしっつれいだぞ。


 あ、どうもユウです。


 4階建ての建物くらいはある高い高い石壁に開いた門を守っているのもやはり狸。いやあ立派な壁ですよね。一体何から守るんでしょうか? 巨人でしょうか? さしずめウォールゴミパンダってところでしょうか。


「ブフッ……ちょ、ユウやめ……」

「ああ、ゴミパンダは狸じゃなくてアライグマの事だったか」

「グフッ……ど、どうでもいいことじゃないの……ククク……」


 だめですね。この女神、もう何を聞いてもおかしい状態にまで陥っています。つうか狸とアライグマを一緒にしてどうでもいいって事はねえんだぞ。んなこといったら狸のお嬢さんから視力ゼロっていわれちまうぞ。


 高さもさることながら、それなりに厚みがある門をくぐって中に入れば、中はなかなかにのどかな景色。


 小さな野菜畑の存在が確認でき、いよいよ俺が知らない文明人の干渉を考えなければいけないなと、気を引き締める思いではありますが、それとは別に何か背か高い植物が青々と茂る畑が遠くの方まで広がっています。あれはなんなのでしょうか?

 そしてその謎の畑の合間にはぽつりぽつりと民家が建っていて、さらに奥のほうにうっすらと大きな建物と、それを囲む多くの建物の姿が見えます。


 おそらくは中心部に城があり、それを囲むように城下町。さらにそれをぐるりと畑や農家の家が囲んでいる……そんな具合でしょうか。


 参ったな。俺が作った町よりずっとまじめっていうか、これこれこれだよ! 異世界の国ってやつはさ!ってかんじじゃないの。


 もうここを作った人に引き継いじゃっていいんじゃないかな……。


(だめよ! そんな得たいがしれない人!)

(でもさあ、俺より真面目な感じがしない?)

(そうだけど……私知らない人とかうまく話せないし……)

(……嘘つけ)


 裏でそんなやりとりをパンさんとしながらぼんやりと景色を眺めていると、ひょうたんを腰にぶら下げた狸の親父がフラリフラリと歩いてきました。


 道ばたにドサリと腰掛け、それをぐいっとあおり「ぶへえ」と汚いため息ひとつ。うわあ、これ居酒屋の前に居る奴だ! 同意を求めようと思ってパンさんを見ると、口元を押さえてうつむいています。またスイッチはいったな。


 いやあ、どう見ても信楽焼のアレだろと、酔っ払いを見ていると、聞いても居ないのにヌケサクが説明をしてくれました。


「ああ、あれは酒に酔ってるんだよ」

「はあ」


 そんなの見ればわかりますけどね。


「酒っていうのはさ、ここの国の王様が教えてくれた飲み物でな、作るのは大変だがとにかくうまい。そしてふわふわとして気持ちが良くなってさあ、あんな具合になっちまうんだ」


「なるほど」


 酒が何かってのは流石に知ってるよ! ばかにしないでくれる!? と、思いましたが、この国の人たちにとっては酒は未知の存在。それをもたらしたのが俺たちが知らぬ王ということであれば、よそ者が酒のことを知らないと思ってしまうのは自然なことなのでしょう。


 ここで下手に「知ってるわよ! 酒とは……」と、wikiのコピペトークをしてしまったらきっとヌケサクはショックを受けてしまうこと請け合いですので、知らんぷりしておきましょう。パンさんに根回しは……必要なさそうですね。笑いすぎてうまくしゃべれなくなっていますし。


 しかし酒か。狸に酒とかうまいことやりおる。つうか俺でもそうする。ここの王様とやらとはうまい酒が飲めそうだ。なんたって酒が名産のようだしな。


 しかし、ここに来るまで見えたのは見慣れたおよそ酒の原料にはならないであろう野菜たちの畑くらいのもので、酒の原料らしいものと無理にこじつけて考えられるのは城壁の外に広がっている猫じゃらしの原野くらいなもんだ。


 アレは猫じゃらしであり稲ではないのでいわゆる日本酒ではなくて、猫じゃらしを使ったお酒のような何かでも作ってるんだろうか・・・・・・?


 時々忘れかけるけれども、ここは地球とはいろいろと違う異世界だ。猫じゃらしにしか見えないアレだって、実は立派な穀物で、麦のようにおいしくいただける未知なる食べ物なのかもしれないし。


 なんて真面目に考察しつつ、とどめを刺されて笑い崩れているパンさんを引きずって再びヌケサクと歩き始めると、やがて青々とした畑の中を通る街道に到着しました。


 ここまで来ると、広々と広がる畑の作物がなんなのか流石にわかってしまう――が、これが何に使われているかは考えたくはないし、予想が外れていて欲しい。


「ああ、あれはブドウだよ。酸っぱくて食べられたものじゃないから誰も取ろうとしなかったんだけどな、王様が酒の材料になると育てるようにいったんだ」


「酒の材料」


「ああ、なんでもお妃様が好きな酒だとかでな。今では国の娘たちが一生懸命酒造りに励んでいるよ」


 やっぱりそうか……遠目にもそうかな、でもなって思ったんだ。まさかワインとはな……。狸親父が腰からぶら下げたひょうたんに入ってたのはワインかあ……。


 ワインを飲む狸かあ……似合わねえ。


「結構うまいから兄ちゃんたちも帰りに買っていくといいぞ」


「はあ、どうも」


 そうはいいますけどね、大体にして狸が足で踏み踏みしたワインとか毛がたくさん入ってそうでちょっとつらみがある……あれ、まてよ。この世界ってデタラメだから同じ種族扱いになっていても男女で種族が違う感じなんだよな。


 男が狸族だからといって、女も狸族というわけじゃあ無いじゃん。 この大地のパターンからすれば赤い肌がまぶしい鬼神系のお姉ちゃんってとこだろうと思うのですが……とかいってると、都合良く現れるんだろ、ほらみろ、女性の声だ。


「おーい。ヌケサクさーん。変わった人たち連れてどうしたんだーい」

「ああ、ナナッペ。こいつらは壁の外で一緒になったんだよ」


(ナナッペ)

「グフッ」


 パンさんが本格的に動けなくなりました。ていうか、ナナッペって。ネーミングセンスよ。俺が言えたことではないが。


 ナナッペさんの姿はブドウに隠れて見えませんが、どうやらこちらに向かっているようなので次期にお姿拝見となることでしょう。まあ、どうせ赤い肌がひょっこり顔を出すか、意表を突いてメスの狸がそのまま現れるか……天丼としてエルフの姉ちゃんが現れるか、まあそんなあたりでしょう。俺だってこのパターンに慣れて来てるんだ。もう最終章だし、そう簡単には驚かねえぞ。


「あら! 近くで見るとほんとびっくりだ。わたいらみたいな顔をしてるのに耳はないし、尻尾もないよ。それに、そっちの人は男かい? 男なのにずいぶんとまあ、すべすべとしてるねえ!」


 ……なんだか既視感があるやりとり……というか、というかというかー!


 ここに来て……たぬ耳美少女……だと……?

ユウ「増えてるじゃないかー!」

パン(けいれんしている)

ユウ「ええい! リザレクション!」

パン「はっ!? 今天界の上司に怒られてたはずなのに……」

ユウ「それ笑い死にかけてたっていうか意識だけ召喚されてたんじゃ……」

パン「それはいいとして、一体何がなんなんです?」

ユウ「聞いて驚け、見て驚け・・・・・・狸のお嬢さんが現れた・・・・・・」

パン「えぇ……? そんな! 盾の人や槍の人が出てくる世界は余所の世界よ?」

ユウ「やめろ! でも確かにあのお姉さんみたいな感じではある」

パン「ていうか、マジであたし知らないんですけど!」

ユウ「……まあ、お前の場合身に覚えがなくても何かやらかしてるからな……」

パン「うっ……」

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