第五十三話 新たな力
モル丸の誕生後、ルーちゃんに変化が起きた。
といっても、俺やパンに感知できるような見た目や言動などではなく、本人だけが気づいた変化だった。
「ユウ、ルーちゃんね、出来ることが増えたみたい。ルーちゃんのスキル見てみて?」
そう、ルーちゃんから言われ、パンと二人ワクワクしながら見てみた。
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名前:ルト
職業:ダンジョンコア
LV:12
体力:6600
魔力:7200
スキル:人化 ダンジョン生成LV2 勧誘 使役 召喚 自動翻訳
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「ダンジョン生成のレベルが上がってるんですがこれは……」
「フロアマスターを誕生させたことにより次の段階がアンロックされた…ということかしらね」
「相変わらず自分の世界の事を知らない女神さまだ」
「うっさい!色々あんのよ!」
「まあ、それはいいとして、これはどういう効果があるんだ?」
「ええと、ダンジョンの規模をさらに広げることができるようになったみたい。
LV1でもある程度広げることはできた、っていうか制限まで広げてなかったんだけど、今度のでさらに広く複雑なものまで作れるようになったみたいよ」
「なにそれやべえ」
「それはおまけみたいなもので、メイン効果は5階層まで作れるようになったこと。
これで今度こそ森の階層を作ってウサギたちを招待することができるわね」
「それはありがたいな。ヒカリの奴に見張らせてはいるが、あのままじゃいつ滅びるかわからねえからな」
「後そうね、私の介入もしやすくなった…かな?出来ることが増えたって言った方がいいかしら?」
「ほう、詳しく聞かせてくれ」
「今までも無理やりシステムの裏を突く感じで無理な設定を組み込んでいたんだけど、これからはもう少し柔軟な事ができるわよ」
「それはいいことを聞いた。前も言ったけどやりたいことがあるから後で相談にのってくれ」
「何を企んでるのかわからないけど、ルーちゃんの負担にならないことならね…」
◇◇
というわけで、その場で第2階層、「森」をルーちゃんに作ってもらった。
と言っても、何もない階層には俺は入れないとのことで、しばらくクロベエと二人待つ羽目になったのが残念だ。ルーちゃんが頑張ってダンジョンを作る姿…みたかったなあ。
おまけにちょいちょいタルットが絡みに来るもんだから頭にくる。どんなもんか畑で作った"キウリ"を食わしてみた俺が悪かったんだが、もっとくれ、もっとくれとやかましくて仕方なかった。
7匹目のタルットをモル丸に潰してもらったあたりでルーちゃんたちが戻ってきた。
「さあ、2階層への入り口を作るわよ。これならあんたにもルーちゃんのお仕事を見せられるわね」
それはありがたい!おっさん共の猛攻に耐え抜いた甲斐があるというものだ。
「じゃ、ユウみてて!入り口創るね!」
目を閉じて両手を伸ばすルーちゃん。周囲には思わせぶりな石でできた壁が生成され、中央に小さな神殿のようなものが作られていく。その神殿の床に魔法陣が描かれ、まばゆい光と共に転移門が誕生した。
先に聞いていた通り、入り口と1階層を繋ぐゲートより小ぶりのもので、入れる人数に制限がかかっているようだ。また、この階層の妖怪どもはルーちゃんの許可なく使うことができないとのことで、階層間のトラブルも避けられるとのことだ。
「広さ的にも丁度いいし、タルットたちが狙ってるからここをフロアマスターの部屋にしようぜ」
そう言ったのが聞こえたのか、鋼落としから逃れたタルット共がギクっとした顔で目をそらした。たまり場にしようたってそうはいかねえ。
「そうね、そうしましょう」
「モル丸、よろしくね。ルーちゃんのゲート守ってね?」
「仰せのままに、ルー様」
◇◇
生まれたての森に降り立つと、爽やかな風が吹く素敵な森だった。広さは湿原よりもやや広く、様々な性質の森がエリアごとに広がっているらしい。
森の中には泉があったり、豊富な植物が茂っていたりと水や食事には困らなそうだ。
さしあたって魔獣の森の連中をスカウトし、近く集落に行く予定があるのでそのついでに女神の森の連中も攫ったりスカウトしたりしようと思う。
今思えばラウベーラあたりフロアマスターに良さそうだったが、食っちまったものは仕方がない。話が通じそうな気もしなかったし、まあ自業自得だよね?
一度やった作業だ、そうトラブルも起こるまい。フロアマスターはヒカリでも就任させればよかろうと思う。家から通勤していいって言えばホイホイのってくるだろう。
予定が詰まっているし今日中にーと、思ったが、さすがに今からでは遅いしルーちゃんもつかれているだろう。魔獣の森に行くのはまた明日だな。