第五百四十四話 これは相手が相手なら甘酸っぱい展開になったのでは
というわけでしてね! いやあ、久々のうれし恥ずかしパンさんとの二人旅! いや待て、これまでパンさんと二人っきりで旅をしたことってあっただろうか? いやない! これはもしかして初めての展開なのではないでしょうか。
うっひょー! 早くも波乱の予感! おら、わっくわくしてきたぞ!
「そこは嘘でも胸が高鳴るとか・・・・・・その、気恥ずかしいとかそう言うこと言っときなさいよね」
「おまえ時々何も考えないで発言するよね」
「何よ!」
「じゃあ、ちょっと地の文貸すからお前その通りやってみ」
「え、ちょ・・・・・・もう! わかったわよ! やってやるわよ!」
・・・・・・ごほん。
というわけで、久しぶりにユウの奴と二人っきりでの冒険ということなのだけれども・・・・・・待って! もしかしてこれまでユウと二人っきりで旅をしたことってあったかしら? ううん、無いわ。これは初めての展開よ。
・・・・・・いつも一緒に馬鹿騒ぎしているユウだけど・・・・・・こう、二人きりとなるとなんだか気恥ずかしくって胸が高鳴っちゃうわね。
この感情・・・・・・これは・・・・・・これは・・・・・・これはーーーーっ!
「うおおおおおお!!! 恥ずかしくてやってられっか! ばっかじゃないの! ていうかばっかじゃないの!」
「ほれみろ。自爆したろうがい! 簡単そうに見えてなかなかに難しいんだからな。素人はだまっとれ!」
「くっ・・・・・・なんだか釈然としないけど、話が進まなくなるからまあいいことにするわ」
「お前もわかってきたじゃないか」
というわけで、実のところ妙に意識してしまったりして微妙にやりにくい二人旅なのですが、まあ、それはおいときまして、問題は謎の国の存在ですよ。
聞くところによれば、その国とやらは学園都市からはるか南に広がる森を抜けた先にひっそりと存在していたとの事。
またしてもこのパターンかよ感がありますが、今回の発見者は俺ではなくこの世界の探検隊ですからね。これは大きな意味がありますよ。
俺が調査して俺が対処するという流れから脱却しつつあるってわけですよ。着々と自立の道が拓けているようで何よりですわ。
最終的には解決する部分まで自分たちでやっていただきたいわけですけれども、今はまだ俺の任期が終わってませんからね。その日が来るまで及ばずながらお手伝いさせていただきますよ。
探検隊が入っているというだけあって、道というには少々あれではありますが、無いよりましな限りなく道に近い様なものが遠くまで伸びています。
・・・・・・探検隊が一回や二回通っただけではこんなに跡が残らないと思うけど、今はとりあえず前に進みましょう。
さすがに徒歩はいやなので、もちろんここは魔導車です。踏破性能が高そうな見た目のゴツい車でどんどん進んでいきます。
パンさんは隣で青い顔をしていますが、別に俺の運転がひどくて怖がっているとかいう可愛らしい理由ではありません。ガッタガタ揺れる道だっつうのに、もくもくとソシャゲに勤しみ酔ってしまったんですね。
「……ユウ……次広い所があったら止めて……」
「ほれみろ言わんこっちゃねえ。酔うからやめろっていっただろうに」
「うう……面目ない……移動系ゲームは助手席でやると捗るのよ」
「……最低だなお前……っていうか、この世界のマップで遊べるのかよ」
「……女神の力なめな……うっぷ」
「わーーー!!! ほら! 停めたから! さっさと降りてスッキリして来なさい!」
しばらくお待ち下さい。
「うう……ごめん……だいぶさっぱりした……」
「まったく。コレに懲りたらスマホ見るのやめなさいね」
「そうするわ。イベントクエスト取り敢えず終わったし」
「……次トイレに行きたいとか言い出しても停めてやらねえ」
「わー! ごめんごめん! ホント反省してるから! ね?」
こんなだから甘酸っぱい空気も何もありません。あった所で困るわけですけれども!
黄金色の何かススキのようなものがさわさわと風に揺れる原野をトットコ車で走っているわけで、なかなかに幻想的な景色でシチュエーション的にはすごく最高なんですけれどもね、隣に座るヒロイン敵存在が……おっと、敵じゃねえ的だ。そのヒロインのような何かがこれですからね。
まったくロマンもチックもあったもんじゃねえっすよ。
「あら、クリよ」
「それはマロンだ!……って、おお、すっげえなまじかよあのでけえの栗の木か」
黄金色の丘を登りきり、がくんと下りの道に入った所で目に飛び込んできたのは大きな栗の木が立ち並ぶ森。
奥の方には赤や黄色に葉を染めた木々が立ち並んでいるため、流石に全部が全部クリってわけじゃあなさそうですが、商売としての収穫が見込めるだけのクリが多数立ち並んでいます。
ここまで立派なクリは菓子や料理の素材に最高なんじゃないでしょうかね。サンプルとしていくつか採取したのでナギサちゃんやアンコロモチ、後はウサ族の調理人連中へのお土産にしましょう。
「ははーん。読めたわよ」
「ほう」
「このわざとらしいクリの配置。この先に待ち受ける未知の民はクリを生業にしてると見たわ」
「クリを生業ってなんだよくそ、ちょっと笑っちゃっただろ」
「なによ!」
「言い方はアレだが、これまでのパターンから言えば確かにな。ただまあ、お前の世界はひねくれているからな。サルとカニがシノギを削る修羅のような国が待ち受けているのかもしれん」
「そこまでアレな世界じゃないから! っていうか、サル系獣人やカニ系獣人は居ないからね!」
「ゴリラみたいな女の子達はたくさんいるけどな」
「おいおい死んだわこいつ」
「ヒッ」
……ともあれ、謎の全てはこの森の向う側にある……はずだ。
探検隊が見たという謎の国、一体どんな国なんだ――ッ!
ユウ「あー、今回これいらなくね」
パン「そう言われてみれば、ずっとここのノリで話してたもんね」
ユウ「うーん、あ、そうだお前何のゲームやってたんだよ」
パン「ああ、これ? あんたからすれば未来の話だから詳しくは言えないけど」
ユウ「ふんふん」
パン「某国産長寿大作RPGをモチーフにした歩く系のゲームよ」
ユウ「竜の方? それとも幻想の方?」
パン「竜の方。ガチャが結構エグいんだけど、ゲーム自体は結構楽しいのよ」
ユウ「くっ……今すぐ日本に帰りたくなってきた……俺もやりてえ」
パン「そうは言うけど、あんたが帰るのは2017年の12月だからね。これが出たのは2019年よ」
ユウ「なんて……なんてひでえ事を……悪魔じゃ……コイツは女神ではなく悪魔の化身じゃあ……」
パン「だからあんたのスマホに制限かけてるのに。聞いちゃうんだもん……これ自業自得よ」
ユウ「グフッ」




