第五百四十二話 ヒゲミミ温泉郷
はいっ! というわけでしてね、予告通りヒゲミミにきてるわけですけれども、ここはまあ、楽なんですよ。と言うのも、元々この冬の大地は厳しい環境故に人類が住んでいる場所が限られていまして、その殆どが洞窟内で細々と生活していたわけなんですが……、勿論たんなる洞窟では寒さにやられちまうわけで、自然と地熱の恩恵に預かれる火のダンジョン付近にその生息域が固定されていたわけなんですよ。
結果として、ヒゲミミ温泉とトンネルでつながる場所、数カ所に集落が散らばってる感じになっていたため、もう既にヒゲミミ温泉を中心とした国家体制の卵のようなものが出来上がっていたわけなんです。
もっとも、精霊樹の里はナベゾコやゾネスの里同様に別の国扱いと言いますか、特殊な自治区として独立させていくのでその限りではありません。
そんなわけで、一応はヒゲミミの代表なのでマルリさんと、副長であるシズクちゃん、そしてマルリさんの代理で運営業務にあたっているバーグ夫妻にお越しいただきました。
「どうも、お久しぶりです。ユウです」
「ほんとユウさんって唐突に来るし、来たときって大体が面倒な話を持ってくるわよね?」
「あ、そのやり取りはキンタ達と既にやってるのでカットで」
「なんっ……!?」
そんなわけで、リットちゃんに説明をした時と同様のやりとりをし、取りあえずの納得と了承を得られたわけなんですが、そこはそれ。ここは他の国とは事情が違うヒゲミミ温泉です。ふふ、俺だって雑に話をすすめるだけの主人公じゃあないんですよ。
「マルリさんはどうせお飾りにしかならないわけじゃん?」
「ユウさんほんと失礼なことばかり言うわよね……」
「ふふ、実際わしはお飾りじゃからのう。そのおかげでこうして好き勝手遊び歩けてるのでいいんじゃよ」
マルリさんは見た目ロリなのに実はかなりの高齢なので、無理をさせずお飾り的な村長転じて街長として名前だけ借りてる状態なんだけど……実のところ、この種族は200~300年平気で生きるという事が判明してちょっとパンをお説教したりしたんだよな……と、それはまあいい。
良いったらいいんだ! じゃあなんでマルリさんより年上の人がこの集落に居ねえんだとか色々突っ込みどころが生まれてしまうが良いんだよ! それはあれだ! 別の集落行ったり精霊樹の里行ってたりすんだろってことで、この話は終わり!終わりです!
ふう……後から余計な設定が増えると言い訳に苦労するんだから辞めてほしいぜ。
閑話休題
「マルリさんはさ、本人も認める名誉お飾り街長なわけじゃん」
「……それもどうかと思うんだけど」
「でさあ、他の国みたいに『王様』っていうのもなんか無粋な感じがするわけよ」
「そもそも私にはその『王様』っていうのがまだよくわからないんだけどね」
「まあ、それはそうだろうけど。で、俺考えました!」
「ロクでも無さそう……」
「シズクちゃん!? 君、うちのパンさんに乗っ取られてたりしない?」
「なっ!? 何変なこと言ってるんですか!」
「あまりにも冷たいツッコミが似てたもんで……」
まあいい。
そう、ここはひげ耳温泉郷。温泉街において、王様だ何だというのはあまりにも無粋! であればどうするか? ふふ、そこはそれ、この俺にいい考えが有るんですよ!
「役割や権限自体は他国の王様と同じ。だけど、この土地ならではの役職にマルリさんをつけようと思うんだ」
「この土地……ならではの!?」
「ほほう、おもしろそうじゃの! のう、バーグ!」
「俺達はユウさんが決めたことに従いますよ……ははは」
バーグってこんな性格だっけ……まあいいか。
「ここは温泉だ。温泉に王様はいらねえ。必要なのは女将! そう、女将だ。だからマルリさん、貴方にはこれから『若女将』を名乗ってもらう」
「わしは全然若くないんじゃがのう」
「見た目が若いから良いんですよ! ヒゲミミ温泉郷若女将! マルリさん! それを支えるのが番頭のバーグとその妻ヒルダ! シズクちゃんは闇の支配人というか、実質国を運営するかかりでお願いします!」
「闇!? ていうか、ユウさん、それって私がめちゃくちゃ忙しいやつなのでは!?」
「はは、いやいや今と変わらないから大丈夫」
「それなら……まあ……いいんですけれども……」
シズクちゃんちょれえっていうか、日本に来たらブラック企業で平気な顔して社畜やるタイプだな……おっかねえ。
「ヒゲミミはさ、ヒゲミミ温泉郷として国全体でおもてなしをする場所になってほしいんだよ。今の所はこの大陸唯一の温泉がある土地だし、その良さも広まってきたからな」
「確かに最近お客さんが多いですわね」
「それだけ、この大陸の人達にただその日生きる以上の欲が出てきたってことだね。良いことだよ」
そしてヒゲミミ温泉改め、ヒゲミミ温泉郷はその代表を若女将のマルリさんに定め、その補助……というか、実権を握るのは支配人のシズクちゃん。その補助として番頭夫妻のバーグとヒルダ。
後はお約束、ウサ族の連中におまかせするということで、丸く収まりましたっていうか、温泉の運営形態そのまんまなんだけどね。
亀のところには『自治権やるから勝手にやれ』と通達をだしたし、フリーシアにはこの間夕食の時にそれとなく自治権を与えることを話したし、ゾネスはまあ、アイドル業務の打ち合わせついでに話すから良いとして……次は取り敢えずマリーノって感じですかね。
マリーノがある夏の大地は秋の大地同様に俺が探索してないエリアがまだまだ残っているため、今後も村や街が増える可能性が高く、あんまり適当に出来ないのがネックですな。
ま、適当にやるんですけどね!
パン「1話で終わった……だと……?」
ユウ「ちょっとパンさん……あんまりメタい発言はやめてくれますー?」
パン「あ、ごめん! って、あんたに言われたくないわよ!」
ユウ「ふふっ まあ、ほら。ヒゲミミだし? 別にあんくらいでいいじゃん? 的な」
パン「言い方が引っかかるけど……でも実際あの土地は環境のせいで生息域が狭いからね」
ユウ「だろ? だからあんくらいでいいんだけど……問題はマリーノとメリノか」
パン「何が問題なのよ?」
ユウ「尺があんまり残ってねえのに、また新たな何かが出てきたら困るって言ってんだよ!」
パン「あっ……っていうか、そんなに多分なにもでない……わよ?」
ユウ(フラグだこれ)




