第五百四十一話 キンタ号泣
「というわけで、後半戦です。ビシバシ脳内に直接説明していくから覚悟しろ!」
「アレなんだか微妙に頭がこそばゆいから気持ち悪いんだよな……」
「お父さんの頭がついていけてないだけだと思うよ」
「リットぉ……」
はい、仲睦まじい親子愛ですね。というわけで、ユウなんですけれども、後半戦なんですけれども。
「いちいち名乗らなくても知ってるからさっさと進めてくれや」
「うるさいな! 今のはお前に向けていったんじゃねえよ!」
「なっ!?」
まあいいですけどね。
さて、先に説明したとおり、人々が集い生活をすることによって集落が出来、それが高機能化すると村になる。村や集落には長がいて、そこに住む人達のまとめ役になる……と。
で、村の規模が大きくなって生まれた街は、小さな村では出来ない事を手伝う役割があり、その関係から周辺の村をまとめ上げる存在となる。
定期的に行われている……筈の会議において、街や村が位置するエリアの生活向上のため、各村長から出された意見をまとめて最終的な決定を下すのは街長の役目だ。
今のところ、春の大地には『はじまりの街』『リューツー』『コハン』と3つの街があり、それぞれがエリア毎に自治権を持って運営している状態なわけだが……、ここでようやく『国』というものが現れるわけだ。
「やっとかよ。もういい加減疲れてきたんだが、そのクニとかいう奴が出来れば何か良いことが有るのか?」
「ここまで説明を受けてわからないお父さんは逆に尊敬するよ……」
「そうか? がはは」
キンタはアホですね。リットちゃんはもう解ってるみたいですね!
リットちゃんが考えている通り、国というのはその3つの街をまとめ上げる大きな括りです。キンタのためにわかりやすく言うと、春の大地全てを運営する権利を持つ大きな組織となります。
「ええと……つまり、なんだ。その国とやらの長は……」
「ユウさんが言ってた国王だね」
「ああ、そんなこと言ってたっけ。そのコクオウとやらは、今の俺がやってる仕事の3倍忙しいってわけか?」
おお! キンタが! 『3倍』という概念を知っているなんて! マジびっくりしたんですが、一体何処で覚えたんでしょう?
「うるせえな! マーサから教えてもらったんだよ! 俺だって勉強してんだ! 何時までも馬鹿なわけじゃねえぞ!」
「それは素直に褒めてやるぜ。すげえぞキンタ。成長するもんだな」
「おいこら! 頭を撫でんな! リットおい! 笑って姉でやめさせろ!」
話が進まない!
……さて。
まあ、実際国王ともなれば広い範囲で物事を考える必要はあるわけなので、今まで以上に大変だとは思いますけれども、今まで居た街長が居なくなるわけじゃありませんからね。そこまで仕事量が半端ないというわけじゃあありませんよ。
各街から上げられた報告書に目を通し、何か問題を見つけたら人を派遣したり、対策会議を開いたり。
定期的に街長を集めた会議をしたり……まあ、そんなくらいですよ。しらんけど。
「随分と無責任な発言だな、おい!……ていうか、今まで居た街長が居なくなるわけじゃないって言ったな?」
「ああ、言ったぞ」
「つまり、その面倒くさそうな国王に俺がなる可能性は無いってわけだ!」
「あっ」
しまったな。その場のノリでキンタを国王にしてやろうとおもってたんだが、キンタは既に街長。畜生、やってしまった。
「何恐ろしいこと考えてんだよ……でも良かった! これで俺は面倒な役職につけられずに済む!」
チィ……! 王にされて困るキンタを眺めてほくそ笑む計画が……。
「だめだよユウさん」
「あ、すいません! リットさん!」
「それは確かに面白いかも知れないけど、お父さんに任せたら大変なことになるよ」
「ごもっともです!」
「おい、リット!」
ううん……しかし、新たに運営する人間をとなると難しいぞ。この土地で彼ら以上に運営慣れしているやつは居ねえし、かと言って便利な便利なウサ族を王に据えるのはちょっと問題が有る。
……あっ! ピーンと来ちゃいましたよ。
「そっか……ユウさん、そう決めちゃったんだね」
「えっ? 何? 俺まだ地の文でも何も言ってないんだけど?」
「ウサ族とユキウサ族、それとゴーレムを少し増やしてもらえたら商人ギルドと兼任しても十分イケルと思う」
「あれ? ちょ、リットちゃん? あれ? まじで俺の心を読まれてる?」
「うん、ユウさん。それでいいよ。面白いってのはわからないけど、私、国王やるよ!」
「えええ? 良いの? っていうか、なんでテキストにもなっていない俺の思考を読んじゃってるのおおお」
「俺はお前らの会話についていけねえよ……」
……リットちゃん、恐ろしい子だな。もしや地の文を見せているうちに何かスキルに目覚めたのかもしれんな……それはまあいいや。
リットちゃんを国王にしたらキンタが面白い顔をするだろうなとか、初代国王が幼女とかおもしれえなとか、色々考えたのは確かだけれども……実際にリットちゃんは年齢に合わないハイスペックな能力を持っているし、ウサ族やユキウサ族、ダンジョンの魔物達や他の大陸の人達とも深い縁を結び、今や俺が知らない所でどんどこ技術革新を進めていたりするわけです。
そんな賢くて顔が広いリットちゃんが国王になればこの大陸は安泰というわけですな。
「そ、そんな褒められると照れちゃうよ!」
「ふふ、照れてる顔はまだまだお子様だなあ」
「もー!」
「俺はもう要らないのでは……」
「キンタは街長としてこれからも馬車馬のように働いてもらうぞ」
「そうだよ。私が国王になったらお手伝い出来なくなるんだから、がんばらないとね」
「あっ……? あああーー! あーーーー!!!」
「うるせえ! いきなり泣き叫ぶな!」
というわけで、元々キンタに渡してリットちゃんに読んでもらう予定だった『おうさまのしおり』をリットちゃんに渡し、後日行う予定の調印式までお勉強をしておくようお願いしました。
と言っても、政治とか経済とか一個もわかんねえ俺ですからね。作ったのはウサ族とかなので、中身のことはよく知りません。
それでいいのかって? いいんだよ! それだけこの世界が俺を頼らず動けるようになってるってことなんだから!
そんなわけで、最後は雑に締めくくり、俺は説明の場を次なる土地へ移すのであった。
ユウ「ふう。これで一段落ついたな」
パン「見てたわよ見てたわよー。多分同じ説明を残り3つの大地でやるのよね?」
ユウ「ああ、そうだぞ。大陸ごとに国を置いて統治させるんだ」
パン「全部終わった顔してるけどさ、残り3箇所でも同じ説明をする必要があるんじゃないの?」
ユウ「ばかだな。そんなの雑に『リットちゃんに説明をした時と同様のやりとりをし』とでも書いておけばいいのさ」
パン「またそういうメタな事を言って……」
ユウ「だってくどくどと同じ説明を書かれても苦痛なだけだろ!」
パン「誰に考慮してんのよ!……ていうか、次はヒゲミミに行くのよね?」
ユウ「ああそうだぞ」
パン「あそこの街長ってマルリちゃんよね。当初の予定では街長をそのまま王に……」
ユウ「あっ……ま、まあ、でもそれはそれで……」
パン「私の世界なんだからね? ノリだけであんまりいい加減なことしないでね!?」
ユウ「俺はこの世界の住人の自主性にかけるっ!」
パン「もっともらしいこと言ってごまかさないでー!」




