第五百三十一話 謎のプロデューサー
謎のプロデューサー視点です。
「おはようございます! プロデューサーさん!」
「はよっす、プロデューサ!」
「遅いよー! ほら、営業いこういこう!」
「うう……ウチはまだ寝ていたい……」
「くっ……腰が……あ、うそだから! そんな顔で見ないでよ! プロデューサー!」
5人の娘達が口々に朝の挨拶をする。今の時刻は午前9時半。 自分よりも早く用意を済ませていたアイドル達が、まるで餌をねだるひな鳥たちのように仕事をねだる。
普通の人族と同じモノサシで見ればまるで敬老会の出し物で集まったかのようなアイドルグループだというのに、見た目は20代前半にしか見えないのだから恐ろしい。
それよりも恐ろしいのは彼女達の才能だ。
歌い手として歌がうまいだけではなく、研修用資料を数日見ただけで完璧に模倣し、今ではすっかりそれを自分たちのものにした上で、オリジナルに昇華させている。
あちらがどれだけやれているのか、自分にはわからない……いえ、ゲームを楽しくするために自分から双方何をしているか探れない仕掛けをしたのだけれども……きっと私達の『ニューゾネレーションズ』は小娘達のグループなどには決して負けないわ。
ふふ……というわけで、今回は謎のプロデューサー事、私、ブーケニュールがこちら側陣営の紹介をしようと思うのだけれども……え? カズくんがプロデューサーじゃないのか? そこはカズ視点でお話が進むのではないか? ダブル主人公としてカズを登場させたんじゃないの? ちょ、ちょっとまって。メタい質問は一つずつにして!
うーん? まあ、これには深い事情があるのです。それは――ぽわんぽわんぽわーん
◇◇◇
『アイドルマイスターは俺もガッツリやり込んでますからね! プロデューサーは任せてください!』
カズ君、あれだけ自身なさげにしていたというのに、ユウ君から離れたら急にやる気を出し始めちゃって。彼の前だと甘えが出てしまうのか、居ないから調子に乗っているのかはわからないけれど……
プロデューサーを任せてください……ね。ふふ、カズ君がこうしてやる気をだすとユウ君も喜ぶからね。任せてあげてもいいけれど、一応探りを入れてみましょう。それで未熟に感じたらバックアップ体制を強化する感じで。
『随分と自身があるようだけれども、プロデューサーとしての経歴を聞かせてもらえるかしら? ああ、勿論ゲームやそれに付随するもののお話ね』
『へへ! 聞いたら驚くっすよ。 何を隠そう、アイドルマイスター スノーホワイトガールズ ライトニングステージは事前登録からの付き合いで、この間のナナリンイベではなんと67位! 無課金でここまで食い込むのにどれだけの用意と苦労をしたことか……ユウさんなんて課金勢なのに精々500位に食い込むのが精一杯なんですよ? どうです、俺こそプロデューサに相応しい、そう思いません?』
『……お話にならない……』
『えっ!? ま、まさかブーちゃんさんはひと桁台に食い込んだ経験が……?』
『んんー? スノステの事なら3度ほど1位になったことが有るわよ?』
『ぐべえ!? ま、まじっすか!』
『お金と時間に余裕がある女神をなめないで。そんな事はどうでも良いの。スノステって、ソシャゲじゃないの。いえ、ソシャゲがだめってことはないし、どのシリーズから始めた人も等しく仲間と思っているわ。でも、まさかカズ君……貴方、スノステ以外やったことがないとは言わないわよね?』
『やだな、そんな事ないっすよ。ちゃんと別プロダクションのモリステもやってますよ』
『……はあ……。ちなみに私はアーケードからアイマイをプレイしている古参なの』
『アーケード? ああ、でもあれってソシャゲのが元になってるやつ……』
『おだまりなさい! スノステの事じゃないの! アイマイの一番最初の作品はアーケードゲームだったのよ? そんな事も知らないの?』
『え、えええええ!? う、うっそだろ……俺が知らないほど昔から……?』
『昔ってほどじゃないわよ……ええと、カズくんがこっちに来たのが2017年だから……12年前?』
『12年前って、俺小6じゃないっすか。まだゴロゴロ読んだころっすよ? ゲーセン的な物と言えば、ムシクイーンやりにゲームコーナー行ってたくらいで……うわあ、そんな昔からあったんすね、アイマイ……そりゃ知らねえわ』
『あんまり昔って言わないでよ……はあ、その後も家庭用ゲーム機で何度かリリースされてたんだけど……そう、やったことがないのね……』
『ま、まあ? そこはそれ! スノステで培ったこの知識で……』
『うるさいわよ! おだまりなさいな! その程度の知識でプロデューサーを名乗るなんておこがましいわ! ファンとしてシリーズを語るのなら何も文句はないし、これを切っ掛けに旧作にも触れてねって思えるけれど!それとこれとはお話が別よ!』
『わーーー! 急にキレたぞ!?』
『ソシャゲには無い細やかな育成システムが過去作には有るの! リアルでプロデューサーになろうというのなら、そこは抑えておかないとだめなの! もー! サポートに回ろうと思ったけどヤメよ! プロデューサーは私がするわ! カズ君! 貴方は後方支援にまわりなさい! いいわね!』
『は、はいぃい……』
◇◇◇
……と言った具合で、私らしくもなく途中から完全にキレちゃってね……。
何度でも言うけれど、古参が過去作でマウント取るという行動は見ていて嫌になるし、普段の私なら絶対にしないことなの。でもね、これはリアルでアイドルを育成しようというお話なの。
そもそもゲームの知識を元にそれをやろうというのが間違っているのだけれども、その間違った流れの中でもお話にならないのがカズくんなの。
あのまま任せていたら、ゾネスの子達と適当にお話をするくらいのことしかしなかったと思うし、満足げな顔で「パーフェクトコミュニティだぜ!」とか言ったくらいにしてさ、何ひとつ進まないまま対決の日が来ちゃってたと思うのよねえ……せめてスノステのアニメを見ていたのならば、まだ良かったのだけれども、カズ君そっちはめんどくさがって見てなかったみたいだし、しょうがないのよ……。
……ふふ、プロデューサーと呼ばれるのは一つの夢だったから、この状況は嬉しいけどね。
というわけで、私、ブーちゃんPはニューゾネレーションズのプロデューサーとして日々彼女達を鍛え上げているの。
最も、声優さん達のライブ映像を見せただけで歌や踊りのレッスンは済んじゃったし、衣装周りはウサ族の子達に発注かけたし……私がやっていることと言えば、アイドルとしての皮を彼女達に被せることくらい。
営業先の確保はナギサちゃんがやってくれているし、カズ君はビラ配りやアイドル達のパシリとして活躍しているからほんと楽チンで申し訳がないわ。
「プロデューサー! ほら、早く行こうよー!」
「もう広場にたくさん人来てるってよ!」
「はいはい、じゃあ行きましょうか! 今日もファンを虜にするわよー!」
「「「「「おおおーーー!!!」」」」」
対決の日まで残り1週間……もう既に始まりの街の住人達はニューゾネレーションズの虜よ。ふふ、リーちゃん、ユウくん。申し訳ないけれど、今回の勝負、勝たせてもらうわね。
ブー『というわけで、こちらは結構いい感じだけれども、そちらはどうかしら?』
パン『げ、げえ!ブーちゃん!』
ユウ『急に来た!?』
ブー『ほら、残り1週間になったでしょう? ここらで互いに差し障りがない程度の報告をね?』
パン『ふーん。まあいいわ。うちの方は……凄いわよ。ねえ、ユウ……』
ユウ『ああ、正直俺が引くレベルでヤバい事態になっている……』
ブー『え、ちょっとまって。アイドルの話よね?』
パン『そうよ……。私達はとんでもない物を生み出してしまったのかも知れないわ……』
ユウ『これまで幾度となく牧歌的な世界をぶち壊すような真似をしてきた俺だが、今回ばかりはな……』
ブー『えっ? えっ? 待って? 私はそういう話を聞きたくて繋いだわけじゃ……ええー!?』




