第五百二十六話 第1回アイドル会議
なんといいますか、やはりと言いますか。例のお社は【保存の結界】によって保護されていて、社自身とその中身の経年劣化を防ぐ仕掛けがされていましたよ。
ブーちゃんがウインクをバチバチとしていましたけれども、あんた他所の女神様じゃろ……上の神にバレたらめちゃんこ怒られるんじゃないのかしら。
てなわけでユウですけれども。伏線になりそうでならない、どうでも良い御神体の話はもういいでしょ? これあれだよ。ただ単に時間の概念をまだ知らぬであろうゾネスの民に外部の女神が何かをしたっていうだけのお話なんだよ。どうせ10年周期でオヤカタを変えるシステムなんかもその謎の女神様が授けた知恵なんでしょ?知ってるんだから!
というわけで、御神体の話は終わり!終わりです!
取り敢えず、親の世代と子の世代で2ユニットやるという事に決まったわけですけれども。祖母の世代も張り切って『ウチラもやる!』と危うく3ユニットになりかけてしまったわけですけれども……、いくら長命種のゾネスさんたちとは言え、祖母の世代ともなるとですね、なかなかにマダムな感じでちょっとアイドル――と呼ぶのが辛い感じで……いずれ別の方向で、例えば普通の歌手とかそういった方向で活躍してもらうという事で納得をしてもらいました。
そりゃ確かにアイドルという概念が無い世界なわけだから、俺達が抱いていしまっている固定概念に縛られる必要はないのだろうけどさあ……まあ、いずれってことで!
「では、第1回アイドル会議を始める!」
「なんか妙な響きね……」
会議の出席者は日本文化を知るスタッフのみ、俺とパン、カズにフィーちゃん。それとそのまま帰らないでいるブーちゃんの5名だ。ナギサちゃんは別に居ても構わないかなって思ったけど
『会議?ああ、話し合いか!あたいが出てもまともな意見出せないだろうしさ、ゾネスの連中と狩りに行ってくるよ』
と、森に帰ってしまったため、今回彼女は欠席です。
ルーちゃんは来てくれるだろうと思ったんだけど……
『え?ナギサちゃん狩りに行くの?じゃ、私もお友達増やしに行こう!』
と、そちらに向かっていってしまいました。いいんだ。こっち側のフィーちゃんは兎も角として、ルーちゃんはそこまでアイドルネタに興味ないだろうからね。自分が好きなことをしていてくれたらそれで良いのさ。
「さて、ここで方向性を決めておこうと思うのだが」
「方向性?」
カズが首をコテンと傾げて不思議そうな顔をしていますが、お前がやるとただただ気持ちが悪くてイライラするので辞めてくださいね。
「うむ。生憎我々はリアル世界のアイドル業界にはには微塵も詳しくはない。そうだな?」
うむりと深く頷く一同。
流石に俺だってママクロちゃんとかパピーメタルとかそれなりに好きだし、ライブビデオを見ることだってあるんですけれども、彼女たちがどういった営業をしているかとか、実際のライブの空気はどうなんだとか、そういったリアルな情報は一切知りません。
そうなると参考になるのは二次元、つまりはアニメというわけで……。
「そこで諸君に尋ねておきたいのだが、君達はスクールアイドル系とプロダクション系、どちらがお好みかね!」
「それはつまり、マブライブ!とアイドルマイスターのどっちが好きかってこと?」
「名前を出しよったなこいつ!だがまあ、そういうことだね。何方もアイドル物として成功を収めたメディアミックス作品と言えよう」
「そうね……アイマイが世に出た時は地球の文化もそこまで来たかと女神ながら感嘆して毎夜こっそりとアキバに通ったものよ……」
「へえ……リーちゃん一時期ちょいちょい夜に居なくなってたけど……そんな事してたのねえ……」
「げえ!ブーちゃんが居るんだった!お願い!内緒にしといて!」
「うふふ……どうしましょうねー」
「ええい!話が進まんから後にせい!……いやさあ、俺はどっちも好きだし、どっちのソシャゲもやってるけどさ、何方も方向性としては面白いと思うんだよね」
スクールアイドルのテッペンを目指し、真にマブいアイドルの座をかけて歌とダンスで戦うアイドル!マブライブ! アイドル物とは思えない熱い戦闘シーンが話題を呼んだ作品だ。
他校生とのトラブルを拗らせ、学校をかけた『学園アイドル7番勝負』に挑むことになってしまった主人公『風雲寺 眞琴』が共に戦う仲間を得るべく、各部を巡って看板をかけた勝負を挑むのがシナリオ前半部だ。部におけるエース級の部員を奪いにやってくる主人公に対して、初めは敵対的な目を向けていた生徒達だったが、後に学園を救うためやむを得ずやっていることであると知ると協力的になり、最終話の合戦ライブでは全校生徒を上げてサポート役に回ってくれるまでになったりして……ツッコミどころだらけだったけど、面白かったな。
一方、アイドルマイスターはといえば、過酷なアイドルマイスター選抜試験を見事くぐり抜けた主人公がプロデューサーとなり、世界各地を巡って未来のアイドル達を発掘し、ブドー館でのライブを目指すという筋で、一見普通のアイドル作品に見えるのだが、そのアイドル達のスカウト方法がなかなかに物理で。
力比べやかけっこ、障害物競走まがいならまだ良くて、センターを務める天ノ川 キラリのスカウト回はまさかの野球回で、実況スレでは『野球回がある作品は』等とドキドキの書き込みが相次いでしまった……と、アニマイについて語るとダメだな。脳を溶かすから人を選ぶ作品だが、なかなかに名作だからつい語りすぎてしまう。
ざっくりとまとめれば、アイマイとは別ジャンルのスペシャリストの皮を被ったアイドル達を発掘する審美眼を持ったマイスターである主人公、通称「プロデューサー」が一見色物の集まりであるアイドル達をスパッとまとまりが有るユニットにまとめ上げる手腕が面白い作品である。
「つまりさ、大陸各地から集めた多種多様な技能を持った精鋭たちによるアイドルユニットと、校内から集めた多種多様な技能を持った精鋭たちによるアイドルユニットの2つを作るってことよね?
んで、それぞれ好きな方を担当させましょってことでしょ?」
「左様」
「左様じゃないわよ!設定丸かぶりじゃん!どっち選んでも一緒じゃないの!」
「あっ」
参ったな……本来ならば被ることのない2つの作品が、雑にまとめることによってかぶってしまった……くっ!
「普段頼りになるくせに、たまに馬鹿よねあんたって……。こうすればいいじゃない。スクールアイドル組はメリノの学園で一月ほどアイドル活動をする。
猛者……もとい、スカウト組は『はじまりの街』で同じくアイドル活動をするの。
双方実力とファンがある程度付いた所でライブ対決。票が多いほうが勝ち、みたいなイベントをやったら良いじゃないの」
「お前ほんとたまにいいこと言うよな!」
「いつもよ!ふふん!」
一見、人口が多いはじまりの街で活動をする組のほうが有利に見えますが、メリノも学園都市として今では結構な数の人が各地から集っていて、また、人の出入りもそこそこ多いことから各地へとスクールアイドルの噂が広がっていくことでしょう。
なにより、学園という一つの組織を代表するアイドルになるわけですから、大きな固定票を得ることが可能です。これはなかなかいい勝負になるのではないでしょうか。
「というわけで、改めて聞こう。君達は何方が好きかね?」
……
というわけで、アイマイを選んだのはカズとブーちゃん。マブライブを選んだのがパン、手を挙げなかったのがフィーちゃんという結果になりました。
……フィーちゃんのやつ、途中で飽きたのかずっとFGΦのイベント回してたからな。きっと話を聞いていなかったのだろう。最も、これは俺がやりたくてやることだし、インドア派のフィーちゃんに無理やりやらせることでもないから別に構わん。
「つーことで、マイスターとなるのはカズとブーちゃん。スクールアイドルを導く神の声となるのがパンと俺と言うことで、10日後から行動開始としましょう」
数が偏ったら少ない方に俺が入ろうと思ってたんだけど、結果的に俺とパンさんが組む感じになってしまったな……。いやいいんだ。いいんだけどさ、カズとブーちゃん、自動的にナギサちゃんもつくだろ? アッチ側……不安を感じる……。
さて、さっそく行動に移るか……と、言いたいところだが、10日をかけてしなくてはいけないことが有るのだ。
「というわけで、俺はちょっくらマリーノまでの道を整備するから、君達は10日間適当に過ごしていてくれたまえ!」
「え!ちょっとまってよユウさん!もしかして最初から帰ろうと思えば帰れたの?」
「何を今更……。ウサ族やらブーちゃんやらホイホイ来てたことで気づけよ。ルーちゃんだっていつの間にか居ただろ? その気になれば召喚できるし、パンに頼んで好きな場所に転移することだって出来るぞ」
「えっ……じゃ、じゃあ今までわざわざ遭難してたのは……」
「面白いからに決まってるだろ!」
「そんなあ~!」
いいじゃねえか。ゴリ……ナギサちゃんだって喜んでたし、こうしていい出会いもあったしさ。
転移で帰れるのもだけど、当然俺が手を下せばマリーノまでの林道だって作れちまうし、初めから遭難については気にしてなかったんだよなあ。
そんな事を知らぬカズは、なんだかとってもぐったりしていますけれど、お前、念願のプロデューサーさんになれるんだぞ。俺に感謝しろよなといいたいわ。
ユウ(ふう……なんとか話が進みそうだな)
パン(不安しか無いけどね……)
ユウ(ブーちゃんだろ? 奴はきっとカズを傀儡化して好き放題するぞ)
パン(そうよね!絶対そうよね!どうしよう!嫌な予感しかしない!)
ユウ(でもま、ここはお前の世界だし、ブーちゃんとて女神様だからさ、そう悪いようにはしないだろ)
パン(そうかな……そうかも……)
ユウ(だからさ、折角女神が2チームに別れたんだしさ。ここはゲーム感覚で楽しもうぜ!)
パン(そうね……、うん、そうよね!ストレスを楽しさに変えてふっとばしちゃいましょう!)
フィー《ルーちん……ちっと後でお願いが……うん、詳しい話は後でね……くふふ……》




