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第五百二十五話 どうでもいいお話で引っ張った末

「……」

「……」

「くくく……ふふ……うふふふふ……」


 社の前に漂う気まずい空気。

 どう、言葉を発したら良いのか、互いに一言も声を出せないままただいたずらに時間ばかりがすぎてい……いや、ちょっとまって!


「なんでブーちゃんここに居るんすか!」


「ううん? 二人きりにしておくと修復不可能なレベルにまで甘酸っぱくこじれるかなあって、登場したんだけどー、余計だったかしら? あっ!ごめんね、ユウくん。お姉ちゃんとしたことが。そうね、あのまま気分が盛り上がってしまったら、私なんておじゃま虫だものね」


「違います!お願いですからここに居てください!」

「……あ、ああああああ!ぶーちゃん!!!!あんたねえええ!!!」


 突如リブートしたパンさんがいきなり大声を出すもんだから、遠巻きに俺たちを見ていたらしい人達がなんだなんだと此方に集まってきていますね。


「あ、すいませんね。ちょっとびっくりしちゃったみたいで。なんでも無いので、大丈夫ですのでー」


 あまり大事にされると困る。何が困るって、言い訳するのに困る。なんでパンさんと二人微妙に気まずい感じになってるのか知られると色々と困るし、何よりお社を透視してました!なんていったらきっと怒られるに違いない!


 ……とか言ってたら、ムッスリとしたマサエさんがノシノシと不機嫌そうな顔でやって来ました。やべえ怒られる。


「さっきから何騒いでいるんだい? 御神体を見たいって言うから場所を教えてあげたのにさ、まったくイチャイチャするなら小屋をひとつ貸してやるからそこで……」


「「今その話題はデリケートすぎるから!」」


「あっはっはっは息がぴったりねー」


 小屋とかホントマジでやめろ!っていうかパンとハモっちまったじゃねえか!


「おや? そこの娘は見たことない顔だね? これもあんたらの仲間かい?」


「あ、ああ……はい。そうです。遅れて合流したというかなんというか……なんかすいません」


「まあいいさ。別にヨソモンの出入りを拒否してるわけじゃないんだ。悪い奴じゃないってならどんどん遊びに来てほしいくらいだしね」


 なんか物々しい入国審査みたいな事してた気がしたけど、アレは普通に人が行くぞという連絡をしてただけだったのかな……あんまり深く考えるのも無駄だからやめとこう。


「それで、御神体見に行くって言ってたくせに、なにやってるんだい?」


「ああ、それがですねー」


「あん? ああ、もしかしてこれ開け方わからなかったかい? こんなもん手で軽く引けば開くのにさ」


「「えええっ!?」」


 特に何か気にすること無く、社の扉を開くマサエさん。あまりのことにまたしてもパンとハモってしまった。


「あの、その、そのお社って勝手に開けてよかったんですかね?」


「オヤシロ?……ああ、この小屋の事かい? こんなの御神体が濡れないようにご先祖様が作った単なる小屋だし、開けて悪い理由があるかい。そもそも、戸を開けなかったらどうやって中を掃除するってんだ」


「あー……ソウデスヨネー」


 これはなんだろう。俺たちは神眼を使う必要が、週刊少年誌展開をする必要がなかったのではなかろうか? わざわざ互いにつらい思いをする必要なんてなかったのではなかろうか?


(あっはっははっは スケベ損だったわね、リーちゃん、ユーくん)

((スケベ損とか言うな!))


 ちくしょう、ブーちゃんめちょっと面白かったじゃないか……くっ、パンのやつも微妙に『スケベ損』が気に入ったのか突っ込んだ割に笑いをこらえてやがる。


《そういうとこよ、ユーくん達》


 くそっ……ダイレクトに突っ込んできよる。


 そんな事より御神体だ。これってどう見てもあれだよなあ……。


「ごほんごほん!それで御神体なんだけど……」


 マサエさんが居るため、念話に切り替えてツッコミを開始します。


(これさあ、似たのを見たことがあるんだよなあ……っていうかモロに『ハッピーバースデー』って書いてるよね? アレだよね? 開くと有名なお誕生日の歌が流れるメッセージカードだよね)


(いぐざくとりぃ……)


(そうよお。これは昔々に私がリーちゃんにあげた特别製でね、毎年お誕生日がくると開かなくてもなるようになってるのよ)


(ちょっとしたホラーじゃねえかよそれ!)


(そ、そうなのよ!わかっているつもりでもさ、夜中いきなりなり始めてビックリするし、妙に音が大きいから寝てても目が覚めるしさ!そのうち電池が切れるでしょうと思ってたけど、何年経っても切れないの!)


(うふふ。お誕生日だというのに寝ていたらもったいないじゃない? だから目が覚める様な音量にしてえ、何時までも忘れずにリーちゃんをお祝いするために永久電池を入れてあるの)


((こええよ!))


(それでね、いい加減私もこれアカンやつやって思ってね。でもさ、こういうのって捨てられないじゃない? 友達から貰った大切な贈り物だしさあ。かといって家の何処にしまっておいても音が聞こえるでしょう……?)


(もしかしてお前、処分に困ってこの世界に捨てちゃったのか?)


(違うわよ!ほら、例のお家あるでしょ? 図書ルーム。 せめてあそこの本棚にしまっておこうと思ったんだけれどもさ……移動中に落としちゃって……まあ、落としちゃったんなら仕方がないかあって思って諦めてたんだけど……)


(まさかまさかよねえ。こんなに立派なお社を作って貰っちゃて御神体扱いされてるなんてねえ)


 ……ああ、俺ピーンと来ちゃったなあ。なんでこのタイミングでブーちゃんがやたらと俺たちに絡んできたのか。なんでジャングルの民族みたいな連中が住む集落に明らかに浮いた感じの和風のお社があるのか。誰か特定の存在が介入して、何時の日かこうなるように仕向けたんじゃないかなあっていう、恐ろしく息が長いいたずらなのではないかなあって思っちゃったなあ。


 ちらりとブーちゃんを見ると凄くいい笑顔でウインクをしています。

 

 ……こわっ!


 流石に俺とパンのスケベ損まで予測して仕掛けたわけではないのでしょうけれども、何時の日かパンのやつがこの土地にフラリと現れ、御神体として祀られている自分のバースデイカードに気づいたら――なんて悪戯心でちょちょいと仕掛けちゃったりしたのではないでしょうか。


 全く……ほんと何考えてるのかよくわかんねえ恐ろしい女神様ですな!


『アッピバーデートーユー アッピバーデートーユー アッピバーデー デア ディーデャーン アッピバーデートーユー……アッピバーデー』


「「ぎえええ!?」」


「おや、丁度今日が鳴る日だったようだねえ」


 元々なのか、経年劣化によるものなのか……やたらと悪い音でお誕生日ソングが大音量で鳴り響く!いや、これあれか!音がデカすぎて割れてんのか!


「うおおおおおびっくりした!びっくりしたっつうか、あれ? なんなの? もしかして今日……パンさんの……?」


 参ったな、そういや誕生日の話とかイマイチしたことなかったしなあ。ああ、そっかあ、今日なんだ……折角だし、ここはいっその事、子供たち皆呼んでぱあっと……

……と、当事者であるパンさんを見ると、凄くびっくりした顔をしていましたが、とっても柔らかな笑みを浮かべています。やはり誕生日はいくつになっても嬉しいものなのですねえ。


「ううん、漸く壊れたのねこれ!次はいよいよスピーカーも壊れてくれそう!やったあ!あ、ちなみに私の誕生日は12月24日、地球で言うクリスマスイブよ。面倒だから言ってなかったけどね」


 なんというやるせねえオチ!

ブー「壊れないわよ」

パン「えっ」

ブー「私が直すもの」

パン「ちょ、そんな何処ぞの零号機パイロットみたいなこと言わんでも」

ユウ「そうかあ誕生日なあ」

パン「……どうしたの?難しい顔をしてさ。何?あんたこれ欲しいの?ダメよもう御神体なんだから!」

ユウ「要らねえよ!いやさ、お前は兎も角子供たちの誕生会してなかったなあって」

パン「あーね。うーん、ルーちゃんは兎も角として、誕生日があやふやな子が多いからねえ」

ブー「そんな時は合同でやってしまえばいいのよー」

ユウ「なるほどな。して、何時頃にすればよいのでしょうか」

ブー「手っ取り早く元旦にすれば良いんじゃない? 年が変わって年も取りましたって」

ユウ「いいねそれ。じゃ、来年の元日は正月と誕生会だ!忙しいな!おい!」

パン「そ、そうね……忙しいでしょうね」

ユウ「どうした? 落ちてるウンチでも食べたの?大丈夫?頭とか」

パン「違うわよ!はあ、ほんとなんでも無いから!」


パン(ユウのやつ、もうすぐ期限の2年だって覚えてるのかな……それとも覚えていて敢えて――)


ユウ「パンさん?」

パン「う、ううん!ホント平気!拾い食いとか無いし!」

ユウ「変なパンさんだなあ」

ブー「リーちゃんが変なのはいつものことよ」

パン「な、なにおう!」

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