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第五百二十話 ひんやりとしたあいつ

 カプランという植物は、いわゆるカプサイシン的な辛味をたっぷりと備えた真っ赤な葉っぱでありまして、それに加えてなかなか立派な防腐効果を備えている事がわかりました。


 だからこそ、ゾネスやウッホの人達は狩った獲物を解体した後、当日食べる分以外の物はカプランの葉をまぶし、丹念に刷り込んだ後保管庫にぶちこむということをしているわけですが、カプサイシン的な辛味が移らないわけはないので、辛いものが苦手な大人は勿論のこと、それ以上に辛味耐性が低いお子様たちはひどくつらい思いをしていたというわけなのです。


 それでも、ここの子供たちは一般的な同年代の子供達と比べ、圧倒的に辛味耐性がついている事も判明したわけですが、ざっくりとお話を聞いて回った結果、やっぱり辛いのは苦手である、獲ったその日のご飯が一番美味しいという意見をたくさんもらうことができたため、やっぱりなんとかしてあげたいなあと思ったわけでありました。


 貴重な文化の破壊者だ? 上等じゃねえか! ごはんは美味しく食べてこそじゃい! そんな残念な文化ぶっこわしてやる! そざぶぶ! ……ごろがわるい!


「肉が……というか、食い物がなんで痛むか知っていますか? マサエさん」


「いたむ……?」


「ええっと。食べられなくなるか、腐ってしまうかわかります?」


「ああ。そりゃあカプランもつけずにほったらかしてしまうからだろ?」


「実はですね、俺達が使った肉は、今日皆で食べた肉は10(とお)も日が昇るより前に狩った肉で、カプランも何もつけてないんですよ」


「ええ? 本当かい? 食べられない肉なら口に入れた瞬間わかるんだよ? あの独特の駄目な感じ……それがまったくしないじゃないか! 一体何がどうなったらそんなマネが出来るんだい?」


 よっしゃつかみはオッケーですね! とっくの昔にこの世界に輸入済みのものなんで、もうもったいぶらずに一気に行きましょう。


「この土地だとあまり馴染みが無いかも知れませんけどね、食べ物ってのは冷やすと長持ちするんですわ」


「冷やすっていうと、水につけるのかい? 確かにモゴ芋やシャルルなんかはとった後川に漬けといたりするけどね。確かにそうすれば長い間だめにならずに済むけどさ、肉でそれやっちゃうと食えなくなるじゃないか」


 なるほど冷やすという概念はあるのか。知識チート系のお話だと原住民が何も知らんで『こ、これが"甘い"という感覚なのかー!?』なんて喜んでくれますけどね、そんなのやっぱりお話の世界だけのもんなんですよね。


 ……いや、この世界も大概だったか……。


 何にせよ『冷やす』という事がどういうことなのか知っているってなら話は早い。ストレージからにょっきりと冷蔵魔導具を取り出してドスンと置いてみせる。


「なんだいそりゃ? 戸がついた箱? なんだか随分と立派な箱だねえ」


「これは冷蔵魔導具ですよ。そうですね、扉を開けて中に手を入れてもらえればどういうものなのかわかるんじゃないでしょうか」


 それを聞いたマサエさんは扉をガバリと開けると、特に何か恐れることもなくシュシュっと手をつっこみなさった。なんて勇敢なお方じゃ……。


「あら……ねえ、アイリ。あんたも手を入れてご覧よ」」


「ええ? ウチもかい? 一体何がどうだって言うんだい」


 何やらブチブチと言いつつも、ノリノリで手を入れるアイリちゃん。ここの人達、好奇心が半端ないよな……。


「わっ!? あれ? 水が無いのに冷たいよ!? うわわっ!? やっぱり冷たいよ! 一体これはどういう事なんだよ!ユウ!」


 百点満点のとっても良いリアクションですね。これは解説しがいがあるというものです。


「これはさっきも言ったけれど、冷蔵魔導具さ。この箱は中に冷たい空気……ううん、風みたいなもんをを溜め込んで食べ物を腐りにくくするのさ」


「「ええー!?」」


 いやあ、こういうのやっぱ良いですよね! 知能チートはこうでなくっちゃ!


 ちなみにいま目の前に出してあげたやつは魔石タイプのやつです。アイスモルモルを使うタイプは餌を上げたら長い間使うことが可能ですが、たまに中に入れた食料を食べられてしまうという欠点がありますからね。


 モルモルに慣れてる連中なら『しょうがねえなあ』で笑って済ませてもらえますけれども、慣れてないとびっくりしちゃうと言いますか、やっぱり魔物は魔物じゃないかとなり兼ねないため、取り敢えずは扱いやすい魔石型のをってことで。


 最も、これはこれで自力で充電――魔力を注ぎ込めなければやがて使えなくなってしまうのですが、そのあたりに関しては多分大丈夫だろうと。


 パンさんが鑑定した限りでは、ここの人達もきちんと魔力はそれなりに備えているようでしたからね。魔術を使えるかどうかは別として、魔力があるなら訓練さえすれば魔石に注ぎ込むことは可能です。


 あのカズさえできたと言えばわかり易かろうと思います。


 と、少し思考している好きにあの親子はすっかり夢中になって冷蔵魔導具を開けたり締めたりしていますね!くっそ!年齢に目を瞑れば割とどストライクなお母さんと、少しストライクゾーンを広げればアリっちゃアリなアイリちゃんですよ。見ていて和みますねえ……じゃねえや!


「っと、それはあんまり開け締めすると中の冷気……冷たい空気が逃げてしまうので、出来ればそのくらいにしておいてもらえると嬉しいですね」


「あ、ご、ごめん!ウチ、こんな冷たい風は初めてだったからさ」

「そうそう!ウチですらこんなの生まれて始めてみたよ!」


 非常ににこやかな表情を浮かべてらっしゃいますな!これはこの後の交渉も容易そうな感じですね!


パン(感謝しなさいよねー?)

ユウ(えっ? 一体何に?)

パン(ふふん!わからないの? 知識チートでドヤりやすい世界に呼んであげたのよ?嬉しいでしょ?)

ユウ(……なんでそんな世界になったのか、なぜ俺を呼ぶ羽目になったのか。もう一度考えよ?)

パン(えへへ……言ってみただけ)

ユウ(うっわ、殴りてえ!男女平等パーンチ!)

パン(ちょ!肩パンはやめなよ!ちょっとした可愛らしい冗談でしょうが!)

ユウ(お前の冗談は時折非常にわかりにくいんだよ!)

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