第五百十三話 ユウくん変なswitchが入る
「はーい、ウサ族の皆さんはこちらですよー」
わらわらと現れるウサ族の皆さんを先導するわたくし、ユウですけれども。
当たり前の話なんですが、ルーちゃんの召喚によってわさわさと現れるウサ族を見たエルフ族(仮)の皆様がぎょっとした顔で固まっていてとても面白いです。
だって、何もないところからいきなりシュシュっと姿を現すだけではなく、彼女達にとっては異形にも見えるであろう、妙な耳を生やした連中が20人もわっさわっさと広場を歩いているのですから、彼女達の正気度はゴリゴリと削られているであろうと思われます。
っと、我々もこうしては居られませんよ。ちゃっちゃか用意をしないと何時まで経っても食事会が出来ませんしね。
「おーっし!ウサ族共!良くぞ集まってくれた!話は簡単だ!今日は新たに見つけたこの集落の皆様に、我らのうまい飯を振る舞い、相手からも振る舞われて美味しい時間を過ごそうって寸法だ!」
いやあ、調理ウサばかり集めたわけですからね、皆が白いコック服に身を包んでいるため、なんだか異様な感じですね!遠くから見ているエルフ族の人たちがなんだかちょっとビクついていて面白いです。
「調理するのは多めに考え500食分!メニューはカレーを主軸に……めんどくせえ、お手元の資料をご覧くださいだ」
バサりバサりと紙をめくる音が聞こえてきます。便利ですよね、魔術。さっき急ぎでババっとかいた献立表をパン先生がさっくりと複製魔術で増やしてくださいました。
アイツのこと、これからコピー機先生と呼んでやろう。
「嫌よ!」
何か聞こえましたが、まあいいでしょう。
「さて、調理場だが……ああ、ちょっと待ってろ」
そう言えば調理場の事が頭からスポンと抜けていましたわ。でも俺とこのスマホがあれば安心だ。後は責任者様の許可を取るだけ……っと、いたいた。
「おおい、アイリちゃあん」
「な、ななな? ウチをちゃん付けで呼ぶな!」
「まあ良いじゃん。それよりさ、食事を作る場所なんだけどさ」
「ああ……そうだな……ううむ、仕方がない。何をやったのか知らんが、お前達、いきなり数を増やしたからな、一緒に使うには竈が狭いし、上手くウチらと交代しながら作るほかあるまい」
「いやいや。アイリちゃんが許してくれるならば、そこらの森を切り開いてちゃちゃっと炊事場を作ろうと思うんだけど……」
「いや、しかしだな。客人にそこまで迷惑をかけてしまうのもな」
「いやいや。簡単にできるしさ。アイリちゃんが良いよーって言ってくれたらそれだけでいいし」
「う、うむう。じゃあ、いいよー」
「やったぜ」
「ぐぬっ! つ、つい『いいよー』なんて言葉を使ってしまった……まあよい!好きにしろ!」
ふふ、なんだか可愛いところがあるじゃないですか。もしかしてあれか?この尊大な口調も作ってたりする? しちゃう? なんだかオラわっくわくしてきたぞ!
「と言うわけで、許可が取れましたので、10分ほどお待ちください」
ウサ族達に待機命令を出し、俺は一人森……ジャングルへ。
と言っても、もうマクロ組んじゃってるからあっという間に終わるんだよな。パンさんにお願いして作って貰った『お気に入り』ページを開き、リストの中から『中型調理場』をタップ。
スマホのカメラで現場を写し、そのまま指で範囲を軽く指定した後「確定」ボタンを押す。
後はもう勝手に登録されている通りに開拓、整地、建造がされ、中の家具なんかもそっくり作ってくれるんだ!
なお、開拓の際に発生した資材は自動でストレージに取込まれ、即時に建造の資材として使用されるのでおさいふにも優しいです。
あっという間に出来てしまう物だから感動も何も無いけれど、もう既にそう言う物は求めていないので別に良いのです。
「と言うわけで、調理場が出来ましたので、ウサ族共は配置についてください」
「「「ウオオオオオ!」」」
何この子達……森に来て野生化してるの? 違う? 久々に自分たちの料理が初見となる人達に振る舞うことになって興奮している? なるほど!
いやいや、目がこええから。あんまりエルフ族の人達にその顔を見せないようにな。
「ユウさーん!調理場に材料がなんにもありませーん!」
そうだった。
流石に材料までは用意してはくれないので、そこは俺がなんとかしなくちゃだったわ。
「ほいよ、ストレージ直結保管庫ね。お前らを信用して一時的にアクセス権を付与したから必要な物を思い浮かべながら箱に手を入れるんだぞ」
「「「うおおおおお!」」」
だからやめろって!
面白い物を見つける度にストレージに突っ込んでいますからね。肉も魚も野菜も調味料だって使い切れないほど中で唸っているはずです。
ウサ族達が必要とする物は全て収まっている事でしょう。
「じゃあ、献立通り頼むぜ!俺も及ばずながら手伝うしさ!」
「何を言いますか!ユウさんこそ、リプラシル料理の父!ユウさんと共に厨房に立てる事を我ら一同、感激に奮えているんです!」
そうだそうだと上がる声に照れてしまうと言うか、ビビってしまいますな……。
俺って別に食堂の息子とかじゃねえし、ホテルのシェフでも無いし、かといって家庭料理が得意な女子でもありません。そんな人達が転移なり転生なりすればさぞや大活躍するだろうなと思いますが、俺は唯単に自炊してるだけのおっさんですわ。
……くっ!キラキラした目で見つめられるのが辛いっ!
いいさ!それでも奴らが俺を師と崇めてくれるのならば!俺はそれに答えるだけだ!
「ゆくぞシェフ共!戦闘開始だあ!」
「「「「うおおおおお!!!!」」」」
パン「なあにいこのテンション……」
ユウ「よしな」
パン「 『それでも奴らが俺を師と崇めてくれるならば!』 」
ユウ「やめなさい」
パン「 『ゆくぞシェフ共!戦闘開始だあ!』 」
ユウ「辞めろ!!!」
パン「ふふ。ドンと机を叩いたところで辞めないわよ!ああ、おなか痛い!」
フィー「しかしかーちん。これはこれで格好いいと思うよ」
ユウ「フィーちゃん?」
フィー「よくわからないけれど、何かこう、私が好きな方向性の香りがプンプンする」
パン「そうね。きっとこれは後にユウの黒歴史書に記載されるに違いないわ」
フィー「おお!かーちんもわかってんじゃん!それだよ!それ!私が求めてるのはそれ!」
ユウ「おいクソ!マジで勘弁してくださいませんかね!その場のノリで言っただけなんですよ!おい!」




