第五〇八話 朝っぱらからもーーーーーーー!
早朝だっつーのに、ムワッとする空気!いいよね……よくない!
いやあジャングル半端ないっすね! この半端ない湿気!なんつうか汗もかいてないのにベタベタしますわ。嘘です。汗も結構かいちゃってますわ。
まだお日様がユルユルと上り始めた頃だと言うのにこの暑さ!やってられません。
湿度が高い場所にはダニやらヒルやらいや~な生き物が多数生息しているわけなんですが、パンさんに聞いてみたところ、超小型の魔物という扱いで一応居ることは居ると。しかもキチンと吸血をし、丁寧に痒くなるスキルをかけて立ち去るとかなんとか嫌なことを言ってました。
しかし、その話を聞いたのは崖から落ちて直ぐのこと。対策もせずジャングルを歩くような間抜けではありませんからね!ここでキャンプをするよりずっと前に虫さんばいばーいってなもんで、その辺の問題は大丈夫でした。
ただまあ、不快指数がめちゃくちゃたかいわけで、俺は一人こうして早朝からウダウダと無駄にお外で涼んでいるわけです。
「はーー。魔術を覚えていなかったら即死だったな」
なんもかんもがじっとりと暑い嫌な土地ですからね、外に出たからといって涼しいワケがないんです。じゃあどうやって涼んでいるかといえば、魔術で出した水に同じく創った氷を浮かべ、そこに足を突っ込んでウダウダとしているわけなんですね。
勿論、それだけではまだ涼しさが足りないので、冷風魔導機を正面に置きまして、ヒンヤリとした風も浴びてなんとか生きながらえているというわけですよ。
この魔導機は中に氷の魔術を封じ込めた魔石が含まれていましてね、俺みたいに魔術を使えるやつは自力でチャージ可能なので、アイスモルモル要らずってわけなんですわ。
「そして……朝から食うアイスがまた美味い!」
てな具合で、焚き火とコーヒーと言ったお約束とは違いますけれども、キャンプの朝を一人満喫していたわけですが……。
「じーーーー」
「……」
「じーーーー」
なんですかね、この、口でじーーーって言う生き物始めてみましたよ。
「じーーーー」
「……」
「だーー!無視すんなよ!迎えに来てみたらなんだい?妙なことしてるじゃないか」
はい、先程から謎の『見てるぞ』アピールをしていた生き物はエルフ(仮称)さんでした。つうかなんていった? 迎えに来たっていったよね? 今何時だと思ってんだ!まだ6時前だぞ! 釣りに行くんじゃねえんだ、早すぎるっつーの。
「いやいや、まだ皆寝てるし、暫く起きてこないぞ」
「えーー? お日様が顔を出したっつーのにまだ寝てるのか?ありえねー!」
これだから自然と共に生きる系の人達は……。
「まあなんだ。ただ待たせるのも悪いからさ、暫く俺とダラダラ話でもしてようぜ」
「な、ななななにをするだって? ウ、ウウウチがひとりで来たからってそ、そそそんな!」
「お話だよ!お話!顔を赤らめるな!胸を隠すな!嬉しそうな顔をすんじゃねえ!」
なんなんですかね、このエロフさんは!見た目が幼いから全然エッチじゃないんですけどね!これで相手がカズだったら大変だぞ? めっちゃ動揺して地蔵の様に動かなくなってしまうんだぞ!
「っと、俺だけってのも悪いから……ほい。これに足を入れてみ」
「ななな!ウチの足を?この液体の中に!?」
「うるせえ!いちいち変な言い方すんな!黙って入れろ!」
「黙って……いれ……んっ……ひゃう……!」
「……いちいち思わせぶりなリアクションしないと死んじゃう種族とかなんですかね!?」
くそう。なんだかちょっと変な気分になってくるじゃないか! だめだぞ!妙な事になったら怒られてしまうからな!
「ああ……これはなんだ……川の水よりも冷たくて……きもちーよー……」
言い方!あー、うるせえ口を塞いでやればマシになるだろう。
「ほれ、これでも食ってろ。このスプーンでこうして掬って食うんだぞ」
木の器に盛り上げたバニラアイスを手渡してやりますと、なんだか不思議そうな顔で眺めたり、クンカクンカと香りを嗅いだりしていましたが、無言で俺が同じものをパク付いているのを見て覚悟が決まったのか、エイヤッと口に運びました。
「ふわぁ……なぁんだあこれえ……甘くて冷たくて……口の中でとろけていくよお……」
食わせてもうるせえなコイツ!
「それはバニラアイスって食い物だぜ。俺達と仲良くすればそういうのをもっともっと色々食えちまうんだ!」
「くっ!そうやってお前は昨日から食べ物で我々を……っ!」
「女神様に顔向けできないとかいってたじゃねえか!」
とかなんとか、ぎゃあぎゃあと騒いでいると……。
「うるさいわねえ……何時だと思ってんのよ……っていうか、うっわあっつ!外あっつ!」
噂の女神様が起きてきました。確かに家の中は外よりもマシっていうか、エアコンが付いてたから快適だったと思いますよ。パンと子供たちの部屋だけな!
ナギサちゃんは子ども部屋をひとつ借りてそこで眠ったので、エアコンの恩恵に預かれていたと思うんですけどね、俺とカズがセットで押し込まれた俺ルームのエアコンに入れるアイスモルモルが確保出来なくてですね!
氷の魔石でなんとかしようと頑張ったんですが、なんか知らんけど無理で……俺とカズはムシムシとした部屋で男二人むさ苦しく床についたというわけなんですよ。
カズはアホなのでそれでも爆睡してましたけど、俺はこの通り暑さに負けてしまったわけで。昔ながらの小技で暑さをしのいでいるというわけなんですが……。
「あんたなにそれ?昭和の人みたい」
「失礼な例え方やめろ!」
「エルフ(仮)の子にまでさせちゃってさあ……暑いならリビングに入ってもらったら良かったじゃん」
「あ?アイスモルモル足らんのでは?」
「あんたの部屋の分が無いだけで、リビングやトイレにはちゃんと居るわよ?」
「なっ………!?」
「皆で使う共有スペースと男二人むさ苦しく寝るだけの部屋どちらを優先するかって言われたらわかるでしょうに。ばかねー、ほんとあんたばかねー」
……コイツは後でひどい目に合わせてやりましょう。
「……まあ、なんだ。バカもこう言ってるし、取り敢えず俺達の家に入って休んでくれ」
「ななな……お、おおお前の家に入って……? 休む……だと?」
(……何この子顔を赤らめてくねくねしてんの? アンタなんかしたの?汚らわしい!)
(してねえわ! なんか知らんけど変なんだよこの子)
はあ……なんか集落に行くのやめたくなってきたぞ……。
ユウ「つうかさあ……マジで言ってくれよなあ」
パン「何をよ?」
ユウ「エアコンだよ!エアコン!リビング冷えてるならそこで寝たのにさあ!」
パン「ばっかじゃないの?ていうか、ばっかじゃないの?」
ユウ「なっ!?」
パン「あんた昨夜風呂上がりになんて言ったか覚えてる?」
ユウ「昨夜……?」
フィー「カー!ジャングルで!キンッキンに冷えた部屋で!ビール!これね!」
パン「そうそう……そう言ってたわよ。あ、おはよフィーちゃん」
フィー「あれだけエアコンの恩恵に預かっていたのに忘れたのはユーちんの落ち度」
ユウ「ぐはぁ……言われてみればそうである……くそう……」
パン「カズクンと二人語り合いながら寝たいのかなって黙ってたのよ」
フィー「くふふ……ぶーちんが夜中やってきて部屋の前で嬉しそうになにか書いてたよ……」
ユウ「そ、そういうのは速やかに報告するようにしなさい!」
パン(ぶーちゃん……)




