第五〇七話 はなしあい
此方の世界に来てから一年と半分以上が過ぎた俺ですけれども。ユウですけれども。
そんな俺でもまだ伝えられていない地球の、日本の文化という物がありまして。そう、芸能文化です。いや……漫画やゲームという物は既に輸入してしまっているのですが、まあそれは俺の嗜好がそうさせてしまったといいますか、パンやフィーちゃん等が大いに悪いと責任転嫁したく思うわけなんですけれども!
おいといて。
ファンタジー世界と言えば歌じゃないっすか。酒場で鳴り響くリュートの音色!それにあわせて謳われるは英雄譚!良いですよね、無理に和訳されてひでーことになってる吟遊詩人の歌!
そう、この世界には歌声が!音楽が無いんだ!
……あったような気がするけど無いんだ!無い!無かったんだ!いいね?
いやあ、俺だって歌は好きですよ。アニソンは勿論のこと、一般的なJ-POPもそれなりに聴いていましたし、洋楽だってそれなりに聴いたもんですよ。
だもんで、それなりに音楽文化を、ミュージカルや舞台なんかがあってもいいよなあとは常々思ってはいましたとも。
ですけどねえ、音楽ばっかりはいけない。
好きなだけじゃどうしようもねえんですよ。チートじゃどうしようもねえし、畑違いの俺がぐぐってどうにか出来るもんじゃねえんすよ。
なんつうかああ言うのって才能とか必要じゃないっすか。そりゃね、俺だってヴォーカルなロイドが流行ったときには機材を揃えてそれなりに創作活動したりしましたけどね、そん時買った機材が埃をかぶってるあたりで察してくださいよ。
百歩譲って作曲部分はパクる……じゃないや、誰も知らないどこかの異世界の曲とすご~く良く似た物を拝借することもやぶさかではないんですけどね、歌のレッスンとか絶対ムリですよ。
だもんで、めんどくせーのもありまして、今まで放置してきた要素なんですけど、ここに来てカモが単体でやってきて葱を貰いに来たと言うかなんというか! 端的に言えばチャンスなんですわ。
なに? エルフ耳? うるせえ!そんなどうせ後でがっかりさせられるような伏線のようで伏線じゃなさそうなネタは後回しじゃい! ここは先にこの世界初の歌姫たちを囲いに行かせていただく!
「というわけで、君たち。ボクはこういうものですけれども、少しお話をきいてくれませんか?」
「こういうものってどういうものさ……」
ノリが悪いな! いや俺が悪いのか。
「悪い。ついいつものノリで……。君たちのその、遠くに連絡をする声っていうの? 凄く綺麗だなーって」
「き、キレイ?ウチらがかい?」
あーこれこれ。勘違い系フラグっていうの? キレイなのは声だぜー!ってアレですけど、まあ実際この子達も可愛いですからね。あながち間違いではないんですが。
けれど、ここで焦ってはいけません。将を射んと欲すれば先ず馬を射よとか誰かが言ってたじゃないっすか。彼女達は何処かに居るらしい仲間たちに連絡をしたわけですよ。
つまりはこの子達は斥候。
この子達を統べる存在が居る集落が何処かにあるはずなんです。全てはその存在を落とし、集落そのものと友好関係を結ばなければ始まらないと思うんですね。
「キレイな声の人に悪い人は居ない。そこでどうだろうか。君達ともっと仲良くなるために、君達の家族にも俺が作ったご飯を食べていただくことは出来ないだろうか」
(ユウ、あんたちょっとキモいわよ)
(はぁ?何いってんだ!これは交渉術ってものでなあ!)
(ん、ユーちんだめだよ、かーちんという者がありながら)
((フィーちゃん!?))
くっ……なんだか妙なところで動揺してしまったが、これはあくまでも作戦なんだ!横から妙なこと言わないでいただきたい!
「ユウさん……その、慣れないことはしないほうが……」
「うるさいですね……カズはちょっとこれを読んでてくださいね」
「ええ……いきなりなんすかこのメモ帳は……グハァ……」
ふふ。カズ特攻魔導具【中2の文集】だぜ。中でも痛々しい部分である『俺は毎朝神社に足を運び、日課である術を使う。これは俺の前世である陰陽道を極めし者がしていたと言われる鍛錬で―』の部分を抜き出した物だからな。効かないわけがない。
ちなみにナギサちゃんはお腹がいっぱいになったのか、横になっていびきをかいているので無害です。ふふ、かわいいゴリラも寝ていればただの美少女ですね……グハァ……
寝ていながらも反応して小石を当ててくるとは……まさかこの子【オートカウンター】持ちなのだろうか。
って、話が進まねえ!
エルフ(仮)といえば、俺の提案をなにやらざわざわと話し合っていましたが、またしても急に歌いだしました。集落の人達と話し合っているのでしょう、微かにですがやはり美しい歌声が聞こえてきます。
「……うん、うん。よし。ユウさんとかいったね。ウチらはあんたらを歓迎するよ」
「いいのかい? とんでもなく悪いやつかもしれないぜ?」
(なにその言ってみたいセリフ12位)
(うるせえな!ってかなんで俺のランキング把握してんだよ!)
「ふふ。あんたらの力量ならその気になればウチらなんて容易く捻り潰せるだろうに、ウチらはこうしてピンピンしている。
それに、うまい飯まで食わせてもらったんだ。これであんたらを疑ったら女神様に顔向けできないよ」
(だってさ。こんなくそみてえな世界なのに宗教的なもんはあるとこにはあるもんだね)
(クソみたいなとか言うな!それはあれよ。昔はあたしも顔を出したりしてたからね。
代々言い伝えて進行を続けている敬虔な子達だって居るとこには居るのよ)
居るとこにはね……自分で言ってて悲しくならないのかしら。
(うるさいわね!)
っと、聞こえてるんだった!
「そいつはありがたい!君達とは色々お話をしてみたいと思ってたからね」
「ああ、ウチらも皆に汚い飯を食わせたいって思ったから願ったりだよ」
きたねえって言うなよな!
……というわけで、我々探検隊は翌日集落に向かう約束を取り付け、ジャングルの夜は更けていくのでありました。
ユウ「そういえばフィーちゃんが途中から静かなんですがそれは」
パン「あ、ああ、あたし達を煽ってから静かよね」
ユウ「や、やめろよ!そんな初々しい態度とるな!」
パン「あんただって!も、もう!」
フィー「がっああああああ!なんで!すり抜ける!の!」
ユウ「……フィーちゃん?」
パン「もしもし今ので何連目?」
フィー「くふふ……聞いて驚け300連!爆死だよお!天井おくれよおお!水着着て来いよおおおお!」
パン「ふぃ、ふぃふぃふぃふぃふぃ……ふぃーちゃあああああああああん!」
ユウ(南無)




