第五〇六話 急に
なんだか微妙に気まずい空気が流れているが、気のせいだと思いたい。襲撃者であるエルフ達を差し置いて味方の俺がフレンドリーファイアで負傷しているせいだなんてそんな事は一切無いのだから。
「さて、君たちの質問についてだが……」
「いやその、お前それ平気なのか?血がダラダラと流れてて……見てるこちらが辛いぞ……」
……襲撃者に心配されてしまった。
「まあ、なにこれくらい平気さ。パンさん頼むわ」
「ったく。自分でやりなさいよねー……ピュリ・ヒーリング」
パアっと清らかな光が立ち上り俺が受けた傷が消えていく。毎回呪文が変わるんですが、それは面倒なので突っ込まないことにしています。
「なっ!? 傷が……消えた?」
「ああ、それはまあ、追々ね。それで君たちの質問についてだが……(本日2回め)」
回復術に驚いて言葉が出なくなっているせいか、今回は特に何も言われなかったので遠慮なく一気に説明させていただいた。
「つうわけで、俺達は上から落ちてきたんだけど、今夜安全に快適に寝るためにこのあたりをちょっと片付けさせてもらったんだよ」
「ちょっと……?」
エルフ嬢達はすごく何かを言いたそうな顔をしていましたが、口より先にお腹が動いたようです。
「「「「グウウ……」」」」
「くっ!お前たちがあまりにも美味そうで変な臭いを漂わせるから……っ!好きにしろ!」
何このクッころの親戚みたいなセリフ。好きにしろって言われたら、俺もう好きにしちゃうよ?
「好きにしろ……か。なるほど、それ相応の覚悟は有るようだな。良かろう!」
……というわけで、テンプレ通りカレーをお見舞いしてやりました。こういう流れの定番だろ? 本当に好きにしたらとんでもない神罰を食らってしまうからな!色んな意味で!
「くそっ!汚い見た目なのに香りには抗えない!」
「姉御!これ汚いけどめちゃくちゃうまいぞ!」
「一体どうやったらこんな汚い色で旨い飯が作れるんだ?」
「汚い飯ってうまいんだな!知らなかったぜ!」
「うひょー!汚いの最高!」
「汚い汚いうるせえな!」
そりゃまあ、アイヌのあの子なら間違いなく『オソマ!』とか言いそうな見た目をしてますけどねえ……そこまでテンプレに沿わなくてもいいだろうに。
暫くした後、一人あたり平均4杯も汚い飯を召し上がりやがったエルフさんたちは満足げに腹を擦り、まったりと食後のお茶を楽しんでいます。
「なんつか、これでわかってもらえたと思うけどさ。俺達はいたずらに君たちの縄張りを荒らしに来たわけじゃないんだ。帰り道を探しているだけだし、出来れば君たちと仲良くなりたいなとは思ってるけどさ、嫌ならさっさとどこかへ立ち去るよ」
流石にここまでの流れでこれ以上敵対することはないでしょう。カレーとお茶でもてなしましたし、きちんとこちらの事情も伝えました。
何より、あのゴ……ごほん!げふん!げふん!あそこまで力の差を見せつけられてしまったら敵対しようとは思わないはずです。
「そうだね。ていうかウチらも悪かったよ。ヨソモノが来ることは滅多にないからびっくりしちゃったのもあるんだ。どうか許してほしい」
「許すも何も、悪いのは俺達だからな。謝り合っていても仕方がないさ。どうか仲良くしてくれよ」
と、言いながら右手を差し出すと、なんやこいつという顔をされたので、仲直りの印に手を握り合うのだと伝えると、アホほど強い力で握られてちょっとつらかった。こいつらもゴリラ候補生か!
「……っと、仲間たちに連絡しないといけないや。いいかい?」
「いいも悪いも無いよ。異常を察知して仲間の元から飛び出してきたんだろう? そりゃ心配しているだろうさ。直ぐに安全を報告してやりなよ」
「ああ、そうさせてもらうよ。どうやらアンタ達は悪いもんじゃ無いみたいだしね」
あまりにもあっさりと信用されてしまっていて、チョロいと思う前に心配になってしまうんだけど、まあ、この世界ですからね。まだ純粋な悪い人間というのは発生していないので良いことにしましょう。
連絡というくらいだから、どうせシュシュっとニンジャのように森に溶け込んで消えるのだろう、そうしたら「なっ!?消えた……!?」とか言って驚いてやろうと思ってたんですが……思いがけない方向で驚かされてしまいました。
『ナーナナナナー♪ ルールララララー♪ ナナナー ルルルー♪ ナーナー ナールナー♪』
「「「「急に歌うよ!?」」」」
俺とパンとカズとフィーちゃんがハモりました。ナギサちゃんは一人何が起きたかわからないという顔をしていますが、君はそのままでいてほしい。
「ふう……これで皆に安全が伝わったはずさ……って、何驚いた顔をしているんだ?」
「驚いたっていうか、なんというか……今のは……?」
「ん? 皆に安全を伝えるって言っただろう? 遠くまで声を伝えるんだ。こうしないでどうするのさ」
「そうだよ。あれ?もしかしてアンタらは知らないのか? こうすると声が遠くまで届くんだぜ」
「ほーらー♪ どうだーい♪ いつもよりー 耳に届くだろーう♪」
ミュージカルだこれ! っつうか、何だこの子達……めっちゃいい声……いや、歌が……めっちゃ上手い!
これは、この世界に新しい風を吹かせる時が来たのかもしれないな!
パン「アンタが何考えてるかわかったわよ」
ユウ「はいストップ!それは次回のお楽しみってことで!」
パン「なによ!ていうか、最近のあんたおかしいわよ?一体誰に気を使ってるのよ!」
ユウ「まあそれは置いといて……フィーちゃんがお前のカードで課金しようとしているぞ」
パン「わーー!こらーフィーちゃん!」
フィー「うう……ピックアップ引けないままイベントが終わろうとしているのだ……」
ユウ「フィーちゃん。気持ちはわかる、わかるが……復刻水着が始まるから……」
パン「そ、そうよ!フィーちゃん今年から始めたから去年の持ってないでしょう?」
フィー「ん……そうだね、そうかあ。じゃあ、次回になってから回すね!」
パン「うん、うん!いい子ねーフィーちゃん!」
ユウ(ふう、なんとか先の展開を言われずに済んだぜ)
パン「って、結局課金されるんじゃないのー!」




