第五〇五話 邂逅
どうも!死ノ淵ヨリ還リシ者【ユウ】です! いやあ、フィーちゃんがこう言えってせがむもんで……。
てなわけで、美ゴ少女ナギサちゃんによる『カレー&BBQよくばりセット』を堪能している我々なんですけれども、どうも先程から妙な視線を感じるわけですわ。
(ねえ、ユウ)
(ああ、囲まれているな)
(流石お二人さんだね。数は5かい?)
(うわこのお肉トロトロだ)
(くふふ……テンプレ展開キタコレ)
一人を除き、全員が異変に気づいていました。ナギサちゃんが言う通り5体……いや、5人の何者か達が俺達を遠巻きに取り囲み、じっと息を潜めて様子を伺っているようです。
(今の所……襲ってくる様子はないわね)
(取り敢えず冷めちまうし、普通に食事を続けようぜ)
(そうだね。警戒はしたまま普段どおりを装うか)
(くっ!ムセたら飯粒が鼻の奥に!)
(暗殺とかだったら楽しいよね!くふー!)
……カズは一人でなにやってんだ……つか、フィーちゃんそれは楽しくねえよ!っつか、この世界にそんな悪い存在はまだ芽生えてないんじゃないかな……?
作戦通り……というわけでもないけれど、表面上は普段どおりを装いながらも、各自(カズ以外)周囲の警戒をしながらカレーを!肉を!NIKUをムッシャアアアアアと楽しんでいたところ……。
(ユウ、動いたわよ)
(うむ。ジワジワと近づいているな)
(あたいはいつでも動けるよ)
(くっ!どんどん妙なところに!くそ!とれねえ!)
(今宵の晩餐は珍客が多いようだな……くーっふっふっふ)
徐々に、徐々に。じわりじわりと四方から我々のキャンプに近づく謎の気配達……!
でもどうせあれでしょ? 涎をたらしたおっさんとかがやってきたとかそういういつものアレでしょ?もうね、ワンパターンだからね。こういう流れ、完璧にわかっちゃってるんですわ。
……と、来訪者達の動きがにわかに速くなった。
(くるわよ!)
(はいはいおでましおでまし)
(返り討ちだよ!)
(あがー!あがー!こふっこふっ!ふんす!ふんす!)
(我が糧としてくれよう)
「動くな!」
ザッ!と、地を踏み現れた5つの影はそれぞれが弓や槍を構え、こちらにそれらを向けている。
ゆっくりと、ゆっくりとそのままこちらに近づく5人。
パチリと音をたてて薪が爆ぜ、ごうっと焚き火の炎が強くなった瞬間、襲撃者達の姿が照らされ明らかとなった。
「「うっそだろ!?エルフじゃん!」」
「え!?エルフ!どこ?どこ?」
驚きハモったのは俺とパン。送れて間抜けな顔でキョロキョロしているのは言わずもがなカズ。ナギサちゃんは拳を握り、低く構えたまま襲撃者達を睨みつけ、フィーちゃんはなんかスマホいじってた。
「えるふ……? 何を言っている? それよりもだ!森を荒らし、妙なニオイを振りまいているのはお前達だな!」
「おいおい、パンさん!これもうエルフだよ!」
「ありえないわよ!だってエルフは……!」
「すげえ……ユウさん、マジモンだよお。フリーシアさんと同じ、長いお耳だよお!」
「耳……?ありゃ、ほんとだね。ホームセンターが言う通り、変わった耳をしているよ」
「くっそ!呼符使い切った!かくなる上は!」
眼の前に現れた5人乗襲撃者達、それはサラリと風に揺れる金色の髪に整った美貌。そして斜め上に長く伸びる耳を備えた……俺とカズが会いたくて会いたくて仕方がなかったエルフそのものの姿をしていた。
……ただし、全員が揃いも揃ってちびっ子……ナギサちゃんと変わらないくらいの見た目であるため、俺が握手をしたくて仕方がないオークさんに攫われる系エルフとはちょっと違う。
がっ、エルフ!なあ、パンさん一体これはどういう事なんだい?
「くっ!姉御!こいつらウチらの話全然聞いてないよ!」
「なに!?おい!お前ら!ウチらの話をちゃんと聞け!」
おっと!あまりにも想定外の事が起きてしまったがために話が耳に入ってなかった。
「ああ、悪い。あまりにも綺麗な耳が見えたもんでね。話を聞いてなかったよ」
「キレイだと!?姉御!こいつなんなの?ウチらの事キレイだって!」
「くっ……!惑わされるんじゃないよ!ウチらがそんな事いわれるわけがないんだからね!」
むっ!ムムッ!これはなんだかテンプレ展開の香り!
「そなたは美しい……」
「何イケボで言ってんのよ!ばっかじゃないの!」
パンさんのツッコミが早くて鋭い……!
「う、美しい……姉御お……こいつウチの事を美しいって……」
「いいや!こっちを見ていっていたよ!……じゃない!おい!本当に怒るぞ!ここには何をしにやってきた!」
ギリリっと弓を引き絞る音が響き渡る。参ったな、怒らせるつもりは無いんだが。
姉御と呼ばれている耳が長い美少女1号が弓を真っ直ぐに俺の方に向ける。おーおー怖い怖い!っつうかさ!これさ!こっちの世界に来て初めて人類と敵対してね?敵対勢力から武器を向けられてね!?
ぬっるーい世界に慣れきっちゃってたでしょ? もうね、一周回ってワクワクしてんの俺!
一体どうなってしまうんです? そう思っていると、頬の脇を鋭い風が通り過ぎたような感覚――遅れて頬に激しい熱を感じた。そしてそれよりもさらに遅れて頬を伝う何か汗のような感覚。
ん? 汗ばんじゃったかな? と、手で拭うとべっとりと血がついています。くっ!おのれ!美少女エルフの姉御め!俺に弓を!……と思ったが……エルフの姉御を見てみれば、地面にへたり込んでいて、その脇には砕け散った弓が転がっていた。
「人に武器を向けるのが許されるのは、自分が傷つけられる覚悟が有る奴だけだ。次は脅しじゃ済まないよ。まだ続けるかい?」
背後から聞こえる頼もしい声。振り返ると、片手で小石をお手玉しているナギサちゃんの姿があった。
姉御と呼ばれた人は勿論のこと、それの取り巻きと思われる美少女たちもすっかりと戦意を無くし、へなへなとその場にへたり込んでいる。
「あ……あああ……い、今一体何が……?」
「その気が無いならあたいはもう何もしないよ。こっちはまだ怪我ひとつ負わしちゃ居ないんだ。どこも痛くないだろう? ほら、あたい達に武器を向けた気概があんならシャキっとしな!」
「あ、ああ……そ、そうだな……」
かっけえ……!ナギサちゃんさんかっけえ!ダラダラと続くかと思われた謎勢力との邂逅が一瞬で終わっちまった!あっさりと無力化とかマジやべえ!
……でもさあ……。
「なあ、ナギサちゃん……。エルフの子達は怪我ひとつ負ってないけどさあ……ナギサシュートが掠った俺が結構可愛そうなことになってるんですけどお……」
「ああ、さっき飯食ってるときにさ、また妙な目であたいをみてただろ? その御礼だよ」
くっ!スルーされたと思ったのに遅れてご褒美くれるなんて!ナギサちゃん……恐ろしい子……ッ!
ユウ「一体何が起きているんです?」
パン「あたしのセリフよ!」
ユウ「いや、お前は理解しとけよ!なんで真・エルフがここに来て登場すんだよ!」
フィー「くふふ……その理由はね……」
ユウ・パン「知っているのか!ふぃーちゃん!」
フィー「ただ単にマンネリ解消のためのテコ入れなんじゃないかなって思うよ」
ユウ・パン「そんなこと言っちゃ駄目!」




