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第五〇三話 どうして……どうして……

「よーし!ここをキャンプ地とする!」


 良いですよね、キャンプ。もうすぐ沈んでやるぞと眠たげな光をはなつ太陽。ギャラギャラワムワムと得体の知れない鳴き声が聞こえてくるジャングル!ああ、最高だなあキャンプ!俺はサバイバルってのが大好きなんだ!


「キャンプ地とするじゃないっすよ!なんすか!ユウさんが居ながらこの惨状はなんすか!チートとかでババッとなんとかできるんじゃないんすか!?」


 ちっ うるせーな!


 というわけでしてね!いきなりですが、我々!事もあろうに遭難しています!そーなんです!って喧しいわ!


 時は遡ること3時間前……


「ひゃっほう!いやあ、バスもいいけどさ、この小さなクルマも悪くないね!」


 俺とフィーちゃんとパン、カズとナギサちゃんの5人は俺の愛車に揺られて一路養蜂場を目指していた。

 養蜂場までの道はあんまり良くはない(雰囲気を重視して未舗装路)ので、ガッタンゴットン揺れまくるような悪路なんだけど、四駆のこの車ならば走破は楽勝だ。


 しかしここで俺の想定外のこと……いや、俺の判断ミスと言えるんだろうな。兎に角予定にはないトラブルが発生したんだ。


 悪路を物ともしない車だけれども、中に乗っている人間はそうは行かず……。忘れていたが、今回のメンバーであるカズの野郎は乗り物にめっぽう弱い。


 何やら最近強くなったと豪語していたらしいのだが、喋ったら舌を噛みそうなこの悪路を前にそんな強がりは霧散してしまったようで、20分も走ったところで青い顔をしてあかん感じの汗をダラダラと流していた。


 そんなわけなので、結構な回数の休憩を挟むこととなり、予定では昼頃にはついていたはずの養蜂場に到着することが出来なかった。


 なので、しょうがなく広いところに車を止め、ピクニック感あふれるランチとなったわけなんだが……。

 ランチ自体はほのぼのとしていて、特に問題はなかった。問題はその後だ。


「しかし、ほんと(こいつ)は凄いね。あたいも何時か自分でこいつを持てる日が来るのかね?」


「なんだ、ナギサちゃん車欲しいのか。一般人にはまだまだ売り出さねえが、ナギサちゃんは他人じゃねえし、後で上げてもいいぞ。ああ、そうだな屋台とくっついたような車なんてどうだ?」


「うおおおお!ユウさんあんた最高だよ!遠慮なくおねだりしちゃうね!」


 なんて感じで盛り上がってさあ……


「なんならちょっと運転してみるか?」


 なんて口を滑らせてしまったんですよね。こっちの世界じゃ車は俺の息がかかった業者に使わせてるだけで、一般人の手にはまだ渡っていない(ウサギンバレー等は除く)


 なので、道路交通法なんてものは存在しないし、運転免許証なんてものもまだ存在していない。いずれそのあたりの整備をしてから民間にも普及させようと思ってはいるが、それはまだまだ先のお話だ。


 つまりは、この時点でナギサちゃんに運転させたところで何ら問題はないわけだ。はっはっは俺がルールだ!


 なんて軽い気持ちでナギサちゃんにハンドルを握らせたのがまずかった。


「えっと、こっちのがブレーキ……止まるやつだね。で、こっちを踏めば走るんだよ……な!」


 ガオオオ!と普段聞かない鳴き声を上げるエンジン。何ということでしょう。このゴリラの娘は思いっきりアクセルを踏み込んだではありませんか。

 

 魔導車ってのは形や用途が自動車と似ているだけで、挙動は全然別物なんですよ。だって俺、自動車の仕組みとかちゃんと知らねえし。


 なので、アクセルを一気に踏み込んだ時、どうなるかといえば……


「ヒャッハ!!すっげえええええ!!!!周りの景色が線に見えるよ!」


 魔術的な仕組みでいきなり最高速で弾丸のようにすっ飛んでしまうわけで!


「うがあああああああ!!ジィイイイイイイイイ!!!Gガアアアアアアア!!!!」


「ちょっとおおおおおおおユウウウウウウウウウ!!!止めなさいよおおおおおおおお!」


「ナギサアアアアアアアサアアアアアアアうぶおあああああぎぼぢばるでぃいいいいいいい!!」


「ちょ、ちょっとおおおおおおおおゆうううううちいいいいいいんんんんカズがああああああああ!」


 はは、対ショック魔術みたいな事故対策はきっちりとしてるんですけどね、Gに対抗するような魔術はかけられてないんすわ。あれっすわ。この時の状況は打ち上げ中のロケットの中って感じ。


 まるで少女のように可愛らしい笑顔を浮かべ、ハンドルをぐりんぐりんと回すゴリラの娘さんを止めるのは助手席に座る俺の役割だと理解はしてますけどね、止められねーんだGがすごくてよ。うごけねーんだ。


 彼女が如何に運転するのに夢中になっているのかは、ゴリラ呼ばわりを何度かしている俺が無傷なことから伺えることでしょう。


 いやあ、この車さあ……頑丈に作っといてよかったよ。


「うおおおおお!!!!なんか開けてきたね!あっはっは!この速度!まるで飛んでるみたいだよ!」


 ふわりとした感触――瞬間、下腹部に感じる不快感!


「飛んでるんじゃねえええええ!!落ちてんだよこれえええええ!」


「「「ぎーーにゃあああああああ!!!」」」


 てなわけで、我々一同は車ごと谷底にダイブしましてね!アイキャンフライじゃねえよ!できねつってんだろ!車は地を走るの!飛べないの!


 様々な防御魔術のお蔭でなんとかみんな無傷でしたけどね、我らが知るルートははるか崖の上。そう、今我々が居るのは未知の場所!バナナのようなものを実らせた木々が鬱蒼と茂るジャングル!


 いくら四駆とはいえ、こんな場所は走れません。満身創痍で車から這い出した我々は、明らかに登坂不可能であろう、()()()を見上げ、はあああっとため息ひとつ。


 とりあえず歩いてみっかと、一人元気にカラカラと笑うのはゴリラの娘さん。ドンキーなコングが居そうないい具合のジャングルっすからね。元気が出るのは仕方がないことでしょう。


「いくら故郷に戻ったからって元気出すぎですよ!ナギサさんぐぼああ!?」


 ……俺の思考をそのまま声に出したかのように要らんことを言うカズ。……何故か俺まで殴られてしまったが、まあそこはしょうがない。


 取り敢えず元のルートに戻る努力をしましょうか、と歩くこと3時間。カズは既に干物のようになりナギサちゃんに背負われ、フィーちゃんは俺の背中に張り付いてうごかなくなっています。パンは……死んだ魚のような目をしてるな……がんばれ。


「みんな限界か……」


「あたいはまだまだ元気だよ!」


「ごほんごほん!みんな限界のようだな!これ以上の移動は危険だ」


「あたいは後10時間はかるいよ!」


「ごほん!ごほん!ごほん!みんな限界のようだし、今日はここまでとしよう!」


 本日中の帰還は無理と判断した我々は、未知のジャングルエリアで野営をすることを決意したのでありました。


 ………いやあ、どうしてこうなった。

 ユウ「つかさあ、ケータイ使えねーのは兎も角さあ、パンさんならいろいろとやりようがあるっしょ」

 パン「あんたもカズクンみたいなこと言うのねー」

 ユウ「いやあ、突っ込まれる前に確認しとこうと思って」

 パン「……誰によ……。ううん、そりゃね? 子どもたちやぶーちゃんと念話で連絡することは出来るし、何ならみんな連れて崖の上に転移することもできるわよ」


 ユウ「ですよねー」

 パン「なのに敢えてしないのはなんでかわかる?」

 ユウ「その方がダラダラ話を伸ばせて便利だからでは?」

 パン「一体何の話よ! まあ、ある意味正解か。ほら、こういうトラブルってさ新しい何かを呼ぶじゃない」

 ユウ「たしかに。っていうかここの創造神ならどこに何が有るかわからねえもんなの?」

 パン「ふふ。あたしよ? 知らない事だらけよ?今までイレギュラーが起きなかったことって有る?」

 ユウ「すげえ説得力だ。女神としてはクソだが、説得力だけは半端ねえ……」

 パン「くっ!……まあ、というわけでさ。ここでもなにか起こるかな?ってワクワクしてんの!」

 ユウ「変なフラグ立ててんじゃねえ!」

 ブー「と、いいつつも、ワクワクとする無邪気な表情はちょっと可愛いと思うユウなのであった」

 パン・ユウ「「ほんとどこでも現れるよな!?」」

 

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