第五百一話 結局やることはかわんねーわけで
はぁ……。
いやあ、ユウなんですけれどもね。久々に俺なんですけれども、なんかもう良くない?って感じがするじゃないですか。経済を始めとした様々な基盤が出来上がってさ、後はもうほっとけば勝手に成長するんじゃね?
そんな感じじゃないっすか。もうゴールしてよくね?って思うんですが、パンさんはまだ駄目だとおっしゃるんです。
なんでって、その理由が酷いぞ。
『だってまだ2年経ってないじゃないの。契約した最低期日まで働いてもらわないと困るわよ』
ですって。
知らねえよおおおお。もうやることねえじゃねえかよおおおって、朝からグズってたんですけど、そんなタイミングでケータイが鳴りましたよ。
液晶画面を見ると『カズ』と書いてあります。
なんかノリだけでカズにぶっちゃけてしまって、こちらの世界に残してしまったわけでして。そのお詫びってわけじゃないけど、コチラ側として共に働いてもらうため、ヤツには最新のケータイをプレゼントしたってわけです。
俺のチートスマホと違ってあっちの世界とのやり取りは出来ませんけどね、こちらの世界の最新型ですよ? なんとメールが送れちまうんだ!素晴らしいね。
奴がこちらに残ると決意をしてからもう一ヶ月近く経つんですかね。
いやあ、あいつほんと変わったわ。この間遊びに行ったらさ、俺が押し付けるようにしてプレゼントしたアパート1階部分の店舗でキビキビ裏方やってんの。
いつの間にか雇っていたウサ族のウェイトレス達に囲まれて幸せそうな顔をしててちょっと気分が悪かったけど、ナギサちゃんにがっつり殴られてたからまあ、トントンだな。ハァ……あいつほんと爆発すればいいのに。
っと、カズから着信だったんだ。めんどくせえけど出てやるか。
「ほいよ、俺ちゃんですよ」
『だ~~~~!!ようやく出た!俺が我慢強くなかったらとっくに切ってましたよ!48回!わかりますか? 呼び出し音がなった数ですよ!』
「そんなの数えてたの……ちょっと引くわ……」
『ちょ……じゃなくて、まあいいや。あのですね、ナギサさんが前にした約束の件で話が有るみたいなんですよ』
「前の……? ああ、アレかあ。なら自分で電話すりゃいいのになんでまたカズなんかに」
『カズなんかって! ナギサさん忙しいんですよ。今も必死に厨房で……あーはーい!今ユウさんと電話してて……はいはい!今行きますから!……ってわけで、忙しいんで、夜になったら店に来てくださいって要件だけ!じゃ!』
うーむ。カズらしくないまともさだ……。
これが少し前のカズだったら店の手伝いなんてナチュラルにバックレて部屋でダラダラしてたはずなのに……。
この世界がそうさせたのか、ナギサちゃんがそうさせたのか……こりゃ帰ったらカズの両親は泣いて喜ぶだろうな。
……
…
ってなわけで、夜になったので『ナギサ亭』にやってまいりました。
『本体はあくまでも屋台だよ!』
と、可愛らしく胸を張るナギサちゃんが営業するファーストフード店で、クレープやハンバーガーを始めとした様々な手軽に食べられるメニューがドカンと受けて、今や行列ができるお店になっているのだ。
そんなナギサ亭は18時にお店を締めます。なんでって、夜にガッツリ食うようなラインナップじゃないし、お酒を出しているわけでもないから採算と従業員を気遣った結果だということで、中々見どころがある考え方をしていると関心しますわ。
しっかりと夕食を済ませ、店についたのは19時を少し過ぎた頃。普段は明かりが消えている店舗ですが、奥の方だけほんのりと照明が灯っていて、いかにも誰か待ってますよという雰囲気ですね。
「待たせたな!」
表の扉はしまっているため、裏の従業員用入り口から登場すると、ほんとに待ってましたというような顔でナギサちゃんが駆け寄ってきた。
「ほんと待ってたんだよ!いやまあ、アタイも忙しかったからだけどさ!そろそろ従業員も慣れたし、例の約束!な!」
いやあぶっちゃけ例の約束と言われても、すっかり何のことだか忘れてしまっているんですが、それを口に出すとカズの如く躾けられてしまいそうなのでなんとか情報を引き出してみましょう。
「ああ、あの約束な。うーんと、一応聞くけど、ほんとにアレでいいの?」
「アレでいいのって、ユウさんが言い出したんじゃないか……。いやさ、沢山貰った野菜でね、腹にたまる新メニューがたくさんできたんだけど、やっぱり甘いメニューを増やしたくてね」
ううん、何かレシピでも教える約束をしたんだろうか。甘いメニュー……何かナギサちゃんが喜ぶようなメニューがあったかな……。
――待て待て。焦るな。もう少し正解の確率を上げてから発言をすべきだ。万が一外してしまったら……俺の未来はカズだ!
「なるほどな。それで、あれからナギサちゃんは思いついたりしたのかな?」
「思いつくっていうか……まあ、普通にパンケーキの素材として使うだろうし、新メニューとしてはそうだなあ、うーん試してみてからかなって思ってるけど」
素材……パンケーキの素材……? 一通りは揃ってるはずだが、変わったことにでも使おうとしてるのかな?新メニューにするため試す……既存の使い方ではない、新たな使い方……。
ははーん、わかったぞ!なんて俺はジーニアスなんだ!
「そうだな、マリーノに行くのはナギサちゃんとカズでいいのかな?」
「そうだね。ホームセンターも一緒に来て貰う予定さ。な?」
「うっす!俺はナギサさんと共にありますよ!」
ほっ。どうやら俺が考えているので正解のようだ。つうかなによカズ、なにかの騎士みたいなこと言っちゃってさ。
「そっかそっか。ま、いいだろう。知り合いの漁師に頼んで良いようにしてやるよ」
「漁……師……?」
「ああ、昆布だろ? パンケーキにどう使うかは知らんが、凄いことになりそうぐべらっ!?」
「ユウさん、あんたやっぱりあたいとの約束すっかり忘れてたね!!」
ツッコミにしては強烈過ぎる一撃を二の腕に喰らい、盛大に吹き飛ばされる。
壁に叩きつけられる瞬間、懐かしきクロベエの顔が頭に浮かび、
(ああ、蜂蜜の約束をしていたんだった)
と、思い出したのであった。
パン「あんたほんとろくでもないわね!ていうか、クロベエちゃん死んでないからね!」
ユウ「いやあ……ついって、この反省会コーナーまだ続けるの? もういらなくね?」
パン「そうなんだけど、無きゃないでなんか寂しいなあって」
ユウ「まあ、言われてみればそうだけどもさ」
パン「で、この流れは何? また懲りずに旅に行くの?」
ユウ「しょうがないじゃん。そうでもしないとネタが続かないもの」
パン「そういう事言っちゃ駄目!」




