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第五百話 カズくんネタばらしをされる

「お前はもうワイらの家族や。何時でも手伝いに来てええんやぞ」


「うっす!兄貴達もお元気で!」


 なんて会話をグズグズに泣きながら交わし、ナギサさんがそれを見て貰い泣きをしていた――なんて感動的な別れの朝から2週間が経った。


 ナギサさんは俺がアホほど頂いてしまった野菜を嬉々として保存庫――ユウさんから頂いてしまった丸々ひと部屋を使った巨大な冷蔵庫に入れ、それを使ったメニューを次々に考案し、クレープ屋さんという名の移動ファーストフード店に精を出している。


 余りにも売れ行きが良いため、近々アパートの1階を店舗に改装して商売をさせるのだとユウさんが張り切っているけれど、ナギサさんは各地を巡る移動屋台をするのが夢らしいので、ある程度資金が貯まったらその店舗は誰かを雇って代わりに営業させる形になるのかも知れないな。


 その辺りはナギサさんとユウさんとの間でなにか話し合いをしていたから俺にゃどうなるかわかんねーけど。


 さて、そんな俺はと言えば……今日はなんとユウさんのおうちにお呼ばれしている。よくわからんが


「キリがいいとこまで来たし、ちょっとした食事会でもしようや」


 なんて気軽な具合にお呼ばれしたんだ。"キリがいい"ってのがイマイチ意味がわからなかったけれど、ユウさんち行くの初めてだったから、言われたときはすげーワクワクしたな。


 ……しかしビックリだよな。ユーサンがユウさんだったなんてさ。いや、こうして口に出すと馬鹿らしいほどまんまのネーミングなんだけど、それを突っ込んだら


「いやいやお前がもう少しINT高けりゃ気づいてたんだからな? 周りのモブ共がユウさんユウさんって遠慮なく言いやがるからヒヤヒヤしたけどさ、勝手にお前勘違いしてんだもん。お前のアホさに救われたわ」


 と、笑いながら言われた。いやまあ、確かに俺も変な勘違いしてたよなあ……。思い込みがそうさせたんだと思うから、あまり俺が馬鹿みたいに言うのは辞めてほしい。INT?ってのがわかんねーけど、どうせなんかのパラメーターなんだろ?


 そもそもこっちの世界にまさかユウさんまで来てるとは思わねえしさあ。ああ、今思えば『サスケ』って言う偽名を使ってたもんなあ。


 はあ、こうして知ってしまえばユウさんならやりかねないなっていう文化が結構輸入されてるし、なんつうかほんと思い込みってダメだな。



 ユウさんのおうちは塩のダンジョンからほど近い所にある交易場……という名の一つの街になっているような場所の片隅にあった。


 平屋ながらも結構大きなおうちで、


「地球の実家よりでかいんじゃないっすか?」


 と、言ったら何か複雑な顔をしてたっけな。


 なんでこんなに広い家に住んでいるかって、そりゃアホほど居る家族のせいなんだろうな。


 奥さんのパンさんに、娘さんのルーちゃん、ナーちゃん、スーちゃん、ソフィアちゃん、ティーラちゃん、フィーちゃん。それに、しばしば遊びに来るというレンゲちゃんやブーちゃんさんのお部屋まで用意されているというのだから頷ける。


 しかし、不思議なのはユウさんの見た目がこの世界にくる前に、最後に会ったときとまったく変わらないのに結構大きな娘さんが居るところだ。


 どう考えても10歳は超えて居るであろう娘さんが何人か居るあたり、此方に来てから結構な年数が経ってるんだろうなって思うんだけど、その辺りを質問したところ、


「今日はその話をするため呼んだんだ。ま、詳しくは後でな」


 と、言われてしまった。


 なんだかちょっとモヤモヤとしたけれど、直ぐにそれを忘れるかのように楽しい夕食会が始まり、娘さん達とゲームをしたり、ユウさんや奥さんとしょうも無い話しをしているうち、あっという間に夜が更けていった。


「さて、そろそろ良いかな。まあ、家族みんな知ってることだし、皆の前で話しても良かったが、こう言うのは雰囲気が大事だからな」


 二人だけになったリビングでユウさんがそんな事を言う。手には琥珀色をしたお酒が注がれたグラスを持っていて、ユウさんのクセに大人っぽくて腹立たしいな。


「まず……な。俺がこの世界に来た理由だが、パン居るだろ?」


「はい、ユウさんのくせにスゲー美人の奥さんですよね」


「うるせえやい! あいつな、実は女神なんだよ」


「ブーーー!」


「わ、きたねえ!」


 思わず噴き出してしまった。真面目な顔してのろけよるわ、この人。


「どうせバカカズの事だ、俺がのろけて女神だとか言ってるんだと思ったんだろ?」


「ちがうんすか?」


「ちゃうねん、あいつガチやねん。残念ながらガチ女神やねん……」


 ユウさんは俺をよく騙すが、嘘はつかないからな。なんだか矛盾しているけど、真面目な話しをしているとき、大事なやり取りをする時に決して裏切らないのがユウさんだ。


 そんなユウさんがいうには、女神であるパンさんに頼まれ、この世界を生まれ変わらせるために召喚されたという。なんだよ! やっぱりユウさん、ガチの勇者枠かよ!


「この世界は勇者とか魔王とか言う前の状態だからな。お前が好きな弥生時代より少しマシって程度だ」


 好きって言うか、歴史のテストでそこだけ点数良かっただけなんですけどね……だって覚えやすいし……。


 曰く、そんな状態の世界に様々な文化をもたらしてまともにして欲しいと、人間族と魔族それぞれに文化を持たせて欲しい、そう言われたんだそうだ。


「そんでまあ、今日まで一年と半分くらいか?頑張ってここまで来たってわけよ」


「ブーーー!」


「だから汚え!今の話し、どこに噴く要素があんだよ!」


「ちょ、ちょっと待って下さいよ。一年でここまで発展するんすか? それに……一年て、あの、お子さん達は?」


「ああ、それはまあ……色々あって……はあ、しゃあねえ話すか……」


 ……驚いた。


 何という幸運な……いや、ご都合展開なんだろう?

 

 そりゃ、半分以上はユウさんの行動による結果がもたらしたことなんだろうけど、それを加速させる存在、ウサ族を初めとした色んな意味でチートな方々との出逢い。


 あれかな、女神様ってそう言う人を狙ってさらったりしてるのかな? 運命運がつよい人、みたいな? いや、知らんけどさ。


 そして何より驚いたのが、お子さん達の作り方だ。


「はあ?ユウさんダンジョン孕ませたんすか?」


「ちゃうわぼけなす!」


 ……失言だった。殴られた二の腕がすごくいたい……ナギサさんとタメ張るレベルのパワーだったぜ……やるなユウさん……。


 いやしかし驚いたな。ルーちゃん達がまさかそんな凄まじい存在だったなんて。


「いうても、俺とパンの子供にゃかわりねえからな。まあ、アイツと夫婦ってのはあんまりにもアレだが、あの子達は自慢の娘達さ」


 そう、話すユウさんの笑顔は眩しくて、何処かちょっと遠くの人のように見えた。


 ……くそが!そうは言ってるけど、ぜってえパンさんの事好きだろうがよ!パンさんだってなんかまんざらでもねえ顔してるの知ってるんだぞ!


 ユウさんだって知らぬわけではあるまい!古い友人とフードコートなんかでばったりあってさ、奥さんを紹介されたときの空気よ。


 なんだかよそ行きの態度で夫婦のやりとりをしてはいるが、その奥に潜む甘々な空気! その空気は俺やユウさんにとっては致死性の物質で、それを敏感に感じ取ってしまうがためにじわじわといたたまれない感じになってさ、早々に退散する羽目になるアレだ!


 あんたらは十二分にそんな空気をだしてやがるからな!


「……カズくん? 何か考えているのかい? 今度は左かい?左がさみしいのかい?」


「ちょ、や、辞めて下さいよ拳握るの!」


 ……ユウさんめ、ナギサさんばりの勘の良さだ。油断出来ねえな。


 そして、その他にもレンゲちゃんが実は転生者である事、彼女にも時折仕事を手伝って貰っているという事を聞かされた。今日も泊まりに来ていたマルリちゃんもそうなのかときいたが、彼女は普通に馴染んでるだけで違うらしい……。


 レンゲちゃんは恐らく日本では病弱な女の子とかだったんだろうな。此方の世界に来て自由に動く身体が嬉しくてあんな立派な村を作るまでになったんだろう。いい話や。


「それでな、カズ。俺が正体を現してお前にこんな話をしたのには理由があるんだ」


「でしょうね。ユウさんがただネタばらしをするだけに俺を呼ぶとは思えないし」


「訓練されてやがる。ふふ、いやな。お前にも亀……ああ、レンゲのあだ名な。亀みたいに俺の手伝いをして欲しいんだよ」


「手伝い……ですか?」


「ああ、俺や亀、そしてお前には日本の知識という掛け替えのない宝物がある。それを差し障りがないレベルでこの世界に分け与えていく、その手伝いを頼みたい」


 この世界に俺は大きな恩がある。

 

 ダメダメだったこの俺を、まだまだだけれども、以前と比べりゃぐっと活動的にしてくれた、大人にしてくれたこの世界に恩返しをしたい。


 ユウさんのこの提案は凄く嬉しいな。


「はい!わかりました!俺で良ければいくらでも手伝いますよ!」


「うし!言質は取ったからな!まあ、つってもいつもってわけじゃねえ。俺が頼みたいときに声かけるからさ、よろしくな、カズ!」


「うっす!改めてよろしくお願いしますね、ユウさん!」


 硬く握手を交わす俺とユウさん。なんだか俺の異世界転移は今日この日から改めてスタートするような気がするな!


 ……そうだ、ついでだし気になっていたことを聞いてみよう。


「あの、奥さんが女神様だって言う事で、一つ聞きたいことがあるんですが」


「別にガチの妻ってわけじゃねえが……まあ、何だ、言ってみろ」


「既にユウさんが来てるわけじゃないっすか? なんで俺、こっちの世界に呼ばれたんですかね?」


「ああ、そりゃお前あれだよ。俺が暇つぶしにな? 丹精込めて作ったこの世界のテストプレイをして貰おうと暇そうなお前を……かずくん?」


 暇潰し……だと……?


「ほ、ほら!適当な奴呼んで世界に要らん事されたくないじゃん? だから無害なの確定なお前を呼んでだな……かずくん、ほら、座ろう?ね?」


「ユウさん……。思えば……サスケさんとしてちょいちょい俺の前に現れていましたが……それも全て……」


「やめろ!カズ!それ以上いけない!ぐわー!ステータス差を無視したパワーで間接決めるのやめろ!」


 ……まったく。なんてユウさんらしい理由で俺を召喚しやがったんだ……。


 でもま、感謝してることには変わりは無いっすよ、ユウさん。明日からは手足の様に働きますとも。


 ――だから今夜だけはこのままで……。


「こらカズ!思わせぶりな事考えながら関節はまずい!やめろーーーー!!!」


 そしてユウさんと俺、二人で過す異世界の夜はゆっくりゆっくりと更けていくのでありました……。

パン「ぶーちゃんが捗った捗った言ってたけど夕べ何やってたの?」

ユウ「何って、ネタばらしをしただけ……いや、カズに関節技をしかけられてたな……」

パン「ふうん? どれどれ……」

ユウ「あ、こら!男同士の会話を見るのは辞めなさい!ってか録画してたんかよ!」

パン「ああ……これはこれは……薄くなりますわ

  『――だから今夜だけはこのままで……。』

   乙女ゲーかなにかかよ!って感じのセリフ言ってますもん」

ユウ「地の文じゃねえかそれ!いやまあ、俺も何故かそれは聞えてしまったんだが……」

ブー「ううん?勿論そこも捗ったけど、私が楽しかったのは別の所よ?」

パン・ユウ「「えっ!?」」

ブー「えっとね『まあ、アイツと夫婦ってのはあんまりにもアレだが』とかユウくんが照れながら言ってる辺り、カズくんの心の中の声よ」

パン「……どれどれ……」

ユウ「どうせろくでもないこと考えてたんだろうが……」

パン・ユウ「……」

ぶー「カズくんやっぱり良い子ねえ。お姉ちゃん、特別目にかけて上げるわあ」

パン・ユウ(赤くなって声も出せない)



多分次回から新章です。主人公戻ります。多分……。

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