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第四百九十七話 カズ!凶弾に散る!(再)

 ユーサンがくれたアイテムボックスのおかげでアレだけあったジャモの山はあっという間に消え去りまして。


 後はざっくりとティーラちゃんが魔術で後片付けをしてくれたもんだから、俺の仕事はもう無くなってしまいましたわ。


 眼の前に有るのは、ついこの間見たのと変わらぬ何も植えられていない畑。ゲームでもここまで早く進行しねーっつーの。


「ま、第1回目としては大成功だな」


「へ?」


「言っただろ?この畑はお前のもんだって。今後もこの畑で育った野菜は自動的にお前の物となる」


「ちょ、ちょちょちょ、まってくれ!この袋の中にこんだけ野菜あるってのに、また2~3日でチャージされるってあふれちゃうよおお!」


「ふふ」


「ふふじゃなくてですねえ!」


「ああ、すまん。今回やたらと収穫まで早かったのはお前に体験してもらいたかったからだよ。普段はもっとのんびりとしたペース……毎月収穫出来るような感じだから安心してほしい」


 それでも十分速い気がするんですけど……。


「いやいや、余りますって!それに畑の管理はどうするんですか? そりゃ、ここは居心地がいいですけどね、一応ナギサさんとの旅の途中ですし、俺には帰る所が……」


「わがままなやつだなあ。まあ、そういう事なら仕方ない。管理はタルット達に委託してさ、普段は給料代わりにタルット達の好きにしてもらったらいい。もちろん、4ヶ月おきにお前たちの分ははじまりの街に送ってもらうようにするから、これからはなんもせんでも新鮮な野菜に困らなくなるぞ」


「そ、それはゴリラが喜ぶな。キュウリとバナナ似てるし、両手で持って歓喜の踊りを……グフッ……」


「お、おい!カズ?カズ?やべえ!ティーラ!回復だ!カズの下腹部にヤバい魚が刺さってる!」


「う、うん!お父さん!」


「……これは湖に住むソードフィッシュ……これを投げた気配ははるか彼方湖の上……ナギサちゃんかあ……やるなあ、あの子……カズは……暫く目を覚ましそうにねえか。

 ティーラ。とりあえずカズはタルット屋敷に運ぶからさ、後は任せたぞ」


「うん!」


 ……

 …

 

「うう……ここは……?」


 チャポチャポと水音が聞こえる。目を開けてその正体を探ろうとするが、西日が眩しくてうまく目を開けられない。


 起き上がろうとしたけれど、収穫が祟っているのか筋肉痛が酷くて起き上がれない。それでもなんとか音の正体を突き止めようと薄めを開けると、サラリと揺れる長い髪の華奢な体の持ち主が洗面器か何かに布を浸し、絞っているようであると判明した。


 これは……看病イベントというやつなのでは?


 恐らく俺がここで横になっているのはゴリ……ナギサさんの凶弾に倒れた事が原因だろうな。俺の口が滑った瞬間、大事なところに激痛が走り、気づけばここに寝ていたのだから。


 と、音を立てていた主が立ち上がったぞ。ふふ、さっきまで一緒に居たのはティーラちゃん。彼女もまたキレイな長髪だった。


 意識が完全に途絶える前にユーサンの声が少し聞こえてたんだ。


『ティーラ後は頼む』


 つまりは、間違いなくこれは!これは!


「おっ、目ぇ覚めたようやな。良かった良かった。折角の日に災難やったなあ」


「やっぱタルットじゃねえか!」


「わ!びっくりした!いきなり大声だしたらあかんよ? まだ少し休んでないとね?」


「あ、はい……」


 くっ! タルットに乗せられた手ぬぐいがヒンヤリとして居て妙に気持ちいのが悔しい!


 畜生、ちょっぴり期待したのにやっぱタルットかよ!つうか、ロン毛のタルットとか紛らわしいからやめろよほんと!


 ああ、もう、なんか力が抜けたわ……くっ 午後の爽やかな風が相まって眠気が……!


 ……

 …


 はっ!


 目を開けるとすっかり暗くなっていて、ガッツリと二度寝?をしてしまったことを悟る。体はすっかり楽になっていて、起き上がっても痛みは一切残っていなかった。


 倒れた後にティーラちゃんがかけてくれたのであろう回復術がジワジワと効いたのか、異世界だからかはわからんが、筋肉痛まですうっと治っているのはありがたいな。


 とりあえず、と部屋の明かりをつけると着替えが置いてあり、其の傍らには『さっさと風呂入って飯食いに来るんやで』と、メモが置かれていた。


 タルットのくせに妙な所で気が利いてるんだよなあ……。


 というわけで、メモに従うわけじゃないけれど、サッパリしたかったので風呂に向かい、本日の汗を流す。


 ヒゲミミ温泉は最高だったけど、ここの素朴なお風呂も中々に良いよな。銭湯感っていうの? ご丁寧に壁には富士山みたいな山と、それの前で踊るタルっとの絵が書いてあるしさ……。


 最初見た時はなんだコレってちょっと引いたけど、何日か居るうち、一周回って気に入ってしまったわ。


 ゴシゴシと全身を洗い、たっぷりと張られたちょっと熱めの風呂に浸かると自然とうめき声が出る……が、これが効くんだ。


「ゔぇえええ……あ゛あ゛……いぎでるなあ゛~」


 湯の中で腕や腿を揉みほぐすと、すうっと疲れが抜けていくようだ……まあ、さっきまでのお昼寝で普段より体は大分軽いけどな。


 と、のんびりと浸かっていると浴場の扉がガラリと開く。


「いつまで入っとるんや? 皆待っとるよ? はよ食堂にこいや!」


「あっ! すんません!今行きますわ!」


 そうだ、ここの夕食は皆で食べる決まりがあったんだ。油断して待たせてしまったみたいで申し訳ない……。


 慌てて着替えようとする俺に『ま、着替えくらいは待ったるから慌てずにな?』と、優しく声をかけてくれるタルットに頭を下げ、裏返しの後ろ前に履いてしまったパンツを履き直すのであった。

ユウ「いやあ、カズいいよね。勝手に勘違いしてくれるんだもの」

パン「あんたも酷いわよね。カズクンがうっすら聞いてるのに気づいてわざわざ言うんだもの」

ユウ「俺はただ単に、畑の後始末を頼んだだけだぞ。俺がカズを担いで行く以上しかたあるまい」

パン「まったくその通りだけど、ロン毛のタルットを配置したのはわざとでしょ?」

ユウ「あんな便利なトラップが居る以上使わん理由はあるまい」

パン「わかりみがあるから腹が立つわ」

ユウ(……帰ったようだな?)

パン(ヤツ? う、うん……気配はないわね)

ユウ(あいつ、妙に俺とお前の距離を近づけさせようと画策してるからな)

パン(そ、そうね……全くひどい話よ!)

ブー(とかいいつつも、満更でもないリーちゃんなのであった)

ユウ・パン「……」

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