第四百九十五話 カズクンさん収穫の喜び
なんといいますか、これでも爺ちゃんが畑やってるもんで、眼の前に広がるこの光景が異常だっていうのは俺でもわかるんですよ。
この際だから昨日の今日で実りまくってるのは置いておくけどさ、もうすげえよこれ。どんだけあるの?学校の校庭にみっちりと野菜が育ってるのを想像してほしい。
でさあ、キュウリとトマトさあ……可愛そうになるくらいすげー実ってるのね。でね、これは俺でもちゃんと知ってるんだけどね? キュウリやトマトってさ、支柱なりネットなりがないと駄目じゃん?
馬鹿にすんなよ、これでも農家の孫じゃい。トマトはともかく、キュウリなんてネットに這わせないときっととんでもないことになるのは分かってんだよ。
だからさ、恐らく今日はその作業なんだろうなって思ってたんだよ。
ところがどうだ。
眼の前に生えている植物、俺はアレをキュウリやトマトと一応呼んで入るが認めねえぞ。
そのどちらもさあ……酷くたくましい茎というか、幹を、俺の腕くらいは有る幹をどっしりと地におろしてさあ……信じられない量の実をならせているんだよなあ……。
タルット達のキュウリ畑をちらっと見たときさ、一瞬妙な違和感があったんだけど、その頃はまだキュリ畑の記憶が曖昧だったしさ、じっくり見たわけじゃねえから違和感に気づけなかったけどさ、なんかこう最近冴えてきている頭ならわかるぜ。
これは異常だ。
……異常なのはまあ、この際置いておこう。問題は、ユーサンが頭がオカシイことを言っている事だ。
「だからよ、今日はこれ全部収穫しちまってさ、ナギサちゃんのお土産として全部お前がもってくんだぞ」
「だから無理だって言ってんでしょうが!」
「無理もなにもねえわ。お前はこの畑を耕し、野菜を作った。この畑はもうお前のもんだし、実ったもんは責任をとって全部引き取るのが筋だろう?」
「爺ちゃんちのお土産も加減しろ莫迦!って量でしたけどね? これはそれを超越してるっていうか、個人が貰って帰っていい量じゃないっすよ? 業者かよ!」
「ははは」
はははじゃねえって……。
というわけで、もってけ!むりだ!もってけ!と、堂々巡りをしているわけですが……
「うんうん!無理を通せば道理が引っ込むっていいますし!まずは頑張ろうよホームさん!」
「難しい言葉知ってるな……まあいいや。とりあえず取りますけどね? 無理ですからね絶対に!」
「はいはい。あとティーラ、それってかっこいいけど実はあんまりいい意味じゃないからな」
……そうなの? 知らなかった……。
まあいいさ。流石にユーサンだって山のように盛られた野菜を見ればおかしいってことに気づくだろ……。とりあえず取るだけ取って納得してもらおう。
◆
はい。お手軽に3時間ほど経過しました。時刻はだんだんにお昼になろうという頃……さっきから俺の腹が悲鳴を上げているからね。
俺の背後には鬼のように並べられた収穫物!
そしてジャモとかいうジャガイモもさ、予想通りすげー量の芋がついてたわけでさ!俺が担当したジャガイモコーナーにはアホほどジャガイモが盛り上げられているってわけですよ。
抜くのに必死でユーサン達の様子を一切見てなかったけれど、きっと彼らのところもひどい有様だぞ。
……で、あの親子……やっぱティーラちゃんが規格外なのは父親譲りなんでしょうね。1時間も掛からずにささっと全部収穫してしまったようで、かなり前から向こうのベンチで仲睦まじくお話をしてらっしゃいますよ。
早く終わったんなら手伝ってくれよお!と、提案してみましたけれど、
『何いってんだ。自分の分は責任を取って収穫する!大事なことだろ!』
と、もっともらしいことを言われ断られているのだ。
いやあ、一生分腰を痛めたような気がしますよ。幸いだったのはティーラちゃんが居たこと。定期的に彼女が来て回復魔術をかけてくれたおかげで、今もこうして立ってられるわけですけどね。
もし彼女が居なかったら、俺は今頃畑の真ん中でうずくまる謎のオブジェになってたんだろうな。
そうやって頑張ったおかげで、お昼前にはなんとか終わることが出来ました。後は足の踏み場もないほどに置かれているジャガイモ箱達を片付けなきゃ無いわけで……今からうんざりしてるけど、これはユーサン達もそうなんだろうから、文句は言えないよな。
「はあ、ようやく終わりましたぜ……」
ぐっと腰を伸ばすとメキメキと音がする。やっぱり俺の腰は限界を超えてしまっているよな……。
「おー、終わったか。じゃ、ちょっとこっちこいよ」
「へーい」
ユウさん達が座っているのはキュウリの棚がある方向だ。そこもやはり足の踏み場もないほどキュウリ箱が並べられている……
「なんもねえじゃねえか!」
「わ!びっくりしたあ!急にデケえ声出すな馬鹿野郎!」
「いやだって!なんで何もないんですか! 採ったフリしてサボってたんじゃないでしょうね!」
「失礼だな。何処かのカズくんみたいに『行ったけど無かったわー』とか適当に誤魔化してお使いに行ったふりとかしねえんだからね!」
「な、何故その事を……」
「……あ、やべ。いや、その、記憶を覗かせていただいた!」
「俺のプライバシーとは!?」
いやいや、そうじゃねえ!あぶねえ。誤魔化されるとこだった!
「おかしいでしょ!?なんでなんも無いのにやりきった感出しながらのんびりしてるんっすか!」
「何もないって……お前さ、俺達が何を持ってるか忘れてね?」
「えっ?」
「はぁ……全部収納してるからに決まってるだろ?」
くっそでっかいため息をついたユーサンは、ひらひらと何やら袋のようなものを振ってみせ、中から次から次へとキュウリやトマトを取り出してみせたのだった。
パン「……」
ユウ「……」
ブー「ふふ、あなた達いつまでそうやっていちゃいちゃしてるの?カズくんそろそろ収穫終わるわよ」
パン「!?」
ユウ「!?」
パン・ユウ「「い、いつからそこに!?」」
ブー「いつからってずっと居たわよ? あらあら私の存在に気づけ無いほど二人の世界に……」
ユウ「はいってねえし!はいってねえから!」
パン「気配も魔力も神気すらも消して潜んどいてよく言うわよ!」
ブー「うふふ。そういうことにしておいてあげるわ。ところで、カズくん次どうするの?」
ユウ「次とおっしゃいますと?」
ブー「近頃地球では冴えない小学生を鉱山労働させる青狸のゲームが流行ってるみたいだけどね?」
パン「ちょっと、あんたまさかカズくんに『牧場より稼げるから』って鉱山に行かせるつもり?」
ユウ「そ、それはちょっと……俺でも良心が……その……痛い……」
ブー「うふふ冗談よ。冗談……あら、鉱石のサンプルが落ちたわ」
ユウ・パン(ほんとに冗談なのかな……)




