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第四百九十三話 カズくん午後を満喫する

 タルット屋敷に戻ると、昨日と同じく着替えを渡されたので、これ幸いと井戸水で汗を流してサラリとしたシャツに着替えた。


 このシャツ肌触りが凄く良くて地味に気に入っている。


 さっぱりとした身体で食堂に行くと、今日のメニューは冷やしソーメンだと伝えられ、間もなくテーブルにに山盛りのソーメンとつけダレ、大量の薬味とカットしたトマト等が運ばれてきた。


 確か今居る所は『春の大地』とか言われているところで、季節が春に固定されているという出鱈目な土地だったと思うんだけど、春と言っても暑い日は暑い。


 春の大地の年間平均気温は確か22度くらいだったと思う。なんで俺が詳しいかって、例の学園生活で勉強する羽目になったからな!テストで赤点取ったのがばーちゃんに知れたらチャージして貰えなくなるんだ。そんな生活考えられねえ!


 ってわけで、必死になって勉強に励んだ結果、無駄に各地の情報を覚えることとなったわけだ……。


 年中春とは言え、日中は20度を超えるわけで、そんな中、肉体労働に励めば井戸水が気持ち良く感じるほどに暑いわけで、目の前でキラキラと輝く冷やしソーメンはそれはそれは魅力的なわけで……。


「いただきます!」


 ダシががっつり効いたメンツユに葱とシソをわっさわっさと入れ、そこにソーメンをとっぷりと漬ける。薬味が泳ぐタレが麺に絡んだところで、豪快にずるりとすすると、キンと冷えた麺とつゆがツルツルと喉を通っていき非常に気持ちが良い。


 美味い美味いと食べているうち、山のように盛られていたソーメンはあっという間に無くなってしまった。冷やし麺の類いってつるりとイケてしまうから不思議だよな。


 満腹になった後は風当たりが良い座敷で雑魚寝だ。


 俺と違って午後も仕事があるタルット達だけれども、食事をとってもまだ昼休みの時間はたっぷりのこっているので、皆ゴロゴロとお昼寝タイムだ。


 まさかタルット達とこうして枕を並べる日が来るとは思わなかったが、ここのタルット達は気の良い連中だし、何というか職場の先輩と言うのはこういう物なのかなって思わせてくれる信頼感と安心感がある。


 そんな事を考えてる自分がなんだか照れくさくって、ぎゅっと目を瞑ってけしからん妄想でもして誤魔化そうと思って居るうち、風の心地よさにやられてすっかり寝入ってしまった。


 

 ……ふっと目を覚ますと、既にタルット達は午後の仕事に出かけたようで、座敷には俺以外誰も居なくなっていた。


 ダラダラとこのまま座敷で過しても良いのだが、何故だか申し訳なく感じたので特にすることも無いけれど外に出ることにした。


 今日もまたアホほど快晴で、春の大地だというのが嘘じゃねえかと思うほど初夏の陽気だ。


 若干ジリジリと肌を焼きに掛かる日光に負けなくなったのだから、体力がかなりついたもんだと自信が出るね……畑で倒れてしまったのはまあ、よく考えれば結構なペースでやってしまったし、そもそも規模が規模だからな!それを考えればほんと俺は褒められても良いよ。


 屋敷がある場所は島で一番高いところにあるのだが、更にそこには物見台っていうの? 見張り台的な物が立っている。


 タルットに聞いたところによれば、たまに登って周囲の監視をするのに使っているらしい。魔物か何かが攻めてくるのかと聞くと、


『何言うとるんや。ワイ達魔族やで?まあ、知能が低い連中は話しが通じんからワイらも狩るし、やり合うこともあるけどそんな連中はまずここまで来ることは無いわ』


 とのことで。


 だったら何のためかと聞けば、湖に来た人等が水難事故に遭っていないか、畑を荒らす不届き者は居ないか見張るための場所だという事だ。


 そういやこいつら魔族だったと思い出したし、魔族のくせに正義感つええなと感心したし、やっぱ畑は護るんだなと謎の納得をした。


 さて、そんな見張り台は今フリーである。タルットに聞けば、別に登っても構わないとのことだったので、えっちらおっちらと長いハシゴを登っているところだ。


 しかし、以前の俺では考えられないよな。体力はもちろんだけど、何より高い場所への恐怖感が減っているんだ。


 こんな頼りないハシゴをさ、えっちらおっちら登って見張り台の上にいこうだなんて考えられなかったよ。なんだろうな、度胸かなにか関係のステータスが伸びたりしてるんじゃ無いかしら?


 と、どうやら見張り台の頂上に到着したようだ。


 よいしょと身体を持ち上げ、登ってみれば、丸太で組まれた2m四方の足場の上に板が敷かれた立派なスペースが目に入る。下から見たときからわかっていたけれど、屋根や手すりがきちんとつけられていて、雨や落下の心配は無さそうだ。その気になればここで寝られる位の快適さはあるな。


「ひゃー、度胸ついたとは言え、この高さはやっぱすげーな。怖いけど気持ちいいや」


 湖の向こう側のコハン村までしっかりと見える。そこから視線を動かしていくと、村に向かうバスの姿や、湖畔で釣りを楽しむ連中。湖に木の葉のように浮かんでいるのはボート達だ。


「そういやウチのゴリラどうしてっかな。ルーちゃん師匠から釣りを習ってるはずだけど、迷惑かけてなきゃ良いな。可愛いゴリラのことだ、ルアーを投げた衝撃で湖を割ってしまうまであるからな。はは」


 と、なんとなーく口に出してしまった瞬間、湖に浮かぶ木の葉(ボート)のひとつが一瞬キラリと光ったような気がした。


「あれ、今何か……」


 そう、言いかけた時、シュっと何かが横切る音がしてズバァンと轟音。送れて頬がじんわりと暖かく……アッチイ!ほっぺたあつぅい!


 何故かいきなりヒリヒリし始めたほっぺたを撫でつつ、音がした方を見てみれば、屋根を支える柱に何か銀色に光る平たい物が突き刺さっていた。


「……ルアーだ……」


 湖に浮かぶボートはここから見るとかなり小さく見える。考えたくは無いが、このルアーは恐らくそこから何故か()()()()のだろう。


 ……こんな事が出来るのは間違いなくゴリ……ナギサさん……。


 あの人何処まで規格外なんだ……。

ユウ「うける。度胸のステータスだって。いくらなんでもそんなパラメーターってなあ」

パン「……」

ユウ「えっ……あるの?」

パン「隠しパラメーターにあるんだよなあ……」

ユウ「なんでそんな物を……まあいいや。で、カズの度胸はどんなもんなの?」

パン「ちょっと待ってて……え、嘘!?マジで?」

ユウ「何をそんなに驚いてんだ?」

パン「良いからちょっとこれ!みてよ!」

【度胸値】4→348

ユウ「えぇ……カズのくせに3桁もある……っていうかこの上昇幅なに?」

パン「隠しパラメーターはレベルじゃ無くて経験で増減するんだけどさ、カズくんの側にはナギサちゃんがいるでしょ?恐らくそれで……」

ユウ「ああ……あの子に色々と鍛えられてしまったのか……これほど上がるまでに……」

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