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第四百九十二話 カズくん 農業が身についた気になる

 なんだか突然ぶっ倒れてしまったが、ティーラちゃん曰く体力――わかりやすく言い換えてくれたところによればHPが0になりかけていて、それで倒れてしまったらしい。


 なんでティーラちゃんが俺が知るゲームの仕組みを知っているのか少し不思議に思ったが、まあそこはそれ、異世界人たるユーサンのせいだろうと納得した。


 それは良いとして、たかだか畑を3列耕しただけで尽きる俺のHPとは、むしろダウンするまで気づけなかった俺とは一体と思ったのだが、


「ホームさん、何故かわからないけど気合すごかったからね。お父さんが言ってたけど、人間は本気を出さないと行けないときには限界を超えて動けることが有るらしくって、ホームさんは何故かそれがさっき起きちゃったんだと思う」


 と、火事場の馬鹿力的な解説をされてしまった。


 そんなバカな……とおもったけど、ティーラちゃんの前でいい格好しようと助平心を出したような気もするので、それが変な具合に作用してしまったのだろうな……反省。


「なるほどなー 美味しいキュウリを育てなきゃって思ったら気合入りすぎちゃったみたいだよ」


「あはは。そっかー。でもホームさんが頑張ったからもうキウリは終わりだよ。次はトマトを同じ様に植えるけど、今度は倒れる前に言ってね? 水筒にポーションが冷えてるから」


「おっけー」


 ポーションって水筒で冷えてるような物なんだろうか? 俺が知る限りそんなものではないと思うのだが、この世界にはこの世界の常識というものが有るのだろう。なにより、体力回復の手段が有るというのならば、黙ってありがたく使わせてもらうに限るな。


 トマトもまた、キュウリと同じくそのまま植えられる鉢にはいってたので、作業は非常に楽ちんだった。さっきはこう、調子に乗ってしまったけれど、今回は慎重に慎重に……


 ……なるほど、これが倦怠感……いや、助平心の波動に心を奪われてなければ確かにわかるな、1列植えた時点で明らかに身体が重てえわ。


 結構鍛えられたとは思っていたけど、やっぱ畑仕事はこれまで鍛えた部分とは違う所をゴリゴリと削るようだ。


 俺の体力を仮に2800とすると、ナギサさんとの冒険1時間で減るのが400。しかし、畑作業だと1列で1500は軽く消耗している。


 なるほどこれは倒れるわけだ。


 顔を上げてティーラちゃんを見ると……既にトマトを植え終わっていた彼女はこちらに気づき、同時に俺がポーションを欲しているのを理解してタッタカ走って持ってきてくれた。


 いいな、ティーラちゃん。かわいいな。恋人に……するのは色々な組織や人が怖いから駄目だろうけど、こんな妹が欲しかったな……。


「はい、ホームさん。ポーションですよ。これいっぱいで全快するから残りもがんばってね」


「おう!」


 妹っていうかあれだわこれ。女子マネだ!やべえな、自重しなきゃ、倒れないようにしなきゃって思うのに、やる気しか出ねえ。


 渡されたポーションは確かに凄く冷えていて、想像していた薬臭い味ではなく、なんだかよく知ってるスポーツドリンクの味がした。


 うん、めっちゃ運動部の気分だ。


 そしてこのポーション凄いな。決して少なくは無いであろう今の俺がもつ体力ゲージが満タンになったのを肌で感じるよ。ティーラちゃんの回復術はかなりのものだったし、きっとこれも最高品質のレジェンダリーなポーションなのかも知れんな。


 へへ、そんなもん貰っちゃったらがんばらないといけないよな! もちろん、倒れて迷惑をかけちゃあホンマツテントーだし、それなりに自分を気遣って動くけどな!


 ……


 …


 ……へへ、やりきったぞ。ポーションの給水を得ること2回。1列に付き1回で計3列のトマトを無事植え終わったぞ……今の俺にはもう……はなくそをほじくる力も……え?ポーション? あ、ありがとー!


 ふう……。次は何だ? どんどん行くぞ!


 いやあ、ポーションホントやべえわこれ。さっきまで足の指を動かすのすら億劫だったのに、今はもうダンスゲーの最高難易度を踊り倒すくらいの体力は軽く有るぞ。


 ふんすと鼻息荒く、マッスルポーズとともにティーラちゃんに次の指示を仰ぐと、アイテムボックスから何やら木箱を取り出した。


「じゃあ、今日ホームさんにやってもらう作業としてはラストだね。ジャモを植えてもらいまーす」


 おう、でたな謎の植物ジャモ!よっしゃ、植えたらあ!植えてやらあ!ヒゲモジャのマンドラゴラのようなものを想像しているのだが、いい線いってるのではないだろうか?


 と、張り切って待っている俺に渡されたのは……。


「あれっ じゃがいもじゃん?」


「ん? ジャモだよ。ジャモを半分に切ったやつだね。切ったほうを下にしてどんどんおいていってねー」


「はあい」


 って、なんだよ。ジャモってじゃがいものことかよ。言われてみれば納得だ。じゃがいもを縮めたらジャモになる。そこまでするならいっその事じゃがいもそのままで呼べばいいのに、全くいい加減だな。


 しかし、今度は楽ちんだ。予めティーラちゃんが掘っておいてくれた溝にジャモを等間隔でおいていくだけ。ふふん、でもテクニックは必要だぞ。きちんと切った面を下にしておかないと駄目らしいからな。


 なんでかは俺が知るところではないが、適当に置けない以上、誰でも出来る作業ではなかろう。


 そして今の俺は穴を掘って苗を植えるという、少々複雑な作業を2種分やり遂げたあとである。そう!野菜スキルが芽生えていてもおかしくはない程、農作業に馴染んでいるんだ。今の俺にはたやすいことすぎるな。


 …


 ……


 いやあ、これはこれで疲れますな!結局ポーション休憩を2回取っちゃったけど、トマトのときは3回だったことを考えれば俺の成長が伺えるな!


 一通りおいたじゃがいもを見たティーラちゃんは満足そうに頷くと、魔術で土を掛け、


「後は明日のお楽しみだね! 今日はこれでおしまいだから午後はゆっくりと過ごしてね!じゃ、また明日ね、ホームさん!」


 と、ニコニコとした顔で早々と帰っていってしまった。


 午前中で終わるなら、一緒にお昼を食べて午後は一緒に遊んでも良かったんだけどな……ま、ティーラちゃんにだって予定というものはあるのだろうから、無理はいえんわな。


 てことで、ここで丁度お昼となったので、俺は一人寂しく……いや、汗と泥にまみれたタルット達と仲良くタルット屋敷に戻ったのであった。


ユウ「俺の体力を仮に2800とすると(キリ」

パン「やめてさしあげろ!」

ユウ「傑作ですな。やっぱカズはこうでなくっちゃ」

パン「面白かったけどね!でもこう、いたたまれなくなったわよ!」

ユウ「何がレジェンダリーなポーションだよ。ありゃ普通のポーションを飲みやすく薄めたやつだわ!」

パン「それで全快してもまだ効果が余りすぎてしまうカズくん……うっ 加護上げたくなっちゃう……」

ユウ「やめろ!調子に乗るのが目に見えてるぞ!ああいうやつは調子に乗らせると自爆するからな」

パン「たしかに。でもさ、カズクンさ、地球の一般人並には体力ついてきたよね」

ユウ「そうだな。彼処の畑って結構広いからな。あれを1列耕せたのは褒めても良いね」

パン「ほんとあの子の職業訓練みたいになってるわね……」

ユウ「カズのお母さんは俺に足を向けてねれねえな」

パン「あんたがそれを言っちゃ台無しよ……」

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