表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
494/577

第四百九十一話 カズくん畑に散る

 畑に降り立つ黒髪の女神……緩やかに空に昇りゆく太陽から日差しを浴び、キラキラと煌めくその美少女はまさしく女神……ッ!


 はっ!?


 こんな美少女と二人で農業体験出来るとは、凄いご褒美なのでは!?


「ホームさん? ほら、早く始めないと時間なくなっちゃうよ」


 まるで天から遣わされたのではなかろうかと思うほどの美貌に見惚れ、しばしフリーズしてしまった……が、俺も漢だ。美少女にやる気を見せなければ男がすたる。ここはいっちょ元気よく行こうじゃないか。


「ああ、ごめんごめん。今日もよろしくね、ティーラちゃん!さあ!腕が鳴る!張り切っていこう」


「はい!」


 とは言った物の何をするのかわからない。なんだろ、土に肥料混ぜたり水かけたりする作業でもするんだろうか。


 考えても見れば、野菜づくりがどの様な作業なのかきちんと考えたことがなかったな。

 ……これでも母親の実家、じーちゃんちには結構でっかい畑や田圃があって、昔は遊びに行った時にちょっと手伝ったりしたし、小学生の頃には農業体験で見知らぬ農家のおうちに一泊してお手伝いもしたりしたんだ。


 でも、どちらも幼い頃の話だからな。記憶として古いのと、なにより当時の俺は農業体験という感覚ではなくて遊びの感覚に近い感じで"お手伝い"をしていたわけだから、大人になった今、肝心な農業知識を思い出せないというのは仕方がないことだと思う。


 そんなわけで……。


「で、今日はなにをやるのかな?」


 と、首を傾げてみせるとティーラちゃんが盛大にずっこけた。20世紀か!ってツッコミを入れそうになるほどの20世紀のノリをみてしまった……やるなティーラちゃん。


「……ごほん。そうでした。ホームさんは農業を学びに来た人なのでした」


 いや……別に学びに来たわけじゃなくて、攫われてきただけなんだけど……そんなことを言える雰囲気ではないので黙っておく。俺だって成長してるんだ。


「この畑はキウリ畑にするということでしたが、全部それを植えちゃうと大変なことになるので、他にトマトとジャモも育てましょー」


「おー!」


 おーって言ってみたものの、ジャモというのがなにか分かっていない。キウリはキュウリだって知っているし、トマトはまんまトマトだった。これはきっとユーサンが名前をつけるのをめんどくさがってそう呼んでるんだと思うんだけど、ジャモだけが謎だ。


 まさかこの世界固有のヒゲモジャオヤジのような野菜だったりするんだろうか……いやすぎる!


「? 何変な顔してるんですか? さあさ、まずはキウリを植えましょう。今日はキウリとトマトは苗から、ジャモは種ジャモを植えますので……よいしょっと。はい、この箱から苗を取り出してついてきてください」


 相も変わらずさらりとアイテムボックスを使いよる。いいなあ……っと、苗を植えるんでしたね。


 地面に置かれた結構大きめの木箱にはキュウリの苗がみっちりと入っている。その一つ一つが何か柔らかい植木鉢みたいなのに収まっていて、箱から簡単に取り出せるようになっていた。


 そのうちひとつを手に取り、小さなシャベル……移植ゴテっていうんだっけ?を片手にティーラちゃんの後に続く。


「はい、ではこの苗がすっぽりと収まるくらいの穴を掘って……後は鉢ごと入れたら土をかけちゃってください」


「あれ、この鉢は取らなくていいの?」


「はい。鉢の素材は私の加護がかかった土……じゃなかった、肥料を固めた土とモルモルの体液を混ぜて作った土に還るものなので、へーきなんです」


「へー、なるほど自然に帰るBB弾みたいなものか」


 モルモルの体液っていうのがなんとも微妙な気持ちになるけれど、奴らの素材はあちらこちらで便利に使われているらしいからな……。この世界で生活をしていく以上気にしてはいけない部分だろう。


 というわけで、言われるままにサクッと穴を堀り、シュポッと苗を植え、ファサッと土をかける。水をかけなくていいのかと聞いたら、後でまとめてやるからいいのだと言われた。楽で良いな。


 あっさりと一箇所終わってしまった。箱にはまだまだ苗が入っているが、この分ならあっという間に終わってしまいそうだな。


 午前中だけで終わらせてしまってもいいのだろう?


 調子に乗った俺はフルパワーで苗を植えにかかった。ウオオン俺は苗植え機だぜ!


 ……なんて思っていた時が俺にもありました。


 苗ってきっちり等間隔に植えないと駄目なんですね。ティーラちゃんにめっちゃ怒られた。美少女から怒られるのは何かに目覚めそうな気がしたけれど、中学の頃に委員長キャラにガミガミやられて悲しかった思い出が蘇ったりもしたのでアレだった。


 後ですね、箱って一つだけじゃなかったんですね。一箱で植えられるのは1列分だけでしたよ。そもそも、キュウリだけじゃなくてトマトとジャモも植えるって言ってましたね……ティーラちゃんが半分を担当してくれてるとは言え、かなりしんどいです。ええ、腰と足等がもう、しんどいです。


 1列目はまあ、なんとかなりました。2列目を植えた所で身体のアチラコチラが悲鳴を上げ始め……3列目の途中で動けなくなりました。なんだろうな、結構体力ついた気がしてたんだけどな。昨日だって結構耐えれたんだけどな?やっぱあれかな、ずっとかがんで何かをする時の筋肉が鍛えられていなかったってやつなのかな?


 教えてマッスルゴッド!


 なんて謎の神様に祈りつつ仰向けにひっくり返ってピクピクしているとティーラちゃんが困った顔で覗き込む。


「どうしたんですか……って、ホームさん体力が枯渇しかかってますよ!……えい!」


 枯渇……?それってまずいのでは? と、思った瞬間、ティーラちゃんの手から緑色に輝くツタのようなものが俺に伸びてくる。びっくりして避けようと思っても身体が動かず、そのまま身体に巻き付いていくのを黙ってみていることしか出来なかった。


 そのツルはあっという間に全身を覆い、最後にきれいな白い花をアチラコチラに咲かせるとふわっと、甘い香りを残して消えていった。


「もう大丈夫だと思います!どうですか?ホームさん」


「ん……?お、おお!身体が!軽いぞ!わっほーい!」


「ふふ。土属性の回復術をかけたんですが、効いたようで嬉しいです」


 と、はにかむティーラちゃん、正に女神……ッ!この世界の女神様がどんな人かは知らないけれど、きっとこの子のように美しい人に違いないな。

 

パン「なに、カズくんっていい子じゃん。加護あげよっかな?」

ユウ「チョロいにも程があるだろ!」

パン「えへへ……。ていうか、カズくんっていま体力どんくらいあるんだろうね?」

ユウ「あれくらいで枯渇しかかってたからな……どれどれ……」


LV:13→32

体力:18→37.43

魔力:8→8.2


パン「意外と結構育ってた!」

ユウ「つうか……ふふっなんだよこの、なんでこの、小数点以下でコツコツじわじわ育ってんだよこいつ」

パン「ほんとだ……おかしいわね。普通なら切り上げられて整数になるはずなのに……」

ユウ「何がおもしれえって、これだけLV上がったのに魔力は0.2だけ……れいてん……にっ!ぶはぁ」

パン「くっ!……正直面白いけど、なんでこんな現象が起きてるのか気になるわね……いくらなんでも上昇値が少なすぎるわ」

ユウ「まあでもさあ、これ多分伏線でも何でも無い『カズだから』で済まされる案件だと思うよ。特に語られないやつね」

パン「そ、そんなメタい事言わないの!……ぶっちゃけ私もそう思うけどさ……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ