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第四百八十九話 カズくんとお風呂とらっきーすけべ

「おお!こんなにも立派な風呂がこの島に!」


 あまりにも驚き、嬉しかったので思わず声に出してしまった。だってそうだろ? てっきりドラム缶風呂か何かが有るのかと思って浴場に来てみれば、そこに有るのは銭湯を彷彿とさせる大きな浴場だ。


 そりゃヒゲミミ温泉には負けるけど、農場が管理する建物の風呂と考えれば十分以上に立派なものだぜ。


「俺は風呂マナーにはうるさい日本人だからな……」


 湯に浸かる前にしっかりと汗を流し、ついでに隅々まで汚れを洗い落とす。流石に爪の中にまで土がみっちり入り込んだ状態で湯に浸かるのはよろしくなかろうからな。


 おそらくはユーサンの手柄なのであろう。石鹸やシャンプーも俺が知るものとそう変わらぬクオリティのものが置いてあり、ありがたく今日1日の汚れをすっきりさっぱりと落とさせて頂いた。


 この浴場の素晴らしい所はシャワーがいくつかついているところだな。今は何故か俺一人しかいねえんだけれども、普段は多数のタルットで賑わっているのであろうこの浴場には6セットほどの洗い場が設けられていて、それぞれ見慣れた仕様のシャワーが付いている。


 普段シャワーで済ませることが多い俺にとってこれはとてもありがたい。どういうわけか、はじまりの街で借りてる部屋にはシャワーがついてなくって、浴槽しかなかったからなあ。


 さてと、さっぱりと垢を落としたので満を持して湯に浸かることとする。


 部屋にシャワーが無かったせいか、今ではすっかり湯船の虜になっちまったからな。めんどくせえわ、時間かかるわであんまり好きではなかったんだけど、湯に浸かればしっかりと疲れが落ちることを知ってしまった今、これを使わない理由はない。


 それに気づかせてくれたのは部屋にシャワーを付けなかった大家さん事ユーサンと、俺をアホほど疲れさせてくれたかわいいゴリ……もとい、ナギサさんだろうな……。


「あ゛ーー……いぎでるなあ………」


 普段声をだすのに使わないであろう器官から声を出し、生命のありがたみを呻く。これだよ、これ。風呂ってやっぱこれだわ。


 肩まできちんと湯に浸かり、軽く揉みほぐしたり伸ばしたりして少しでも疲れを取る努力をしていると……ガラリと浴室の引き戸が開く音がする。


「……」


 静かにコソコソと浴室に入ってきたのは……むう、湯気でよくは見えんが……さらりとした髪が揺れる……長い髪?


 おいおい、まってくれ。


 そう言えばおかしいと思っていたんだ。アレだけのタルットが働いているというのに、今風呂に入っているのは俺くらいのもの。労働の後でたっぷりと汗をかいただろうに入らないと言う理由はないはずだ。


 だというのに、今ここに居るのは俺一人……そして、湯気に浮かび上がるは艶めかしいシルエット……!


 これは……いわゆるその、ラッキースケベというものではないか!?


 少年誌のオアシス的主人公よろしく、浴槽の端に逃げ、息を殺して様子をうかがう。


 シルエットの主はゆっくりと身体を清め、一歩、また一歩とこちらに向かって歩いてくる。


 やがて、静かに浴槽に浸かると、悩ましい吐息を放ち……。


「はぁ~やっぱ労働の後は風呂やね。アイツラアホやわ。風呂の良さがわからんとは修行がたりんちゅーことや」


「って、やっぱりお前かよ!」


 はい、入ってきたのは例の髪が長いタルットでした。知ってた!知ってたよ!本当だよ!ちくしょう!


「おっ!なんやホムセンお前おったんか!いやあ、やっぱ労働の後は風呂やろ?なあ?」


「お前に同意するのは嫌だが、確かにたっぷり汗を流した後はやっぱ風呂だわ」


「せやせや!わかるやん!お前!他の連中な『身体あったまっとるんに湯なんか入れるか!』言うて、みんな湖に浸かりに行ってしまうんや。確かにそれでも汚れは落ちるけど、なんかちゃうやろ?」


 ……そういやこいつらカッパ……いや、元は大体が水棲の魔物でしたね……。そう言われると冷たい水に浸かって汚れを落としたり疲れを癒やしたりってのは凄く理にかなってる気がするんだけれども……。


「あ、はい、そっすね」


「なんや?急に反応が適当になってきたな。まあええわ。こんな広いお風呂なんに普段はワイ一人やからな。今日は二人いることやし、しっぽりと……なあ、いいことしようやあ……」


「え、遠慮させていただく!!!!」


 ちょっとでもわかりあえるかもって思ったけど、こいつはだめだ!酷く身の危険を感じる!ザバリと逃げるように湯から上がり、なんとか逃げることに成功した……はあ、次は入る時間をずらそ。


 体を拭き、用意されていた着替え――なんかサラサラとした素材の作務衣みたいの――に袖を通して食堂に向かうと、夕食の支度がされていた。


「お、さっぱりしてきたみたいやな。あいつもよろこんどったろ?」


「あ、はい」


 あいつというのは、アレのことだろうな。普段一人で入っているのだろうから、まあ俺がいて嬉しかったのはわかる。わかる、わかるが二度とゴメンだ!


 さて、夕食のメニューはっと……おお、想像していたよりもけっこうがっつりしてるな。


 キュウリのサラダや漬物、酢の物にもろきゅうが有るのはまあ、予想通りなんだけれども、魚のフライや肉じゃがのようなもの、とうもろこしの天ぷらなんてものも並んでいる。うまそうすぎてびっくりした。


 どうやら皆が揃ってからの食事という感じのようだけれども、俺やロン毛待ちだったようで、間もなく湯から上がったロン毛が席につくと速やかに夕食の時間となった。


「ほな、いただきますやで」


「「「いただきますやで!」」」


 やでをつけんでも……いや、俺も引っ張られてそう言ってしまったけれど。


 さて、飯だ飯!キュウリはまあ、置いといてまずはこのとうもろこしの天ぷらだな!芯から切り離され、四角く切られた身がそのままカリリと上げられている。


 周りを見ていると、塩を付けて食べていたのでそれに習う。はむりとかぶりつき、歯を立てるとサクリとした衣の食感の後、続いてコーンを噛み潰したシャキリとした食感がやってくる。


 間もなく訪れるのはそれの甘さ。ああ、うめえ。ユウさんが言ってたけど、甘いとうもろこしを収穫するためには早朝、日が昇る前に急いで取る必要があるらしい。なんでかは忘れたけど、手間がかかってんだなあって感心したものだ。


 これだけ甘いということは、それをきちんとやってるんだろうな。おそらくはここの農園で採れた野菜なのだろうから、ほんとここのタルット達の情熱には頭が上がらない。


 無論、他の料理も非常に旨く、丼に盛られたツヤツヤとしたご飯のありがたさもあってあっという間に食べ終わってしまった。


「ごちそうさまでした」


 食事が終わった後は自由時間……と言うことだったのだが、流石に疲れているのか非常に眠い。その様子を悟った一人のタルットが俺の部屋まで案内してくれ、ありがたかった。


「ありがとう」


「なんの、お互い様やで」


 ……ここのタルットたちを見ているとタルットの常識が崩れるな……。俺はダンジョンでタルットとあった時はたして攻撃が出来るのだろうか。


 ……いや、出来るだろうな。ここのタルット達は素晴らしい種族だが、ダンジョンのアホどもはたんなるカッパだからな。そこは分けないと失礼だろうな。



 と、だめだ。眠気がやばい。


 這うようにベッドに潜り込むと直ぐに睡魔に襲われた。


 ああ……明日は何を……させられるんだろう……な……。

パン「お風呂回……だと……!?」

ユウ「ああ、誰も得をしねえお風呂会だ……」

パン「テコ入れには……ならないわね」

ユウ「なってたまるか!」

パン「しかし、コーンのてんぷら美味しそうだったわね!」

ユウ「ああ、ありゃ美味いんだよな。正直一番好きな食い方かも知れん」

パン「カズクンのくせにねっとりと食レポしちゃってさ!飯テロにも程が有るわよ!」

ユウ「そういやルーちゃんと植えたモロコシが食べごろだったし、今夜はそれにするか」

パン「やったー!カズクンもたまにはいいことするじゃない!」

ユウ「いや……カズはあんま関係ないだろ……」

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