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第四百八十八話 カズくん恐ろしさを知る

 ヒーコラ言いながらなんとかかんとかノルマの半分を耕し終わると、空は大分赤色に染まりつつあった。


 流石にここまでやれば文句はあるまいと、タルット達やティーラちゃんに挨拶をしてナギサさんのところに帰ろうと思っていると……。


「おう、ホムセンようやったな。これで明日は予定通り作業できるで」


 なんて恐ろしいことを笑顔で言われましたよ。いやいやいや。どう考えても無理でしょ。そりゃ、2日3日頼むみたいな空気にはなってたけどさ、俺はソロじゃねえんだ。ナギサさんという大切な仲間とこの地に来ている。彼女ならきっと『だめだ。カズはあたいの仲間だ!次の冒険が待っている、さあ、カズを返してくれ』と、怒るに違いない。


 可愛いけれど、ナギサさんはゴリラだ。ゴリラが怒るとこんな島の1つや2つひとたまりもないだろう。タルット達の平和のためにも、俺の平和のためにも、ここはガツンと言って……グファッ!?


 ガツンと俺の頭に何かが……


 痛いなあと振り向いてみれば、かぼちゃを持ったティーラちゃん。どうやらガツンの正体はティーラちゃんのようだが、一体何故俺にカボチャアタックを……。


 なんで?と、訪ねようとすると、それより先に何かを手渡された。


 ……スマホだこれ。しかも安全ブザーが付いてるキッズ向けの……って、誰かと電話がつながってるの? ティーラちゃんが電話に出るよう、ジェスチャーをしている。


 正直って俺はあんまり電話が得意ではないのだが……ここで出たくない!なんてわがままは言えないよな。


「……もしもし?」


 恐る恐る電話に出てみると……


「ああ、ホームセンターおっせえよ!つうか、また何か悪いこと考えてたんじゃねえか?念のためにティーラちゃんに言ってガツンとやって貰ったが……」


 電話の相手はナギサさんだった。ていうか、ガツンとやらせたのは彼女だったのか。


 ……!?


 慌てて周囲をキョロキョロと見渡すが、周りにいるのはやはりタルットとティーラちゃんくらいのもので、かわいいゴリラの姿は見当たらない。


「む、今お前、あたいのことを探したんじゃないか?」


「えっ!?い、いや、べ、べべつにそんな!」


「わかり易いやつだな……。あたいはとっくに島から戻ってキャンプ場でテント張り終わったところさ。動揺してる様子からすると……またあたいの悪口を言ってたんだろう?」


「そ、そそそそそそそそんなことは!?」


「なんで疑問系なんだよ。まあいいや、聞いたよ。お前そこであたいのために農業を手伝ってるんだってな。ありがとうね!あたいもさ、もう何日か釣りをしたいと思って相談しようと考えていたところでさあ、お前をただ待たせるのは気の毒と思ってたからちょうどよかったよ」


 えぇ……? 何を言ってるんだ、この可愛いゴリラは。俺は別に農業をしたいわけではないし、どちらかと言えばナギサさんと二人で釣りをしたいのだが?


「あ、ちょっとティーラちゃんにかわれ」


「あ、はい」


「もしもし? はい、え?あー、はいはい。じゃあそれで……ホームさん」


「ん?」


「ごめんなさい!えい!」


「ぬぐっはあ!?」


 何か異様に硬い土の塊のようなものを尻に当てられたぞ……これはもうわかる。ナギサさんが野性的な直感で何かを悟ってティーラちゃんに命じたに違いない。


 ……やべえなナギサさん。距離関係なく悪口を察知出来るってことじゃん……畜生、俺には自由ってもんはねえのか!


 そんな具合で、あと三日間?この土地に滞在することが決まってしまった。何やら俺はここでナギサさんのために野菜を作るということになっているらしいんだけど、流石に3日でそれは無理だろうな。


 多分、明日肥料やなんかを撒いたり、水を撒いたりなんかでドジョー改良とかするんだろう。で、明後日は苗とか種を撒いて、後は秋を待ちましょうーみたいな感じで終わってさ、帰りにお土産の野菜を持たされてって感じなんじゃないかな。


 あれだわ、小学生の頃やった農業体験まんまだこれ。流石にあの時は何かの苗を植えるくらいしかやらなかったけど、別の収穫期になっている野菜をとってさ、それをお土産に貰ったりしたんだ。


 といっても、ここでお土産に持たされるのは十中八九キュウリだろうな……。本音を言えばじゃがいもなんかが嬉しいんだけど、ここで食べたキュウリは結構美味しかったからな。あれはあれでナギサさんへのいい献上品……いや、お土産になることだろう。


「ホムセンの坊主、お前も風呂に入るんやで」


「あ!そういや風呂があるって言ってましたね!」


「おう!ああ、ティーラさんはおうちに帰るからな。お前、ティーラさんのお風呂覗こうとかおもっとったやろ?残念やったな」


「……いいえ?」


 少し声が上ずってしまったが、本当にそんな事は思っていない。ちょっとしか。

 

 仮にティーラちゃんがここに泊まったとして、お風呂に入ったとして、俺がそれを覗いたとすると……きっと死ぬよりひどい目に遭わされるのは想像にたやすい。そう、ユーサンならね!


「明日も一緒に作業が出来ると思っていたからちょっとさみしいだけっすよ」


「ほーん? まあ、ええわ。ほんなら、ティーラさんまたやでー」


「はい、タルット達も、ホームさんもまたねー」


「おう、またね、ティーラちゃん。お父さんにもよろしくね!」


「はい!」


 いい笑顔で手を振り、タッタカ坂を駆け下りていくティーラちゃん。そろそろ日も落ちるという時間に一人で大丈夫だろうかと心配したのだが、タルット曰くここに居る誰よりも強いから平気やということで……。


 そういや凄まじい魔術であっというまに畑を作り出してたっけな。アレを攻撃に使ったら……うう、ちょっとゾっとした。


 ……って、これは寒気じゃないな。気温が下がってきたから汗で濡れたシャツで身体が冷えてるんだ。うう、風邪をひかんうちにお風呂に入らせていただきますかね。




 

ユウ「まあ、明日もティーラが来るわけですけれども」

パン「実際の所、カズくんがティーラちゃんのお風呂を覗いたらどう?」

ユウ「あの島が1つ消えるだけで済めばいいだろうな」

パン「……今のアンタならマジでそれくらい軽くできそうだから怖いわ」

ユウ「ふっふっふ……ってマジで?うっそだろ?流石に……ねえ?」

パン「……嘘なら……良かったんだけどね……」

ユウ「待って!俺そこまで人外になってんの?ねえ!なにか言って!言ってよ!」

パン(顔をそらす)

ユウ「……バトル物じゃねえから、たとえ真実だとしてもそのありがたみがいっこもねえな……」

パン「あんたが壊しても次の回にはギャグ補正でしれっと元通りまで有るわね」

ユウ「それはそれでアレなんですけどお!」

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