第四十七話 クロベエのステータス
森の住人ならと、ウッサ・ロップにホップの写真をスマホで見せたら知っているという。
1匹捕まえ…もとい、連れてホップのコロニーまで案内させているところだ。
ちゃっかりついてきているヒカリだが、一応遠慮してるのかクロベエからやや距離を取って歩いている。
そんなヒカリをチラチラとみるクロベエ、やっぱりおめえめっちゃ意識してんじゃねーかよ!
そんな俺の気配をさっしてか、思い出したかのようにシッシと前足をヒカリに振る。
その仕草を見て思い出す……そう言えば、こいつソ○ックブームを撃ってたな……。
「クロベエよ、ヒカリとじゃれ合ってるとき手からなんか出してただろ?あれなんだい?」
「じゃれ合ってって言わないでよ!あれは戦い!戦ってたの!」
ヒカリと言う仲間が出来たのが経験になったのか、言葉が若干達者になっている。レベルが上がって知力が上がったとかそういうことなのかな?
「パンよ、あれはどう思う?」
「え?あ?あれ?何の話?」
そう言えばこいつは見てなかったのか。
「クロベエ、見せてあげなさい」
えいっと、前足を振りソニックブー○を撃ち出すクロベエ。パンはびっくりして凄い顔になっている。
「えっと、あの、えっと、その、ちょっとステータス…、そう、ステータス見たらわかるんじゃないかなあ!」
めっちゃ動揺してるが、言われてみればその通りだ。パンと並んでスマホをのぞき込む。
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名前:クロベエ
職業:魔獣
LV:8
体力:580
魔力:243
元は異世界から召喚された猫で、この世界の魔石を得ることにより黒き長毛をなびかせる大型の魔獣となった。といっても黒猫では無く、キジトラが黒くなったような長毛の縞猫である。本名は黒田官兵衛というとんでもない名前をつけられているが、飼い主であるユウが動物病院の受付で日和ったため、診察券には「クロベエ」と記載されいる。
素材:クロベエちゃんから素材を取るなんてとんでもない!
スキル:ねこぱんち ねこきっく 気配察知 言語LV2 遠吠え 風魔法『疾風鎌鼬 壱』
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「へー、クロベエは仲間でありつつ魔獣だからそれっぽいテキストもついて…ってテキストが俺の赤裸々なエピソードじゃねえかよ!!!どこで知った!!!」
「いやあ、クロベエちゃんの召喚手続きする時にちょっとね。
これは書くべきでしょうって思ったのよ~って、そこじゃないでしょ!風魔法!風魔法って何よ!」
そうだ、風魔法?魔法使えるヤツが居ないって話なのに、クロベエさん?
クロベエを呼び、詳しく聞いてみた。
「あー、あれね。うんと、ほら、デカい鶏狩ってきた事あったでしょう。
あの時こいつムカつくなあ~、攻撃当たらないなあって必死になってパンチしてたら出た」
「出ちゃったかあ~、ってそんな気軽に覚えるようなもんなの?」
「うーん、何らかのきっかけから自然と魔力の使い方を覚えるってのはあるかもしれないわね。必死になって猫パンチをしてるうち、当たれ当たれと前足を振っているうち、前足に魔力が流れ集まる。そしてそれが空を切って微量に生まれた大気の流れに干渉して産まれた魔法ってとこかしら」
「早口で一気に言ってもっともらしくこじつけてるようにも聞こえるが、女神が言うならまあ、そうなんだろう」
「なによ!むかつくわね~!」
「いやいや、まあ納得したよ,何となく。で、後はそのまま身についたと。自転車の乗り方忘れないようなもんだな」
「例えがいちいちアレだけど、まあそんな感じじゃないの」
「あ、ちなみに女神様って魔法使えるの?」
「あん?この世界の管理者権限もってる私に言う?ほら」
手から炎を立ち上らせ得意な顔をする。
「あっ、ふーん」
「それだけ?」
「すごいすごい、だから後でやり方教えてね」
「だっれが!!!!!!!」
思いがけず変なところで魔法というファンタジーに近づいてしまうこととなった。
ファンタジー?使えない魔法なんて知ったこっちゃねえ!魔石で工業化だーって言ってた矢先にこれだ。どうなるかわかんねえもんだなあ。
工業化は工業化として、魔法は魔法で面白いことになりそうだから俺も勉強して広めることにしよう。
しかし詠唱どころか概念やらなんやら理解しないで出せるとは恐ろしい世界だな。それは最早魔法では無くてスキルと呼んだ方が良いんじゃ無いか……?
◇
「くろき せんしと そのあるじたち ここがまりばなの はえるばしょ」
うおっ 居たのかウサギ!って案内させてたんでした。話しながら歩いていたのであっという間だ。
ルーちゃんはというと、クロベエの背中ですっかり寝落ちしている。それでも落ちないのだから流石魔物を統べるダンジョンコアというものか、いや関係ないか。
ルーちゃんをそっとクロベエから下ろし、丸くなってもらったクロベエに託す。フワフワのぽかぽかだから布団の代わりになるだろう。ゆっくりとお昼寝をするといい。
ウサギが「まりばな」と呼んでいた植物はまさにホップとしか言いようが無いもので、結構な量茂っていた。
とはいえ、こんな所まで毎回来るのも面倒くさいので、これも一部種に変えて栽培することにしよう。
まりばな(図鑑で見てもマリバナと言う名前のハーブだった)を集めながらルーちゃんの様子を見ると、いつの間にかヒカリもくっついて眠っていた。なんだかんだいってもう気を許してるんじゃねえかよ、クロベエよ。やっぱりまんざらじゃ無かったんだな?
地球じゃまず出来なかったことだし、後でたっぷり弄ってやることにしよう。
飼い猫と会話が出来る,それもこの世界の醍醐味なのだから。