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第四百八十四話 カズくん釣りを学ぶ感じになる……が

「ところで、なんでまたこんな所にお前がいるんだ?」


 と、腕を組みながら言うのは仮面の男、サスケ改めユーサンだ。なんでまたって、なんでだっけ……ああ、そうだ。釣りだよ、釣り。ナギサさんが釣りのプロが居るとかなんと騒ぐからわざわざ来たんだった。


「ああ、それが釣りの凄い人がこの島に来てるとか話を聞いて……ボートも争奪戦みたいになってましたよ」


 と、言うと、ユーサンはなんだか知らないけれどすげードヤ顔になる。仮面で隠れては居るけれど、その裏に秘められた表情は紛うこと無きドヤ。ああ、腹立たしいったら無いな。


「そうだろうとは思っていたさ。どっから噂を聞いたのか知らんが、お前達がくる前からどんどん釣り人が島にやって来てたからな」


 そう話すユーサンをよく見れば、なにやら高そうな釣り竿を手に持っていた。もしかして、釣りのプロというのは……。


「あの、もしかして噂のメイジンというのは……」


 そういった瞬間仮面の瞳がキラリと光ったかのように見えた。やはりユーサン、この人が……


「ああ、そうさ。アングラーズクイーン事、我が娘ルーちゃんが噂の姫様だ」


「な、なんだってー!」


 よく見れば、ユーサンの隣に堂々と立っているルーちゃんの手にも立派な釣り竿が……。そうか、先入観ってダメだな。女の子ってあんまり釣りをする印象が無いからなあ。


 そういや前にユウさんが言ってたっけ。


『意外に思うかもしれんが、釣り好きの女子は結構居るんだよ。俺のネッ友にもルアーフィッシングに取り憑かれたお姉さんが居てな、休暇を取っては日本各地を巡る猛者なんだぜ』


 ううむ。となれば、姫と呼ばれているルーちゃんはかなりの腕前と見える。ここはひとつ、うちの可愛いゴリラのために師匠として教えて貰いたい所だな。


「あの、ユーサン」


「うむ、みなまで言うな。ナギサちゃんと二人、ルーちゃんから釣りを習いたいんだろう? 丁度今から講習会が始まるし、適当に参加して良いぞ。ルーちゃんが好きでやってることだから無料だ」


 無料!そう聞くと途端に謎のお得感が湧いてくるから不思議だ。ようやく爆笑地獄から復活できたらしいナギサさんにその話を伝えると、やたらと興奮し、俺の背中をバンバンと叩く。


 ……骨が軋む音がした。


 意気揚々と釣り竿を掲げて湖に降りていくルーちゃん。それに続くは老若男女の釣り人達。俺達を合わせて三十人くらいは居るんじゃ無かろうか? みな一様にルーちゃんにキラキラとした憧れの眼差しを向けていて、なんだかアイドルのイベントに来たかのような錯覚に陥る。


 いやまあ、そういうのに行ったことは無いんだけどさ。


 島は大して大きくないので、5分も歩くと直ぐに桟橋エリアに到着した。エクストリーム上陸をしたのでちゃんと見てなかったけど、桟橋には結構な数のボートがとまっていて、レンタルした人の殆どがここに来ているのだろうなと推測させる。


 ルーちゃんは『ちょっとそこでストップね』と、俺達受講者を止めると、トコトコと一人桟橋の先端まで歩いて行く。


「いいかい。桟橋から20mの範囲はシャローでウィードが密集しているんだ。そこに住む小エビや小魚目当てにフィッシュイーター共がやってくるんだけれども、いまいちサイズは見込めない。

 けれど、シャローが終わると急激に水深が落ち込んでいってね、40mも投げれば結構なディープにあたるんだ。例えば……こんな感じでラバージグを投げて……」


 一体この子は何を言っているんだ? およそJC前後の女の子とは思えないほど、凜々しい口調で俺が知らない単語をポンポンと話している。周りの釣り人達はその意味がわかっているのか、うんうんと頷いていて、うちのゴリラもそれに交じって『なるほど』とか言っているが、あれはわからないけど取りあえず納得したフリをしてる奴だ。


「いっでえ!」


「姫様の話をちゃんと聞くんだよ!」


「聞いてますってば……」


 油断も隙も無い人だ……。抓られた脇腹をさすっていると、ルーちゃんがリール?を巻きながら竿をぐんぐんと動かしている姿が目に映った。投げたのは多分ルアーだろう。俺でも知ってるぞ、ああやって魚を誘ってるんだな。


「ボトムには様々なストラクチャーがあるので、油断すると根掛かりするから気をつけて。けど、ストラクチャーはお魚さんにとって絶好の隠れ家で……縄張りなんだ。こうして、慌てて逃げ出すように動かして……はい、シャローに続く斜面に到着したよ。ここでふわりふわりと昇るような落ちるような動きをさせてるとね………乗ったぁ!」


 ガン、と音が立つかと思うような凄い勢いでルーちゃんが全身を使って竿を立てると、折れてしまうのではと不安になるレベルで竿が曲がる。


 曲がった竿はドクンドクンと脈動をしてるかのように重く動き、リールからジージーと音を立てて凄い勢いで釣り糸が出て行ってる……あれどうなってるんだろう。


「ん、これは思いがけず結構な大物。ふふ、ユウは何か期待しているようだけど残念ながらこれはタルットじゃないよ」


「い、いや別にそんなお約束とかそう言う事は考えてないからね」


 いつの間にか一緒に見学をしていたらしいユーサンに声をかけるルーちゃんは余裕の表情を浮かべている。あの様子なら凄まじい大物が掛かっているだろうに、なんて子だ。


 そして、俺達受講者が手に汗握りソワソワと静かに応援をする事15分……多分。


「ユウ!ランディング手伝って!結構でっかい!ネットお願い!一番大きい奴!」


「あいよ」


 異様な速度でルーちゃんの元に駆け寄ったユーサンは、何処からかすげー大きいたも網を取り出した。あれは俺やナギサさんも余裕で収まるサイズだ。あんなもんを出したって事は、獲物もさぞかし……。


「じゃ、寄せるからお願いね!」


「まかされた」


 バシャバシャと抵抗する音が聞えてくるが、ここからではよく見えない。


 水音がどんどん激しく、大きくなったな、そう思った瞬間……。


「入ったあ!どっせい!」


 ユーサンの気合い全開の声と共に網が持ち上げられ、燃えるような夕陽色の巨大魚が桟橋に上げられた。


「わあああ!すっげえ!ありゃスカーレットラムダフィッシュだぞ!」

「スカーレットって結構でけえけど、彼処までのは中々見ないよな」

「さっすが姫様だ!」


 釣り上げられた魚の元に受講者が集まり、わいわいと歓声を上げている。確かにこの魚はスゲえわ。見た目はなんかこう、赤いようなオレンジ色のような凶暴そうな顔をした金魚って感じだけど、兎に角そのサイズが凄まじい。1mは優に超えているのではなかろうか?よくあんなモノ寄せられたと思うし、ユーサンも力持ちが過ぎるだろ。


 ちなみに、この魚は食べると凄まじく美味しいそうで、この後みんなで美味しく頂くそうです。やったぜ!


 そんな感じで、開幕から凄まじいお手本を見せられた釣り人達のテンションは最高潮。むろん、ナギサさんも大興奮で俺の背中をバシバシ叩くもんだから、俺のHPは枯渇寸前さ……。


 ……釣り講座、生きて終われるといいな……。

パン「ほんっと、ルーちゃんなんでこんな釣りにハマっちゃったんだろう……」

ユウ『趣味って奴は何が切っ掛けでハマるかわからんからな』

パン「それな。私もまさか漫画やラノベにハマるとは夢にも思わなかったもの」

ユウ『俺としちゃお前が異世界ファンタジー読んでるのがシュールで仕方が無いのだが』

パン「いやあ、あるある!って笑えるし、ねーわ!って突っ込めるし、なるほどなあって参考に出来るしさ」

ユウ『おっと、あんまり余所様の世界のネタをパクっちゃいけないぞ。見てる人は見てるんだからな!』

パン「ひい……」

ユウ(まあ、既にかなり手遅れだと思うがね……)

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