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第四百八十二話 カズくん水上デートを堪能する

 出発進行!と、張り切った我々だったが、この魔湖の不思議なチカラによってその進路は妨害され、一向に前に進むことができない。


「さっきから同じところを回ってる気がするな……」


「気がするなじゃねえ!明らかに桟橋の前でぐるぐるしてるだけじゃないか!」


 ……正直な話、俺はボートを漕いだことがない。だってさ、あれってリア充が女の子と乗るやつじゃん……? ハッ! 気づいてしまった……。ボートの上、俺とナギサさん……男と女……これはつまるところ俺ってリア充と言うやつなのでは?


 なんて考えてデレデレしていると、桟橋で釣りをしている連中からやじが飛んでくる。


「おいおい!あんちゃん大丈夫か!? つうか、乗り方違うぞ!」

「偉そうに言ってるお前も初めて乗った時はあんな感じだっただろ」

「う、うるせえ!とにかくあんちゃん!乗り込む向きが逆だ。姉ちゃんと向かい合って乗るんだよ!」


 言われてみれば、確かにアニメやドラマに出てくるリア充どもは向かい合って乗っていたな……。そう、そうなんだよ。向かい合って乗るからこそ、リア充の乗り物感あってさ、後ろ見ないで漕いで良く平気だなあって思ったんだよなあ。


「すいません、ナギサさん。なんか向きが違ったみたいで……よっこいしょ……これで、もうグルグル回らない筈!」


「おう!あたいもこのボートって奴は初めて乗るからね。いいよ気にすんな!さ、改めて出発だ!」


「おー!」


 そして10分が経ち、俺達は……。


「だからよお!右と左を均等に動かさねえと前に進まねえの!」

「そんな事言ってるお前も最初は……」

「だー!言うなって!」



 ……変わらず桟橋前をグルグルと周り、釣れずに暇を持て余す釣り人達の良いおもちゃになっていた。


「ははは……おかしいな。まさかこんなに難しいとは……」


「……なあ、ちょっとあたいと変わってみ?」


「えっ でも、こういうのは男が……」


「いいから!あたいもやってみたいんだよ!変われ!」


「ひゃい!」


 正直男のプライドというものが有るので、交代するのは嫌だったんだけど、位置を変わるために狭いボートの上でナギサさんと身を寄せ合うようにすれ違う際に、バニラのようないい匂いがしたり、ゴリラなのに柔らかな女の子の体とくっついたりして、これはちょっと正直に申しますと、俺の一部が尋常じゃない感じになったのであります。


 端的にいうとボート最高!


「ええっと、こいつを水に突っ込んで……ぐいっと……お、こんな感じか。んで、まっすぐ進むためには左右の棒を均等な力で……っと!はは!おい!見ろ!ホームセンター!桟橋が遠ざかっていくぞ!」


「ええ……まじっすか。なんでまっすぐ漕げるんです?」


「なんでって……あいつらが言う通りやっただけだろ」


 これだから天才肌のやつは!


 先程までのグルグル運動が嘘のようにボートは水面を滑り、ボートはぐんぐん、ぐんぐんと陸から遠ざかっていく。水に手を入れるとスイっと湖面に線が流れ、正直とっても気持ちが良い。


 これで漕いでるのが自分だったら最高なのだが、ナギサさんが非常に楽しげな感じで漕いでいる様子は見ていて可愛らしいので、これはこれでよしだ。


「ははは!みろ!ホームセンター!こいつはすげえぞ!どんどん速度が上がってく!」


 そりゃそうでしょうよ。エンジンがゴリラなんだから。そこらのおっさんが漕ぐよりずっと速いだろうよ……ぶわっ!? 顔に水が!


「ちょ、ナギサさん!冷たいですよ!」


「お? 悪いな。力加減を誤ったか?」


 ……マジでこの人読心スキル持ってるんじゃなかろうか。


 そして桟橋を出てから10分もかからずに島はぐんぐんとボートに迫ってきて……ボート屋のおじさんは30分位って言ってたけどな……おかしいな……って言ってる場合じゃなくなってきたぞ!


「ははははは!気持ちいいな!楽しいな!ホームセンター!」


「ちょ、それより!ナギサさん!島が!島の桟橋が!そろそろ速度を落とさないとぶつかります!」


「何!?それを早く言えよ!あたいは後ろが見えねんだぞ!」


「そうでした!このままの速度じゃ間もなく俺達はぶつかりまーす!」


「ばっかやろおおおおおおだから言うのがおっせえんだよおおおお!!うおっりゃっせい!」


 およそオールが水に入った音とは思えない程に凶悪な音が鳴り響き、大きな大きな水柱が天に登っていく。わあ、すげえな、流石ゴリラだな、力技で急ブレーキをかけたんだな、そう思った瞬間俺の体はボートを飛び出し天を舞っていた。


「ひょええええええ!?なんで!?なんで飛んでる!?」


 ちらりと見えたボートを見ると、ナギサさん側が大きく沈み込み、俺が乗っていた側が高く高く天をつくように上がっている……ああ、そっかあ。俺でもわかるぞ。テコの原理ってやつだなー。ははーん、それで俺はこうして天を舞って……って、俺このままでは死んでしまうのでは!?


 湖に落ちればワンちゃんあったんだろうけれども、あのゴリラパワーによって高く舞い上げられた俺の体はすでに島の上空。


 死なずに異世界に来たと思ったら、こちら側で死んでしまった!そんなアホなことがあっていいのかよおおおおおおおおおおおおお!!!

ユウ『次回!カズ死す!お楽しみに』

パン「だめだからね!?カズくんにも五分の魂があるんだからね?」

ユウ『さりげに酷えこといいますね……』

パン「それはそうと、傑作だったわね。二人揃って前向いて乗り込んでるんだもの」

ユウ『一応アレでも漕げないことはないんですけどね。絵的に面白かったですね』

パン「ふふ……って、そろそろ助けないとほんとにヤバいわよ。あの子あんたみたいに加護とか無いんだし」

ユウ『ってそうだった。しゃあねえ、めんどくせえがちょっくら行って救ってきますかね!」

パン「やめなさいよ! どこのテンプレやれやれ系主人公よそれ!あはははは!」

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